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國土典宏教授の肝がん治療の誤解を解く

2011/5/30

連載第15回

初めて肝細胞がんに“効く”抗がん剤が開発された!

 「2009年5月まで厳密には肝細胞がんに“効く”抗がん剤はなかった」と聞くと驚かれる方も多いと思います。それ以前も、肝細胞がんに有効であるとして保険適用された抗がん剤はいくつかありました。しかし、そのような薬の有効性は厳密に言うと科学的に証明されていなかったのです。

 薬の有効性を科学的に証明するには「ランダム化比較試験」が必要です。「ランダム化比較試験」は、例えばがんの治療薬の試験では、患者さんを2グループに分け、一方には治療薬を、もう一方には偽薬(外見は治療薬と同じだが全く効果のないもの。プラセボともいいます)を投与します。そして、2つのグループの患者さんを経過観察して、症状の進行が抑えられている期間やどのくらい生存できるか(生存期間)を比較します。その上で、治療薬を飲んだグループの成績がよいことが証明されて初めて、その治療薬は「有効である」と科学的に言えるのです。

 試験に参加する患者さんがどちらのグループに入るかは、コンピューターで無作為に振り分けられ、どちらの薬を飲んでいるかは、患者さんにも処方している医師にも最後まで分からないようにします。これを「二重盲検」といいます。

 2000年代に入って、分子標的薬という新しいタイプの抗がん剤であるソラフェニブ(商品名ネクサバール)が、初めてランダム化比較試験(この試験はSHARP試験と呼ばれています)によって肝細胞がんに有効であることが実証されました。

 全身療法の治療経験がない602人の進行性肝細胞がんの患者さんを対象に、ソラフェニブを投与した群とソラフェニブを投与しなかった群の生存期間を比較したところ、生存期間中央値は、ソラフェニブ群10.7カ月、偽薬群7.9カ月と、ソラフェニブ投与によって生存期間を延長できることが示されました。

 生存期間中央値とは、対象となった患者さんのうち、半数の患者さんが亡くなるまでの期間です。この試験の結果を基に、欧米では切除不能な肝細胞がんを適応症として承認されました。

 わが国では、ソラフェニブは2008年に切除不能な腎細胞がんを適応症として承認されていましたが、SHARP試験の結果と日本人での小規模な臨床試験の結果を基に、2009年5月から切除不能な肝細胞がんの患者さんに対しても使えるようになりました。この薬は、現在、症状が進んでいて肝切除や肝動脈塞栓療法(TAE)、ラジオ波熱凝固療法などの治療が行えない状態で、肝機能が比較的良い患者さんに使用されています。

 肝細胞がんに「効く」ことは「治る」ことを意味するわけではありませんが、わが国で多くの患者さんに投与してみると、中にはソラフェニブが非常によく効いて肝細胞がんが消滅したと考えられるような場合もあることが分かってきました。どのような患者さんに効くのか現在研究が進められています。その他、肝切除、肝動脈塞栓療法(TAE)、ラジオ波熱凝固療法にソラフェニブを併用して治療効果を高めようとする国際的なランダム化比較試験も行われています。

 ソラフェニブ以外にもいくつかの分子標的薬が肝細胞がんに効くのではないかと期待されており、現在、世界規模でランダム化比較試験が行われています。

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