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がん患者のための臨床試験の話

2011/10/11

がん患者のための臨床試験の話 Vol.2

臨床試験の情報はどうやって集めればいい?

福島安紀=医療ライター

 ただ、登録センターは、臨床試験の内容を詳しく審査しているわけではないので、質の低い、患者の利益にならない可能性の高い臨床試験が入っている恐れも否定できない。厚労省の「臨床研究に関する倫理指針」では、臨床研究計画が指針に基づいているか、適正に実施されているか、倫理審査委員会を設けて審査するよう定めている。だが、倫理審査委員会の質にも差があり、すべての倫理審査において患者の人権と倫理性が守られているとは言えないのが現状だ。

 「本来は、臨床試験に参加する患者さんにとっても将来の患者さんにとっても弊害にしかならない臨床試験は、実施できないようにする仕組みが必要です。現時点では、臨床試験を勧める医師に『この疾患における標準治療は何か』『この試験で新しい治療法と比較している治療法は標準治療か』を聞いて、答えに詰まるようなら参加をやめた方がいい。また、副作用、毒性といった都合の悪いことについてもきちんと説明してくれるかどうかも非常に重要です。残念ながら、がんの臨床試験で治療関連死や生命を脅かす重篤な副作用が1例もない試験はほとんどないので、そういったリスクにまったく触れていない場合は信用できないと考えてよいと思います」。福田氏はそう指摘する。

国立がん研究センターがん対策情報センター臨床試験支援部部長の福田治彦氏

より治癒率の高い標準治療を模索するJCOG
 研究者主導臨床試験を行うがんの研究者の全国組織としては、JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)がある。JCOGは、科学的根拠に基づいた標準治療や診断方法の確立を目的に研究活動を行う非営利の任意団体で、国立がん研究センターの「がん研究開発費」と、厚生労働科学研究費の「がん臨床研究事業」に基づいて運営されている。

 JCOGでは、現在約70件の臨床試験を実施中だ。臨床試験は、15の専門分野のグループに分かれて実施され、各グループが年2〜3回の会議でアイデアを出し合う。その疾患における標準治療は何か、臨床試験によってどういうことが期待できるかを議論し、本当に臨床試験を行う必要のあるテーマのみが残る。その後、プロトコル(臨床試験実施計画書)審査委員会、運営委員会で、厳しく批判、精査し、社会的・科学的に価値のある臨床試験のみを行うようにしているという。

 臨床試験を始めるかどうか、最終的にゴーサインを出すのはデータセンター長の仕事でもある。「当然ですが、自分や自分の家族が患者だったら入らない、入れたくないと思う試験にはサインしない覚悟でやっています」とJCOGのデータセンター長でもある福田氏は話す。

 JCOGが実施している臨床試験の情報は、「がんの臨床試験一覧」にも掲載されているが、 JCOGのサイトでも登録中試験情報を閲覧可能だ。ほかにも、西日本がん研究機構など、がんの治癒率を上げるために新しい標準治療の確立を目指して多施設共同の臨床試験に力を入れているグループがある。

 ところで、冒頭で述べたように、製薬企業が行う治験の中には、「がんの臨床試験一覧」には掲載されていないものもある。だが、「医療機関によっては、製薬企業から依頼を受けている治験の情報をその病院のホームページで公開している場合もあります。企業の治験の情報が知りたければ、自宅から近いがん診療連携拠点病院などのホームページを見てみるのも1つの方法ではないでしょうか」と柴田氏。国立がん研究センターでも中央病院東病院で行っている治験情報をそれぞれホームページで公開している。

 厚労省は、患者に迅速に新薬を届ける事業の一環として、同中央病院を含む全国10カ所の「治験中核病院」と30カ所の「治験拠点医療機関」を指定し、ホームページに掲載している。そういった治験に力を入れる病院のホームページにアクセスしてみる手もあるだろう。

 なお、海外では既に承認されている未承認薬の一部については、厚労省の「未承認薬使用問題検討会議での検討を受けて国内で治験準備中または実施中の医薬品に関する情報」で、治験中かどうかや問い合わせ先が公開されている。

 「がんの臨床試験には、年齢、性別、これまで受けてきた治療など参加条件があるので、自分で情報を集めた場合でも、ご自分に適した臨床試験かどうかは、最終的に担当医に相談してください」。福田氏はそう強調する。

 もし、担当医に聞いても、あまり臨床試験の情報を持っていなかったり、まったく関心を示してくれなかったりすることもあるかもしれない。そんな場合には、がん診療連携拠点病院の相談支援センターで相談してみるといいそうだ。既に有効な治療がなくなってしまった人が治験や研究者主導臨床試験に参加したいという場合には、実施している病院が分かれば、そこに問い合わせてみる方法もある。

 次回は、臨床試験に実際に参加した場合の、具体的な流れを取り上げる。

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