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國土典宏教授の肝がん治療の誤解を解く

2011/7/19

連載第18回

日本では、肝細胞がんへの移植治療は、生体肝移植が主流

 臓器移植法改正前の脳死肝移植が年間数件しか行われていなかった時代には、登録から移植を受けるまでの平均待機期間は、一般的に700〜800日程度、つまり2年以上という長いものでした。

 肝細胞がんの患者さんが、がんを持ったまま2年以上も移植を待ったら、がんが進行して移植を受ける前に死亡してしまいます。そのため、これまで肝細胞がんの患者さんには実質的にはほとんどチャンスがありませんでした。

 臓器移植法の改正後に状況はやや改善しているはずですが、それでも劇症肝炎など、がん以外の緊急性の高い肝疾患に優先的に移植が行われるため、状況はあまり変わっていないと推測されます。つまり、現段階では、わが国で肝細胞がんの患者さんが移植を受けるには、生体肝移植しか現実的でないということです。

 生体移植では、原則として「親族」しかドナーになれません。日本移植学会の基準では、「親族」とは6親等以内の血族と3親等以内の姻族を指しますが、筆者の施設では3親等以内の血族と夫婦間のみに限定しています。3親等は叔父、叔母、甥、姪ですが、実際に移植が行われているのは親子、兄弟、夫婦間がほとんどです。提供は本人の自発的な意思によって行われるべきものであり、報酬を目的とするものであってはなりません。これについては、最近、腎臓移植で偽装養子縁組の問題が大きく報道されたのが記憶に新しいと思います。

 ドナーの年齢は20〜65歳で、健康状態がよく、肝機能も正常である必要があります。拒絶反応を最小限にコントロールするためにABO式血液型が適合するかも重要な条件です。様々な条件をすべて満たし、しかもドナーになる意志のある親族がいて、初めて移植が可能になるのです。核家族の多いわが国では、生体肝移植は恵まれた一部の患者さんだけが受けられる治療法であるという現実があります。

 2010年6月に、移植の専門の医学雑誌に報告された全国集計データによると、2009年末までに全国で5510例の生体肝移植が行われましたが、そのうち1131例は、レシピエントが肝細胞がんを合併していました(図1の5653例と値が異なるのは、再肝移植例を除いているため)。

 移植後の5年生存率は68%で、連載第17回(こちら)で説明した「ミラノ基準」内であれば、さらに良好です。移植をしなければ1年以上生存できる可能性がほとんどゼロに近いことを考えると、すばらしい成績であると言えます。

 しかし、肝臓の3分の1〜3分の2を提供するドナーの負担は大きく、手術により合併症を起こすリスクもゼロではありません。欧米のように脳死肝移植数が増加して、肝細胞がんの患者さんにも生体ドナーの負担なしに肝移植ができるようになることが理想だと思います。

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