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國土典宏教授の肝がん治療の誤解を解く

2011/4/18

連載第12回

肝がんを“兵糧攻め”する肝動脈塞栓療法(TAE)

 肝動脈塞栓療法(TAE)は、がん細胞に栄養を運んでいる動脈を人工物で詰まらせてがん細胞を死滅させようとする治療です。よく「兵糧攻め」に例えられます。

 正常の肝臓組織は、酸素の多い肝動脈と、栄養物の多い門脈という2つの血管で養われていますが、進行した肝細胞がんは肝動脈のみに養われています。肝動脈塞栓療法はこの違いを利用した治療法です。動脈を塞ぐと正常の肝臓組織は門脈からの血流で持ちこたえることができますが、肝細胞がんは大きなダメージを受けるのです。

 実際の治療では、動脈を詰まらせる物質(塞栓物質)に抗がん剤を混ぜてさらに効果を高める工夫をしています。この治療法は1980年代に日本で開発されました。当時和歌山県立医科大学の放射線科教授だった山田龍作先生が開発し、有効性が認められて全世界に普及しました。

 治療の方法は、血管造影検査と同じで、局所麻酔をして大腿部の付け根の動脈から細いチューブ(カテーテル)をがん病巣近くの肝動脈の枝まで進め、抗がん剤と塞栓物質を注入するというものです。治療を行った日に発熱や腹痛、吐き気などが出たり、患者さんによって発熱が数日続くことがありますが、体への負担は比較的軽い治療法です。

 肝動脈塞栓療法が著効すると、腫瘍が完全に壊死して根治することもありますが、少し生き残った腫瘍細胞が数カ月後に大きくなり、治療を繰り返す必要が出てくることも少なくありません。

 ここで読者の方は、「動脈を何度も塞ぐとはどういうことなのか?」と疑問に思われるかもしれません。しかし、塞栓物質が溶けて動脈がまた通じるようになったり(再疎通といいます)、新しい動脈が発生することで、がんが再び増殖し始めるようになることがあるのです。がん細胞を壊死させ、なおかつ、正常な肝臓組織をできるだけ壊死させないためにどの血管を塞げばいいかを工夫しながら、この治療を5回、10回と繰り返すこともあります。

 肝動脈塞栓療法は、外科切除や後ほど紹介するラジオ波熱凝固療法に比べると根治性は劣りますが、がんの数が多かったり、肝機能が低く外科切除やラジオ波熱凝固療法が選択できないような状態の患者さんにも行うことができます。外科切除後に再発した場合にも、この治療がしばしば選択されます。

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