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がん患者のための臨床試験の話

2011/11/8

がん患者のための臨床試験の話 Vol.4

取り残される日本のがん治療薬開発

福島安紀=医療ライター

 「がんの治療薬の承認を得るための臨床試験(治験)は、急速に国際化が進んでいます。しかし、そこから日本は取り残されつつあります」――。国立がん研究センター中央病院副院長の藤原康弘氏はそう指摘する。臨床試験の遅れは、海外で使える医薬品が日本ではなかなか承認されない「ドラッグ・ラグ(新薬承認の時間差)」の問題に直結している。がんの治療薬や医療機器の臨床開発が直面する問題を追った。



 「抗がん剤をはじめとしたがんの治療薬を開発する治験、特に第3相試験は、世界的な規模で行われていますが、日本の病院には治験の依頼があまり来ない状態になりつつあります」。国立がん研究センター中央病院副院長の藤原康弘氏はそう話す。

 治験の国際化が進む一方で、問題になっているのが、国内外の製薬企業が日本で治験を実施しない「治験の空洞化」だ。この問題が指摘されるようになったのは、1990年代後半ごろ。97年に改正された厚生労働省令「医薬品の臨床試験の実施の基準」(GCP、98年施行)で、治験の契約から実施までの手続きが増えたこと、日本での医薬品の承認申請に外国の臨床試験データが使えることになったことが影響し、治験の登録数が減った(図1)。

図1 医薬品の治験届出数の推移 (出典:後澤乃扶子「新たな治験活性化5カ年計画の中間見直しに基づく現状と課題」保健医療科学 2011:60(1);3-7.)

 この状況を改善するため、文部科学省と厚労省は、2003年から「全国治験活性化3カ年計画」、07年からは「新たな治験活性化5カ年計画」(以下、5カ年計画)を策定。治験の効率化を図り、日本で治験の中心になる医療機関が、国際共同治験に参加できる体制を作るように支援してきた。その成果か、全医薬品の治験の届出数は増加してきている(図1)。

 だが、藤原氏は、「がんの治療薬の治験においては、日本が他国に後れを取る状況は続いており、改善しているという実感はありません。このままでは、海外で承認されている医薬品が日本ではなかなか使えないドラッグ・ラグはますます広がる一方です」と指摘する。

国がんが日本発のがん治療薬の開発に本腰
 こうした危機感から、国立がん研究センターは、2011年8月、がんの治験の第1相試験(新薬の候補を初めてヒトに投与して安全性を確認する臨床試験)を中心に行うPhase ?センターを創設した。

 このセンターは、厚労省の「早期・探索的臨床試験拠点整備事業」の一環として開設されたもの。同事業では、未知の有害事象などにもきちんと対応できる体制を備えつつ、第1相のような早い段階の試験に着手する「早期・探索的拠点病院」として、全国5カ所を指定した。がんの分野では、同センターが唯一の早期・探索的拠点病院だ。

 同事業では各施設に対し、今後5年間、体制整備のため年間5億円、医師主導治験の準備・実施費用として年間1.5億円の補助金・研究費を交付することになっている。

 これに先立ち、同センターは、今年5月、ファイザーと臨床試験に関するパートナーシップ契約を締結した。6月には島津製作所、7月にアストラゼネカと包括共同研究契約を結び、次々と民間企業と提携している。

 「製薬企業や医療機器メーカーとパートナーシップ契約を結ぶことで、国際的な治験の情報、特に第1相に入る直前の情報をいち早く提供してもらい、欧米と同時かそれより早い段階で新薬や新しい医療機器の開発に参加したいと考えています。契約を結ぶことで、こちらもいいシーズ(医薬品の候補)を見つけたときに、早く開発につなげてもらえるようにアプローチしたい」と、Phase ?センターの副センター長でもある藤原氏は話す。

 これらの契約では、企業側から国立がん研究センターへの資金提供は一切ない。企業が同センターに国際的な治験に関する情報(特に第1相に入る直前の情報)を伝え、臨床試験にかかわる同センターのスタッフのトレーニングを企業の協力で実施し、国際競争力のある治験の実施と革新的ながん治療薬や医療機器の開発を目指すことが提携の目的という。

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