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2010/10/5

復職したとたんに異動の辞令。なんで?

復職したとたんに異動の辞令が出されました。どうしよう?!

 会社に異動の理由を確認しましょう。

 復職の条件となる「治癒」とは、休職前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復していることを意味しているため、会社はあなたを休職前の職務に復帰させることが原則です。しかし、会社はあなたに無理をさせてはいけないと配慮して、異動を命じたとも考えられます。まずは、会社に異動の理由を確認しよう。

 突然の異動辞令はショックだと思いますが、今後の働き方について、考える機会でもあります。主治医や周囲とも相談したうえで、会社(上司や人事担当者、産業医など)と話し合っていきましょう。会社との対立関係をつくるのではなく、情報や考えを共有して、お互いにとってよい方向を目指し、満足できる関係をつくっていくことが、治療をしながら働いていくために必要なことだと思います。

異動命令には従わなければならないの?

 会社には、労働契約上の配転命令権があり、労働者は、その命令に従って働くことを約束しています。

 会社には、従業員と結んだ労働契約に定められた範囲内で、業務上・経営上の都合によって従業員を異動(この場合は、「配転」)させる権利を持っています。これを「配転命令権」といいます。

 ちなみに配転とは、従業員の配置の変更のことで、職務内容または勤務場所をある程度長期間にわたって変更させることです。とくに正社員は長期間雇用することを前提としているので、職種や勤務地を限定せずに採用して、企業内で業務上・経営上の必要に応じて配転を行うのが一般的です。

 そのため会社は、就業規則に「会社は、業務の必要がある場合には、職務の変更、勤務場所の変更その他異動を命じることがある」などと定めて、労働契約の内容として義務づけているのです。

 したがって、配転命令の内容が、職種や勤務場所についての契約内容の範囲内であれば、労働者はその命令に応じなければなりません。職種や勤務場所を限定して労働契約を結んでいる場合は、会社は、「命令」や「辞令」というかたちでは行うことができず、労働者の同意が必要になります。

 たとえば、医師、看護師、弁護士、アナウンサー、ボイラー技士などの特殊な技術、技能、資格を持つ者は、その職種に就くことを条件に雇用されたものと認められ、職種が限定されていると考えられます。

病気で休職していたことが理由なんじゃないかな。

 私傷病で休職したことのみを理由としたり、あなたを退職させようという目的で配転命令がなされていた場合は、配転命令権の濫用らんようとなります。濫用であれば、その配転命令は、無効です。

 たとえ労働契約の範囲内での配転命令であっても、その権利が濫用されたものであれば、その命令は無効になります(労働契約法第3条第5項)。権利を濫用しているというのはどのようなことかというと、業務上の必要性とは別の不当な動機や目的によって行われた場合(たとえば、労働者を退職に導く意図によって行われた配転命令など)です。また、業務上の必要性があっても、その必要性に比べて、この配転によって労働者が受け入れなければならない職業上や生活上の不利益が著しく大きい場合も、権利を濫用していることになります。

 ですから、もし私傷病で休職したことのみを理由としたり、あなたを退職させようという目的で配転命令がなされていたとすれば、会社は、配転命令権という会社に認められた人事権を濫用しているとみなされ、その命令は無効となるでしょう。

 また、2008年3月1日に施行された労働契約法により、会社は、労働者の仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)にも配慮して労働契約を締結し、労働条件を変更すべきであることが明文化されました。これは、配転をする際においても従業員の仕事と生活の調和に配慮するよう、会社に義務を課したものであるといえるでしょう。

 会社の異動辞令に対し、権利濫用を主張することが可能な場合もありますが、まずはあなたと会社の労働契約の内容(職種や勤務地の限定、配転命令権の有無)を労働契約書や就業規則などで確認したうえで、会社側と話し合いましょう。そのときは、命令だから従わないといけないと会社の方針をそのまま受け入れるのではなく、会社側に配慮してほしいことがあれば、きちんと申し出ることも大切です。

●配転命令権……労働契約の範囲内で企業側の都合によって従業員を異動させることができる権利。
●配転命令権の濫用……不当な動機や目的のために配転命令権を行使すること。
●労働契約法……労働契約についての基本的なルールを定めた法律。
●ワーク・ライフ・バランス……仕事と生活の調和

嘱託と言われて働いてみたものの……

 手術から半年。治療開始から約8カ月で職場復帰をしました。途中、電話や手紙でやりとりは続けていたものの、久しぶりに社内へ入るときはドッキドキ。夏休みのあと、久しぶりに登校する小学生のような気持ちでした。

 初日に、今後どういった働き方をしていくか、上司と相談しました。当時、自分の心と体のあちこちに不具合が発生していて、私の体はまさに病気の百貨店!平均すると週1回はどこかの診療科へ通院しなければならず、とてもじゃないけれど、有休だけではまかないきれません! 有休のほかに通院日も保障する働き方ができないか、相談したのです。そこで、言われたのが「嘱託社員になったら?」

 嘱託社員!ああ、なんて素敵な響き……。言葉の定義もわからないまま、「お給料は下がるけれど、治療を優先しながら働けるような制度なんだろう」と勝手に解釈。承諾しました。

 ところがっ!いざ給料明細を開いてみると、休みはただの有休扱い。「んあ?何だこれ?」

 今から考えてみれば、若い会社だし、社内で病気になるのは私がはじめて。細かい就業規則は決めてなかったのですよね。お互い、詳しいことは知らないまま、〈病気をしたら嘱託社員〉と思い込んじゃってたわけです。

 嘱託社員――聞こえはよいけれど、きちんと雇用形態や就業条件について契約を交わすべきだったと反省! 社会保険労務士さんのアドバイスなどを受けて、自分で働きやすい環境づくりをするべきだったんだぁ〜。

(桜井なおみ)

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