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がん患者のための臨床試験の話

2017/6/30

がん患者のための臨床試験の話 Vol.4

新たな「拡大治験」で治験中・承認申請中の未承認薬が使える?!

福島安紀=医療ライター

 「日本ではまだ治験中だが、他の国では承認されている薬を使いたい」「保険診療で使える薬すべて、既に効果がなくなってしまった」――。かつては、そんな状況の時には、新薬の薬事承認取得のために実施されている治験に参加するか、海外からの個人輸入に頼る、あるいは海外の医療機関に行くしか選択肢がなかった。しかし、2016年1月に「人道的見地からの治験(『拡大治験』とも呼ばれている)」がスタートし、一定の参加条件を満たせば本体の治験への参加が可能な期間終了後や承認審査中であっても未承認薬の投与が受けられるようになった。「拡大治験」とはどのような制度なのか、また2016年4月から始まっている「患者申出療養制度」との違いは何なのか、国立がん研究センター中央病院副院長の藤原康弘氏に聞いた。


国立がん研究センター中央病院副院長の藤原康弘氏

がんなど重大な病気で、治験の適格基準から外れた患者を救う制度
 「拡大治験とは、がんなど、生命に重大な影響がある重い病気の患者の救済を目的に、既存の治療法に有効なものが存在しないなどの限られた状況で、例外的に未承認薬または適応外薬の使用を認める制度です。米国、英国、フランスなど海外では、コンパッショネートユースと呼ばれ、10年以上前から実施されています。個人輸入で未承認薬を使ったりせずに、対象になりそうな患者さんは、ぜひ拡大治験を活用してほしい」。藤原氏はそう強調する。

 この連載のVol.1で解説したように、公的保険で使えない新薬や適応外薬、新しい機器、医療技術を厚生労働省(厚労省)から承認を得て保険で使えるようにする目的で行われる臨床試験を治験と呼ぶ。治験には厳しい適格基準(参加の条件)があるので、例えば年齢が65歳以下となっていれば、66歳の人は他の条件は満たしていても治験に参加できない。あるいは、肝機能などの検査数値が適格基準を少し超えているだけでも治験の対象外となる。「拡大治験はそういった適格基準から少し外れた患者さんを救い、承認審査中の薬をいち早く使えるようにする制度」(藤原氏)なのだ。

 拡大治験の対象となるのは、厚生労働省が承認審査に最も重要な資料になると位置づける治験(「主たる治験」と呼ばれている)の対象となっている疾患の患者さんだ。その情報は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページで「主たる治験情報」としてリストが公開され、毎月更新されている。2017年5月31日に更新された「主たる治験情報リスト(薬物)」によると、対象となっている主たる治験は749種類。対象疾患別に検索できるようになっている。

 拡大治験は、主たる治験の患者の登録が終了した時もしくはその治験が終了した後で行われる。主たる治験の中でも、治験実施企業や主たる治験実施医療機関の研究者らによって承認の見込みのある有用な薬剤であろうと判断された場合に実施される。主たる治験が実施されていたとしても、その結果によって承認申請されないものもあり、主たる治験のすべてで拡大治験が実施できるとは限らない。また、未承認薬を拡大治験として実施するためには、拡大治験で定められた参加の条件に当てはまらなければならない。拡大治験実施中は、他の治験と同様に計画で定められた検査や診療を受ける。そして、その未承認薬が保険承認した時点で拡大治験は終了し、保険診療で継続して治療を受けることになる。

 既に拡大治験が実施されているか、製薬企業が拡大治験の「治験計画届出書」を提出している治験は、前述のホームページで「人道的見地から実施される治験(拡大治験)情報」として別にリストがまとめられている(表)。5月31日更新情報でリストアップされていたのは、すでに治験の登録は終了済みだったり保険承認申請中だったりする6つの治験で、対象疾患はすべて「がん」だ。

 そのうち、既に切除不能な進行・再発ROS1陽性非小細胞肺がんにも適応拡大承認されたクリゾチニブなどは除き、現在は、悪性胸膜中皮腫に対するベバシズマブ、BRCA遺伝子変異を有する進行または再発卵巣がんではPARP阻害薬のオラパリブ、肝細胞がんはレゴラフェニブ、標準治療が不応または不耐の切除不能な進行または再発胃がんはニボルマブが拡大治験で使える可能性がある。

表 人道的見地から実施される治験(拡大治験)情報(2017年5月31日時点、最新情報はサイトでご確認ください)

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