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がん患者のための臨床試験の話

2011/11/8

がん患者のための臨床試験の話 Vol.4

取り残される日本のがん治療薬開発

福島安紀=医療ライター

日本で新薬候補が見付かっても、承認は海外が先
 日本で治験を実施しようとする企業が少なくなっているのは、韓国、中国、台湾など、他のアジア諸国の台頭の影響も大きい。韓国には臨床試験専門の病院があり、国を挙げて治験実施を推進している。

ファイザーのデベロップメント・オペレーション統括部長のパティ・コンプトン(Patti Compton)氏。

 「特にがんの分野では、治験の開始から承認申請、販売までのスピードが速くなっており、一方で個別化医療が進んでいます。その中で、スピードやコストの面では、他のアジア諸国の方が日本より有利です」。ファイザーで開発を指揮するデベロップメント・オペレーション統括部長のパティ・コンプトン(Patti Compton)氏は、そう指摘する。

 では、わが国に勝機はあるのか。「日本の研究者がほかのアジア諸国の研究者より優れているのは、どういう患者にその薬が効きやすいかを探り、標的となる体内物質を見つけるなどの、高い専門性です」とコンプトン氏は話す。国立がん研究センターがPhase?センターを創設したのも、国際競争の中で、日本の技術力と専門性を生かし、優位性を示すためには、第1相試験に力を入れることが重要と判断したからだ。

 日本ではこれまで、研究機関と製薬企業・ベンチャー企業との連携が不十分で、第1相試験を行う体制も万全ではなかった。そのため、がん治療薬については、日本で医薬品のシーズや治療標的が発見されたものの、臨床試験は日本以外の国々で先に進み、日本人の患者が使えるようになるのは欧米よりも何年も遅れるということが繰り返されてきた。乳がんなどの治療薬であるトラスツズマブ(商品名ハーセプチン)、慢性骨髄性白血病などの治療薬イマチニブ(グリベック)などがその代表例だ(表1)。

表1 日本で治療標的が発見されながら海外で薬剤開発が行われたがんの分子標的薬の代表例と、承認状況 (*イマチニブについては、日本で発見された治療標的はKITのみ)

薬剤名( )内は商品名治療標的企業名米国FDA承認時期( )内は適応症日本での承認時期( )内は適応症適応拡大承認の時間差
トラスツズマブ(ハーセプチン)HER2F.ホフマン・ラ・ロシュ(日本での販売は中外製薬)1998年9月(HER2陽性転移性乳がん)2001年4月(HER2陽性転移性乳がん)HER2陽性乳がん術後化学療法への適応拡大は米国06年11月、日本08年2月。HER2陽性の進行・再発胃がんは米国10年10月、日本11年3月
イマチニブ(グリベック)BCR-ABL(慢性骨髄性白血病ほか)、KIT(GIST)*ノバルティスファーマ2001年5月(慢性骨髄性白血病)2001年11月(慢性骨髄性白血病)KIT陽性消化管間質腫瘍(GIST)への適応拡大は米国02年2月、日本03年7月。フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病は米国06年10月、日本07年1月
クリゾチニブALKファイザー2011年8月(ALK陽性進行非小細胞肺がん)承認申請中 
オラパリブPARPアストラゼネカ治験中治験中 

 「第1相試験という早い段階から日本が治験に関与することで、この状況を変えたい。今、手を打って、積極的に臨床試験を進めて行かないと、日本の患者さんにはいい治療法やいい薬がなかなか届かないという事態は改善されないでしょう」と藤原氏は話す。

 なお、日米同時に新薬が承認申請されたまれな例として、肺がんの経口治療薬のクリゾチニブがある。同薬は、世界的な治験がスタートしてからたった3年という早さで、2011年5月に日米同時に承認申請された。この薬が効くのは、ALKという遺伝子ががんの原因となっている、ごく限られたタイプの進行性非小細胞肺がんの患者。ALK遺伝子を発見したのは、自治医科大学分子病態治療研究センターゲノム機能研究部教授の間野博行氏らだ。クリゾチニブの場合、希少疾病用医薬品(オーファンドラック)に指定され、優遇措置を受けたことが早期承認申請を後押ししたと見られる。ただし、その後米国では2011年8月に承認されたが、わが国ではまだ承認に至っていない。

審査にかかる時間は短縮されてきたものの…
 患者にとって、治験の着手の遅れが大きな影響を及ぼすのは、海外では承認され標準的に使われているが、日本ではまだ未承認の医薬品を使いたいと考えたときだ。

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