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がん患者のための臨床試験の話

2011/9/27

がん患者のための臨床試験の話 Vol.1

臨床試験ってどんなもの?

福島安紀=医療ライター

 「臨床試験に参加しませんか」―。がんの治療中、担当医にそう声をかけられたり、ポスターやチラシを目にしたりしたことはないだろうか。「臨床試験って興味はあるけど、なんだか怖い」「人体実験のようなものではないか」と思っている人もいるかもしれない。臨床試験は何のために実施されるのか、参加するとどんなリスクとベネフィットがあるのか―。がん患者が知っておきたい基礎知識をまとめた。


日本大学医学部附属板橋病院薬剤部(治験管理室)主任で、臨床研究コーディネーター(CRC)の榎本有希子氏

 「新しい医薬品や医療機器、治療法、検査法を開発し、実際に患者さんに使うためには、臨床試験で有効性、安全性を確かめることが必要不可欠です。現在がんの治療に使われている医薬品や医療機器も、過去に臨床試験を受けてくれた国内外の患者さんたちのおかげで誕生してきたものです」

 日本大学医学部附属板橋病院薬剤部(治験管理室)主任で、臨床研究コーディネーター(CRC)の榎本有希子氏はそう話す。

 臨床試験とは、人を対象に、医療における疾病の予防・診断・治療方法の改善、疾病原因・病態の理解、並びに患者の生活の質の向上を目的として実施される医学系研究(臨床研究)のうち、介入を伴うものをいう (参考:厚生労働省「臨床研究に関する倫理指針」)。介入とは、例えば、一般診療では行わないような検査をする、まだ認可されていない薬を投与するなど、通常の診療を超えた医療行為を、研究目的で実施することだ。

 上記の指針では、このような通常の診療を超えた医療行為を研究目的で実施する際、臨床試験として、必ず被験者(患者)に説明を行い、同意を取った上で進めなければいけないと定めている。

無作為化比較試験とプラセボとは
 抗がん剤の臨床試験では、例えば、手術後の再発予防治療として抗がん剤Aの投与が有効かどうかをみるために、被験者を、Aを投与する群と、A以外の薬(多くの場合はプラセボ)を投与する群とで比較する。

 プラセボとは、臨床試験の対象となる薬と外見(色・形・大きさ・肌合い)、重さ、味覚を含め、そっくりに製剤化されている偽薬のこと。医師も製薬メーカーの開発担当者も、中身を分析しない限り、両者を判別することはできない。

 プラセボを使った臨床試験のほとんどは「本物の薬を飲んでいるのか、プラセボを飲んでいるのかは、患者さん本人はもちろん、医師や臨床研究コーディネーターにもまったく分かりません」(榎本氏)。このように、患者が割り付けられた薬がどちらなのか、患者自身にも医療関係者にも分からないようにする試験方法のことを、「二重盲検法」という。なお、医師や試験関係者は割り付けの内容を知っているが患者には知らされない方法を「単盲検法」という。

 では、患者がどちらの薬(例:抗がん剤Aかプラセボか)に当たるかは、どうやって決まるのだろうか。

 「一般的には、製薬企業や医療機関とはまったく関係がない登録センターが、無作為に、いつ来た人は何番、という形で薬や治療法をランダムに割り振ります」(榎本氏)。このように、無作為に分けて比較する試験のことを「無作為化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)」という。

 プラセボに割り付けられた患者には、結果的には何の治療も行われない、あるいはA以外を用いた治療(多くの場合、従来の標準治療)が行われることになる。そのような場合であっても、無作為化自体が「介入」に当たり、臨床試験として行われる。

 二重盲検法による無作為化比較試験を行うのはなぜか。

 もし、医師が自分の判断で振り分けると、がんが進行しているからこの人にはこちらの薬を使わせてあげたい、体が大きいから量を多くしてあげたいといった作為が働く危険性があるからだ。また、患者がどちらの薬を飲んでいるかを患者自身や医師が知っていると、「本物の薬を飲んでいるから、効いているはずだ」などといった思い込みが、無意識のうちに働いてしまいがちだ。このような作為や先入観が働いたデータには偏りが出る危険性があり、科学的根拠としての信頼性が下がってしまう。

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