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2010/8/31

喪失、悲嘆、死別(4)

治療

 喪失の後に遺された人が受ける支えは、その人の友人や家族からのものがほとんどです。医師や看護師もまた支えとなれる場合があります。喪失への対処に苦労している人には、悲嘆カウンセリングや悲嘆療法が必要となることがあります。

 悲嘆カウンセリングは、正常な悲嘆反応を示している人が悲嘆の作業を遂行する際の助けとなります。この悲嘆カウンセリングは、専門の訓練を受けた人物によって、あるいは死別体験者による自助グループにおいて提供されています。こうしたサービスはどれも個人で受けるものとグループで受けるものの両方が用意されています。

 悲嘆カウンセリングは以下のようなことを目標として行われます。

◎その喪失に関する話ができるように助けていくことによって、死別者がその喪失を受け入れられるように援助すること
◎死別者がその喪失と関わりのある感情(例えば、怒り、罪悪感、不安、無力感、悲しみ)を特定し表現できるように援助すること
◎死別者が故人なしで生活し、独りでも意思決定ができるように援助すること
◎死別者が情緒的にも個人と離別し、新たな人間関係を構築していけるように援助すること
◎誕生日や何かの記念日などの大切な時期に、死別者が悲嘆の作業に集中できるように支援と時間を提供すること
◎正常な悲嘆と悲嘆の個人差について説明すること
◎継続的な支援を提供すること
◎死別者が自分なりの対処方法を理解できるように援助すること
◎その死別者に生じている可能性のある対処面の問題を特定し、悲嘆療法の専門家への紹介状を作成すること

 悲嘆療法は、より深刻な悲嘆反応を示す人に対して用いられます。悲嘆療法を行う際の目標は、喪の過程にある人が故人との離別において抱えている問題を特定し、解決することです。離別が困難になった場合は、身体面または行動面に問題が生じる、喪が長期化または極端化する、悲嘆中に葛藤が生じたり長期化したりする、喪の過程が予想外の状態になる(ただし、がんで亡くなる場合はほとんどありません)、などの形で影響が現れてきます。

 悲嘆療法には、個人で受けるものもグループで受けるものもあります。治療の契約は、治療期間の制限、料金、治療目標、治療の焦点などを定めた上で、個人ごとに締結されます。

 悲嘆療法においては、患者さんは故人について話し、その死に関して予想される量の感情をすでに経験してきたかどうかを認識できるように努めます。この悲嘆療法を行うことにより、喪の過程にある人は、故人に対して肯定的な感情に加えて、怒りや自責感などの否定的で不快な感情が同時に発生してくる場合もあるということを理解できるようになります。

 人間には、他者との間に強い絆や愛着を作り上げようとする傾向があります。しかし相手の死などによってこうした絆が断たれてしまうと、強い情緒的反応が生じてきます。喪失を経験した人は、悲嘆の過程を完全に通過するために、一定の課題を遂行しなければなりません。こうした喪の課題の基本的なものとしては、生じた喪失を受け入れること、悲嘆の身体的・情緒的苦痛を感じながら生活していくこと、愛する人のいない生活に適応していくこと、愛する人と情緒的にも離別して故人のいない人生を生き続けていくこと、などが挙げられます。重要なのは、こうした課題を全てこなして初めて喪が終了するということです。

 悲嘆療法では、遺された人が喪の作業を全て遂行するのを援助するために、以下の6つの課題が用いられます。

◎悲嘆に関わるつらい変化を体験し、表現し、適応するための能力を身につける。
◎つらい変化に対処するための効果的な方法を見いだす。
◎故人との継続的な関係を築いていく。
◎健康を維持し継続して自分の役割を果たせるようにする。
◎人間関係を再構築し、自分の経験している悲嘆が他者には共感されにくい場合もあるということを理解する。
◎自分自身や世界に対して健全なイメージを作り上げる。

 過去の喪失による悲嘆の作業が完全に遂行されていないと、悲嘆の複雑化と呼ばれる現象が発生することがあります。新しく始まった悲嘆に対応するためには、まず過去の喪失に対する悲嘆に対応していかなければなりません。そこで悲嘆療法では、喪の過程を妨げている障害に対応していくことや、故人に対してやり残したことを明確にすること、その死から生じた別の喪失を明確にすることなども行われます。こうしたことにより、死別者は、その喪失が最後のものであるということを理解し、悲嘆の終了後の人生像を思い描けるようにもなっていきます。

複雑性悲嘆

 複雑性の悲嘆反応には、複雑性でない悲嘆反応よりも手の込んだ治療が必要となります。複雑性の死別反応でよくみられる問題としては、適応障害(特に、抑うつ気分、不安な気分、情緒面と行動面の乱れ)、大うつ病、薬物乱用などがあり、ときには心的外傷後ストレス障害(PTSD)に陥ることさえあります。複雑性悲嘆とは、悲嘆症状が長期化した場合や、症状によって一定の支障が生じてきた場合、あるいは症状がひどい場合(例えば、強い自殺思考や自殺行動)のことをいいます。

 複雑性悲嘆や未解決なままの悲嘆がある場合、悲嘆や喪がまったく起こらなくなる、正常な悲嘆反応を迎えられなくなる、悲嘆が長期化する、悲嘆中に葛藤が生じる、悲嘆が慢性化する、などの現象が起こってきます。複雑性悲嘆を起こしやすくする要因としては、突然の死、喪の過程にある人の性別、故人との関係(例えば、強い関係、極端に親密な関係、相いいれない関係など)などがあります。大うつ病に発展していく悲嘆反応には、薬物投与と心理療法による治療が行われなければなりません。故人を思い出させるものを全て避ける人、故人のことを絶えず考えたり夢に見たりする人、故人を思い出すとすぐ怯えたりパニックになったりする人は、心的外傷後ストレス障害に陥っている可能性があります。喪失に関するつらい感情や症状(不眠など)を避けようとして物質乱用に陥る場合もありますが、これも薬物療法と精神療法で治療できます。

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