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がん患者のための臨床試験の話

2011/11/8

がん患者のための臨床試験の話 Vol.4

取り残される日本のがん治療薬開発

福島安紀=医療ライター

 未承認薬に対しては、厚労省が「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」を設置し、特にがんの治療に使われる未承認薬は、以前よりは迅速に承認されるようになってきた。だが、それでも、未だドラッグ・ラグ問題は解決していない。同省が「がん対策推進基本計画」の進捗状況として公表したドラッグ・ラグの試算でも、09年度の米国と日本の承認申請から承認までの審査に要する期間の差(審査ラグ)は平均で0.5年(06年度1.2年)、同じ医薬品の日米の承認申請時期の差(申請ラグ)は平均1.5年(同1.2年)で合計2.0年。審査ラグは縮まっているものの、治験着手の遅れによる申請ラグは、むしろ長くなっているのが実態だ。

 国立がん研究センターのPhase?センター開設や、民間企業とのパートナーシップの提携などにより、今後は、申請ラグが縮まる期待感はあるものの、現時点で未承認薬の問題に直面している人にとっては、それだけでは解決にならない。

 「他に治療選択肢のない患者に未承認薬を例外的措置として提供する、コンパッショネート・ユース(Compassionate use)制度を確立してほしい」

 9月26日に開かれた第25回がん対策推進協議会では、愛媛がんサポートおれんじの会理事長の松本陽子氏らが、「ドラッグ・ラグ問題解決に向けての意見書」を提出し、コンパッショネート・ユース制度の創設などを要望した。コンパッショネート・ユース制度とは、人道的な見地から、命にかかわる重篤な病気で、他に治療法がない場合に、未承認薬の製造、輸入、販売を許可する制度だ。米国、欧州各国、韓国などでもこの制度が導入されている。

 「現段階では、日本でがんの国内未承認薬を使うためには、治験に参加するか、個人輸入をするか、渡航するしかありませんが、個人輸入では、医薬品の品質は保証されていませんし、がん薬物療法の専門医による治療として受けることも難しい上に多額の費用がかかります。欧米のようにコンパッショネート・ユース制度を導入するのか、これまで通り個人の努力に頼るのか、政府として選択する時期に来ているのではないでしょうか」と藤原氏は話す。

 厚労省は、現在、医療上必要性の高い医薬品などの迅速な承認や、安全対策への取り組みの促進などのために、薬事法の改正を目指している。改正事項の中には、命にかかわる病気や日常生活に著しく支障が出る病気で、その医薬品などを使うしか治療法がないにもかかわらず治験の参加基準からも外れた患者に対し、一定の条件の下、未承認の薬や医療機器を使えるようにすることも含め、コンパッショネート・ユース制度の導入も盛り込む方向で検討している。

求められる「適応外薬」への柔軟な対応
 ドラッグ・ラグには、貧血や嘔吐などの副作用を抑える医薬品や、緩和ケアに使う医薬品の未承認問題もある。また、未承認薬だけではなく、既に承認された薬を、承認時に認められた疾患・効能以外の目的に使うときも保険は使えない。この「適応外使用」の問題も、患者にとって深刻な事態をもたらしている。

 現在の日本の保険制度では、あるがん種の治療薬として既に承認されている医薬品が、ほかのがん種にも効果があると分かった場合、新たに治験を行った上で、製薬企業がその医薬品の適応疾患を追加する「適応追加申請」を行うか、「公知申請注)」を行い、厚労省に認められなければ、保険診療下で使用することはできない。

 もし、上記の手続きなく適応外のがん種にその医薬品を使った場合は、保険外診療になり、高額な自己負担が生じる。日本では混合診療が禁止されているので、適応外薬を使えば、診察料などほかの費用も全額患者の自己負担になってしまうのだ。


注)公知申請:既に承認されている医薬品の適応外使用において、海外で十分な使用実績がある、あるいは信頼性の高い論文などで安全性や有効性が公に知られている場合は、新たに治験を行うことなく、厚労省に薬事法上の効能・効果の追加承認を申請できる制度。

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