このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

新着一覧へ

知っておきたい骨転移

2013/8/6

第2回

がんの種類による骨転移の発生頻度と時期の違い

橋本伸之

 骨転移はがん患者さん全てに共通する問題とは言うものの、医学においては一律に議論が難しいことがしばしばあります。個々のがんによって、骨転移の発生のしかたにも特徴があります。どの程度の予備知識を持っておくべきかは若干異なるかもしれません。

 ただ繰り返し強調したいことは、骨転移が現実問題になってから学ぶ、という姿勢では遅いという点です。骨転移が引き起こす最大の問題は、下半身不随の発生です。これを回避するためには、がんの診断を受けた時点でちょっとした予備知識を頭の片隅に置いておくことが必要になります。転移なんて考えたくもない心境かもしれませんが、後々にあなたの身を守る大切なことになります。

 はじめに、骨転移を生じやすく、十分な骨転移の知識を身に着けておくべきがんから紹介します。このようながんの代表として、乳がん肺がん前立腺がん多発性骨髄腫を挙げておきたいと思います。骨転移が発生する頻度はおよそ2〜3割とみられています。これらのがんでは骨転移をきっかけにしてがんが見つかったり、がんが見つかった時にはすでに骨転移を生じていたり、病気の経過の早期から骨に転移を生じる傾向を持っています。

 このため、これらのがんの治療にあたる主治医の先生も一般に骨転移に明るく、ちょっとした質問にもかなり詳しく答えてくれるでしょう。定期検査で病院に訪れたときには骨の点検を加えておられることが多いと思います。監視の目は、十分なことが多いですが、分子標的薬やホルモン薬の投与により治療成績が近年改善されて、進行期と言えども骨転移を持ちながら長く生活を送ることが多くなってきました。放射線治療がどのようなタイミングで行われるのかや、治療法の選択に病気の経過が深く関連があることなど、知っておくと主治医の先生と方針を相談しやすいでしょう。すでに骨転移との生活を送っておられる方の中には、「きっちり管理していればこわくない!」と感じられた方もおられることでしょう。

 一方、病状が重くなってきて肺や肝臓など内臓への転移も見られるようになってきてようやく骨転移が生じるがんもあります。一概には言えないのですが、消化器系のがん(食道がん胃がん大腸がん、直腸がんなど)、婦人科系のがん(子宮がん卵巣がんなど)、頭頸部のがん(咽頭がん喉頭がん舌がん、唾液腺のがんなど)、皮膚がん肉腫など大部分のがんがこのタイプです。骨転移の頻度は数%程度とされているこれらのがんでは、骨転移が発生するタイミングが遅いので骨転移とともに長い期間生活を送ることは少ないのですが、むしろ日頃の骨転移への警戒が十分でないことが問題になります。

 これらのがんでは、治療の選択など骨転移診療の深い部分まで熟知する必要はあまりないかもしれませんが、骨転移の初期症状や、最も重大な問題である麻痺が出現したことをどうやって察知し、どう対処すればよいかなど、今後、この連載でお話する内容を中心に最低限の予備知識は身につけておいていただきたいと思います。ご自身ががんの経験をお持ちでない健常者の方も、一般教養の一つとして知っておくと、身を守ることにつながります。
 
 骨転移しやすいがんとしにくいがんの次に、これらのほぼ中間的な頻度をしめす代表は、腎がん肝がんです。頻度は1割程度とみられています。これらのがんも治療成績の向上により、骨転移とともに暮らす方が近年増加傾向にあります。骨転移の発生する時期や頻度が類似することに加えて、骨転移のスクリーニング検査である骨シンチやPET検査で偽陰性とよばれる現象(骨転移しているのに検査で異常を示さないことをいいます)が多いことや、骨を壊しながら増大するので骨折や麻痺の問題を生じやすいことも共通していて、骨転移の管理をするのに検査が多くなる傾向があります。最低限の予備知識に加えて、これらの骨転移の特徴を知っておくとよいと思います。

 治療面では主力の放射線治療の効果が中等度で、一旦治療し終わって1〜2年で再び活動が活発になりやすいことや、血流が豊富で手術を選択した場合には出血対策が必要であったりと、不思議と共通点が多くみられます。我々整形外科の腫瘍専門医も骨転移の管理に比較的慎重を要するがんと考えています。

 少し特殊な骨転移を生じる癌として、甲状腺がんを挙げておきたいと思います。甲状腺がんは一般に経過が穏やかで、これまで挙げてきたがんと比べると治療成績も良好とされています。骨転移の頻度という点では稀なのですが、穏やかなゆえに若干の問題を生じます。骨転移の画像所見が良性病変に類似することがあるのです。加えて、治療後10年以上経過して骨転移が発生する場合があることです。詳細なメカニズムは解明されていませんが、長らく癌細胞は転移部位で休眠状態で潜んでいたものと推測されています。これが何らかのきっかけで再増殖を開始して病変を形成すると考えられています。通常、甲状腺がんからの骨転移のリスクは低い訳ですが、やはり最低限の知識を持っておきましょう。乳癌も10年以上経過して不意に骨転移が出現することがときに経験されています。
 
 今回は、骨転移に関する予備知識をどの程度知っておくべきか、骨転移しやすい頻度や時期に着目して注意点を簡単に紹介してみました。

 この連載記事に関する問い合わせはこちらまで。

この記事を友達に伝える印刷用ページ