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國土典宏教授の肝がん治療の誤解を解く

2011/3/7

連載第9回

ICG検査でどこまで切除が可能か判断

 肝臓は体内に入った異物を解毒する役割を果たしています。その能力が落ちていると異物が血中に留まる時間が長くなります。そこで、異物と同じように肝臓で処理されるインドシアニングリーン(ICG)という緑の色素を患者さんの肘の静脈に注射し、一定の時間ごとに採血して血中にICGがどれくらい残っているかを調べて肝臓の機能を診断しようというのがICG検査です(写真)。

写真 ICG検査の様子
患者さんの左肘の静脈(A)から緑の色素であるICGを注射して、15分後に反対の肘の静脈(B)から採血して、ICGが血中にどのくらい残っているか(15分停滞率)を調べます。

 ICGは静脈に注射すると肝臓(肝細胞)に取り込まれて胆汁に排泄されます。静脈にICGを注射してから15分後に血中に残っているICGの割合を「ICG15分停滞率(R15)」と呼びます。肝機能が低下すると、肝臓がICGを取り込む能力が低下するのでR15の値は大きくなります。

 体重1kg当たり0.5mgを静脈注射すると、正常の肝機能の場合は、15分で注射した量の90%以上が肝臓に取り込まれ、R15は10%未満になります。一方、R15が40%の人はICGを15分で60%しか取り込むことができない肝機能であるということになります。

 この検査は1970年代からわが国では広く行われており、R15の値ごとに安全に切除できる肝臓の割合がほぼ分かっています。具体的にはR15が10%以下の正常値であれば、肝臓を約3分の2(最大で70%)まで切除することができます。また、R15が10〜20%では3分の1まで、20〜30%では6分の1まで肝臓を切除することができる、というように安全基準が示されており、わが国のほとんどの肝臓外科医はこの値を参考に手術を行っています。

 連載の第4回で紹介したように、肝がんを切除する場合、通常はがん細胞を取り残さないように、がん病巣を取り囲むがんではない肝臓組織(非がん部肝実質)も少し付けて切り取ります。しかし、R15が30〜40%では、非がん部肝実質はほんの一部しか切除できませんし、40%台まで悪くなると、非がん部肝実質は全く切除せず腫瘍のみを取り除く手術にしか耐えることはできません。このように、ICG検査を行うことで、どこまで切除が可能かという安全限界を知ることができるのです。

 チャイルド・ピュー分類で最も状態がいいグループ(A)でも、R15が40%程度と不良な患者さんが含まれていることが分かっています。そのため、チャイルド・ピュー分類に加えてICG検査を行うことが非常に重要なのです。

 しかし、実は、世界的に見ると、ICG検査を日常的に行っている国は日本と韓国、台湾、香港そしてフランスやイタリアの一部の施設だけです。欧米の多くの施設では、今でもチャイルド・ピュー分類だけを頼りに肝切除できるかどうかを決めているようです。わが国の肝切除の死亡率が世界的に見て低い理由の1つに、ICG検査を活用したきめ細かな診断があると考えられています。

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