このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

がん患者のための臨床試験の話

2011/9/27

がん患者のための臨床試験の話 Vol.1

臨床試験ってどんなもの?

福島安紀=医療ライター

治験と臨床試験はどう違う?
 がんの治療を行う医師からは「治験」という言葉もよく耳にするが、治験と臨床試験はどう違うのだろうか。

 治験も臨床試験の一種だが、(1)新しい医薬品や新しい医療機器を臨床現場で使用するために、または、(2)既に特定の疾患を対象に承認された医薬品や医療機器を、別の疾患の治療で使えるようにするために、厚生労働省(厚労省)から薬事法上の承認を得る目的で行う臨床試験を治験と呼ぶ。

 治験は、被験者の安全と人権を守り、データの信頼性を高めるため、薬事法およびGCP(Good Clinical Practice:医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)に則って実施される。現在のGCPの主なポイントは表1の通りで、治験を始めるときには、厚労省への「治験届」の提出が義務付けられている。治験に参加できるのは、表2のような条件を満たした医療機関だけだ。

表1 GCPの主な内容

●治験の内容を国に届け出る
製薬企業など治験依頼者は、治験の目的や内容を書いた「治験実施計画書」を厚生労働省へ届け出なければならない。厚労省は事前に内容を調査し、問題があれば変更を指示する
●治験審査委員会で内容を審査
医療の専門家以外や医療機関と利害関係のない第三者の入った治験審査委員会が、治験実施計画書の内容を審査。被験者の人権、安全が守られ、薬の候補の効果を科学的に証明できる試験設計かなどを審査する
●治験の参加は同意が得られた患者のみ
患者に治験の目的、方法、予測される副作用、治験に参加しないときの治療法などを文書で分かりやすく説明し、文書による同意を得なければならない
●重大な副作用は国に報告
治験中に重大な副作用が発生したときには、治験を実施する製薬企業が速やかに国に届け出て、必要に応じて治験の中止や見直しを行う
●製薬企業は治験が適正に行われているかモニタリング・監査を実施
製薬企業の担当者(モニター)は、治験がGCPおよび治験実施計画書に則って適正に実施されているかどうかを、カルテなどと照合しながら、確認を行う。また、製薬企業内の別部門の担当者が監査を行う

表2 GCPなどで定められた治験を行う病院の条件

・十分な臨床観察および試験検査を行う設備と人員が整っている
・緊急時に被験者に対して必要な措置を講ずることができる
・治験責任医師、薬剤師、看護師その他治験を適正かつ円滑に行うために必要な職員が十分に確保されている
・治験の内容を審査する委員会を利用できる

 治験は、製薬企業が医師や医療機関に依頼して実施するものがほとんどだが、小児がんや比較的患者数の少ないがんなど、製薬企業側に開発コストをかけるインセンティブが働きにくく、患者側には切実なニーズがある疾病を中心に、医師主導の治験も行われている。ただし、医師だけで医薬品や医療機器の承認申請を行うことは難しいので、医師主導の治験で有効性と安全性が証明されたときには、製薬企業と連携して承認申請を行うことになる。

 なお、臨床試験には、治験以外に、研究者(医師)主導臨床試験というものもある。研究者(医師)主導臨床試験は、医師主導の治験と同様に研究者(医師)が主体となって行われるものだが、承認申請は目的としない。既に承認された薬、治療法や診断法を使って、新たに最良の治療法や診断法を確立することを目指して行われる試験だ。複数の抗がん剤を組み合わせたり、手術と抗がん剤、手術と抗がん剤・放射線治療を組み合わせたりして、より生存期間の長い治療法を確立するのも研究者(医師)主導臨床試験の大きな役割である。

臨床試験は3段階、承認までは長い道のり
 治験では、段階を踏んで、新しい医薬品や治療法の安全性と効果を確認していく。

 第1段階は第1相試験(フェーズ〔Phase〕1)と呼ばれ、15〜30人という少人数の被験者を対象に、新たな薬の候補(治験薬)の人への安全性や体内動態(薬物の吸収、分布、代謝、排泄)などを調べる。次に、40〜100人を対象にした第2相試験(フェーズ2)で、安全性や有効性、最適な用法・用量を確認、探索する。最終段階の第3相試験(フェーズ3)では、200〜3000人の患者を対象に、既存薬やプラセボと比較し、そこで有効性と安全性が検証されれば厚労省へ承認申請を行う、というのが一般的な流れだ。なお、対象となる被験者数は、疾患や国際共同治験か国内の治験かで変わってくる。

 ただし、抗がん剤の治験の場合は、少し流れが異なる。

この記事を友達に伝える印刷用ページ