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知っておきたい骨転移

2013/9/10

第5回

骨転移の症状 Part.2 麻痺(脊髄損傷)

橋本伸之

 第5回は、この連載シリーズで最も大切な部分となります。患者のみならず、できればご家族を含めた一般の方にも、骨転移に関わる最低限の予備知識として知っておいて欲しい事柄です。

 骨転移が引き起こす最も重大な事態、それは麻痺です。下半身不随などとよばれる状態で、背骨にがんが転移し、脊髄を損傷することが原因となり生じます。一般的には交通事故で下半身不随に陥ったと言えば、どなたでもイメージしやすいと思いますが、実はがんも下半身不随の原因になります。それも48時間という大切なタイムリミットがあることを、皆さんはご存知だったでしょうか。

 我々の施設では、麻痺が最初の症状として出現することでがんが発覚するケースを経験しています。そのため、がんと関わりのない一般の方に対しても、骨転移の脅威についてもう少し情報提供しなければならないと私は考えています。国民の2人に1人が一生のうちにがんを患う時代ですからなおのことです。

 同じ中枢神経であっても、脳の障害ではリハビリテーションによって他の健常な部分が機能を補うことにより機能回復が見られることがありますが、脊髄では、障害を受けた部位が担っていた神経機能について、他の健常な部分が代償機能を発揮することがありません。

 難解な表現になってしまいましたが、つまりは一旦障害を受けると永続的で、機能回復は期待できないことを意味します。どんなに体力に自信があっても、一旦生じてしまった麻痺から回復することは期待できないのです。脊椎は頭側から順に、頸椎・胸椎・腰椎そして骨盤部分の仙骨と並んでいて、どのレベルで障害されるかによって若干の例外があります。詳細は主治医に確認が必要ですが、通常は麻痺した状態のままで残りの人生を過ごさねばならなくなってしまいます。

 障害の状態も、障害を受けた脊椎の部位によって異なります。多くの場合、身動きが取れないという不自由は共通しており、また排泄のコントロール機能も失うために一人で用を足せなくなります。人間の尊厳に関わる部分です。車いすに移動するのも、よほど訓練が進むまでは介助を要します。寝たきりになってしまう上に、痛みの防御システムもダウンしているために、しばしば床ずれ(褥瘡)ができ、感染を起こせば膿汁が出て、悪臭を放つ事態に発展するかもしれません。こうなってしまうと自宅療養も決してたやすいことではありません。介護者の負担、経済的負担も大きなものとなります。

 また残念ながら、この状態で長期療養を受け入れ可能な医療機関は多くはありません。万が一、麻痺の発生部位が頸椎であれば、さらに両上肢の麻痺が加わることになります。筆舌し難い苦労と共に、残りの人生を生きていかねばならないのです。

 麻痺が発生してからの支援は必要ですが、どんなに改善がなされても満足には程遠いものです。自由に動けるからだを失ってからでは、遅いことがお分かりいただけたでしょうか。我々が日々このような場面を見てきて、改めて感じるのは、実にほんのちょっとした知識を皆さんが身につけることです。未然に防ぐことが何より重要で、はるかに容易なのです!!

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