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知っておきたい骨転移

2013/11/19

第11回

乳がんの骨転移の特徴と対策

橋本伸之

 第11回からは、いくつか代表的ながんを取り上げ、その骨転移の特徴や注意点を解説したいと思います。1つ目は、乳がんです。

 乳がんは、女性が罹患するがんの第1位というだけでなく、骨転移が生じやすいこと、骨転移とともに療養生活を送る期間が比較的長いこと、治癒の目安とされる10年を越えてからの骨転移が生じることなどから、骨転移対策がとくに重要ながんです。

 定期検査で骨転移の有無をチェックするのは、乳がんでは比較的容易です。まず、腫瘍マーカーが病気の活動性を示すよい指標となります。腫瘍マーカーの数値が上昇してきたら、どこかに病変が出現している可能性が高いと考え、その場所を発見すべく、次の精密な検査を実施します。

 病変の場所や大きさ等、詳しい情報は得られませんが、全身に潜んでいる異状をざっくりと調べる検査をスクリーニング検査と呼びます。乳がんにおいては腫瘍マーカーや骨シンチ検査、PET検査など、骨転移のスクリーニング検査がいずれも有用で、主治医も骨転移に用心しながら検査計画を練ります。

 しかし、定期点検で必ず骨転移が発見されるとは限りません。それは、見逃しのない完璧な検査方法はなかなか無いためです。若干ではありますが、全ての検査において、骨転移が生じていながら異常を示さない「偽陰性」という現象が出る可能性があります。

 また、精密検査を1カ月毎と細やかに実施することも現実的に不可能です。そのため、次の定期点検までの間は、ご自身で健康管理をすることになります。大半の乳がん患者における骨転移は、体幹部分の骨に発生しますので(第6回参照)、背骨・骨盤回り・両肩・両股関節周囲に、今までにない痛みを感じたときは、受診予約を早めるなどして、主治医の先生に必ず伝えるようにしてください(第4回参照)。

 日本人はとても忍耐強い民族です。我が国のモルヒネ消費量は世界有数の少なさです。しかしがん患者さんにおいては、この美徳は禁物です。加えて女性は、我々男性よりも痛みを我慢する方が多いと、診療現場では感じます。

 大切なことは、我慢できる痛みなのか我慢できない痛みなのか、といった痛みの強さは問題ではないことです。「悪化してきている」ことを見逃さないで下さい。痛みはあなたしか感じることができません。がんと生きるだけでも、あなたは十分以上に我慢を強いられた毎日を送っています。痛みのサインは我慢せずに、必ず主治医に伝えて下さい。

 骨転移が判明したら、主治医から乳がんに対するホルモン治療や抗がん剤治療が提案されると思います。その治療と並行し、ゾレドロン酸やデノスマブなど骨転移治療薬の投与もなるべく受けてください(第8回参照)。

 乳がん骨転移の特徴としては、溶骨型と造骨型のいずれのタイプの骨転移も出現します(第6回参照)。骨折や麻痺のリスクとなるのは、主として溶骨型の病変です。リスク評価のために、病変部分に範囲を絞ってレントゲン、CT、 MRIを撮影しますが。がんが増悪傾向にあるときには、リスク評価のための画像検査が増えることになります。検査の提案があれば、なるべく受けるようにしましょう。

 放射線治療を実施するタイミングは、乳がんでは重要です。まだ医学的に一定の見解はありませんが、痛みなどの症状が出てから開始されるのが一般的です(第9回参照)。ここでも痛みの出現が重要なポイントになってきます。先に述べましたとおり、痛みについては患者さんから申し出ていただかねば第三者からは分かりません。しかし、長い療養期間をうまく骨転移を管理していくのに大切なポイントになります。主治医と協力して、自由に動ける体を守っていきましょう。

 放射線治療後の骨強度の回復は、乳がんでは比較的良好です。少し古い報告ですが、6カ月で約7割の患者に骨修復がみられたというデータがあります。高齢で、大腿骨に骨転移が生じた場合では、骨強度が回復するまでの数か月〜半年もの期間、松葉杖を用いるのは困難な場合があります。そのため、生活への影響度を考慮して、痛みの出現を待つことなく、放射線治療に踏み切る判断もありえます。主治医や整形外科医などとよく相談してみましょう。

 最初の治療から10年を経て再発や転移がなければ、治癒したと考えるのが一般的なのですが、乳がんにおいてはまれに10年を越えてから骨転移を生じることが知られています。乳がんは「一応治癒したと考えられる」と説明を受けると、「完治した」の意味に聞こえてしまい、全く無警戒となる方がおられます。10年を越えていても、からだにしつこい痛みを自覚したときに、「もしや骨転移では?」と疑ってみることが大切です。お近くの整形外科医院への受診で構いません。「〇年前に乳がんの治療を受けて、一応治癒と言われていますが、骨転移の可能性はないでしょうか。」と尋ねてみてみましょう。

 日本人の約半数は生涯にがんを経験します。その全ての人に骨転移は関係があります。がんの治療から10年を越えても、2つ目のがんが骨転移から発症することもあるでしょう。骨転移は国民的な健康問題と認識しておくこと、そしてその啓発活動を議論することの方が私はむしろ重要なのではと思います。


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