また、手術法の選択に迷ったときは「自分の生活スタイルや好みの洋服などを考慮した上で、がんの根治性を損なわず、できるだけ今までどおりの生活を維持するためのベストな方法を考えるようにしましょう」と、河野氏はアドバイスする。黒井氏も「自分が納得していれば、乳房を切除しても治療に対する満足度は高くなります。担当医と十分に話し合うことが大切です」と話す。
乳房切除術を受けた後、創部の傷を見ることを怖がる人も少なくない。そのため、入浴の回数が減る。しかし創部を不潔にすると、炎症を起こし、傷の治りが悪くなることがあるので注意が必要だ。創部の傷をタオルで隠すなどの工夫をしながら、手術後1か月程度は、手のひらで泡を立て、その泡で包み込むように洗いたい。
河野氏は「創部の傷に触ることによって乳房を失った事実を少しずつ受け入れられるようになり、やがて創部の傷も見られるようになります」と話す。一人で創部の傷を見る勇気がないときは、入院中であれば病棟看護師にシャワー浴に付き添ってもらい、一緒に傷を見てもらったり、話しを聞いてもらったりするサポートを受けることもできる。「つらい思いを抱え込まず、病棟看護師や乳がん看護認定看護師に相談してください」(河野氏)。
外見カバー、衝撃緩和、保温、バランス調整の4つの役割を持つ補整下着
乳房切除による外見の変化をカバーする方法としては補整下着(ブラジャー)やパッドが一般的だ。これらには外からの衝撃に対して創部を守ったり、切除した脂肪の代わりに胸部を保温したり、重心のバランスを取ったりする役割もある。「乳房のボリュームがある人は重心のバランスを崩しやすく、長期的には頭痛や肩凝り、腰痛などの症状が出てくるといわれているので、補整下着の利用を特にお勧めしています」(河野氏)。
補整下着の内側にはパッドを入れるポケットが付いていて、パッドがずれにくいように工夫されているのが大きな特徴だ。また、胸を締め付けないように柔らかい素材を使用したものもある。形も前開きタイプや片側だけ装着するタイプのものなど豊富だ。
パッドにもいろいろなサイズと重さのものがあり、素材はシリコン、ウレタン、スポンジ、ビーズ、ジェルなどがあり、触り心地によっても選べる。補整下着のポケットに入れて使用するタイプがスタンダードだが、乳房部分に直接装着する粘着タイプのものもある。