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メッセンジャーナースへの手紙

2011/9/26

メッセンジャーナースへの手紙Vol.5

「痛みをとってもらいたい」の訴えに潜んでいた問題とは

村松静子=在宅看護研究センターLLP代表

 私と話す中で、Aさんは自分でも混乱していることに気がつき、身体的な痛みと娘さんの問題を整理できないまま、先生に思いをぶつけてしまったことも悔いていました。そこで私は、娘さんの全体状況と自分のことを整理して、どのように先生に伝えるのがよいかを、一緒に考えてみようと提案しました。

 私自身は、Aさんが「身体的痛み」と表現していたことから、そのまま、身体的痛みとして医師に解決策を求めていたことを反省しました。よくAさんの状況を把握しないままに次のステップへ進んでしまって、Aさんにはつらい思いをさせてしまったと感じました。このことは医師にも伝えました。

 私は医師との話し合いで、娘さんの問題も一緒に考えないとAさんの苦痛緩和は望めないことを確認しました。また、精神的社会的側面の問題には、専門職の力を借りないと対応できないこともあることから、次の診察の際に、娘さんの精神的社会的問題にも一緒に関わってくれる可能性のある専門機関を紹介することを、Aさん本人に投げ掛けてみることになりました。

 次の診察までの期間、私は娘さんの状態や痛みの状況について、Aさんと一緒に整理しました。

 その結果、娘さんの状況は、保健師や社会福祉事務所などから「経過をみるしかない」と言われていたようで、Aさんは「また相談しても同じこと」との思いを抱いていました。最近は、娘さんとの関わり合いに距離を置いており、娘さんの受診には一緒に行っておらず、Aさんは娘さんの主治医の考えは把握していませんでした。こうしたことを話していく中で、Aさんは気持ちを整理していきました。

 診察の際にメッセンジャーナースが同席することを提案しましたが、Aさんは「自分一人で先生に話す」と言われたため、医師に伝える事柄を確認するに留めました。

 その日を境に、Aさんは娘さんの受診にも積極的に付き添うようになり、病状も明らかになって、専門の機関を受診することになりました。今では、身体的な痛みと娘さんと関連する問題を自分で整理し、医師との良好な関係が維持できているようです。

《読者の方へ》

 人間の心とは不思議なものです。Aさんは単に身体的痛みの解決を求めていたわけではなく、本当は娘さんとの間で起こっている問題を、医療者に聞いてほしかったのです。でも本人も、その心の内を自分自身では理解できていませんでした。また、その苦しい思いをどのように表現して良いのかも分からなかったのでしょう。メッセンジャーナースは、彼女との関わりの中で、Aさんの置かれているその状況に気づきました。そこで発せられたのが「こんなことって?」という一言でした。この問によって、Aさんは、今まで胸の内に抱えていた思いを吐き出すきっかけを得たのです。

 医療者の役割として重要なことの1つに、患者本人自らが、自分の抱える問題に気づき、それを整理して、自分で問題解決に動き出すことができるように支援することがあります。今回の事例はまさに代表的なものでした。

 メッセンジャーナースとは、「医療の受け手が自分らしい生を全うする治療・生き方の選択を迫られる時に、医療の受け手に生じる心理的内面の葛藤をそのまま認め、医療の担い手との認識のズレを正す対話を重視し、医療の受け手自ら選択・納得に至るまでの懸け橋になる看護師」をいいます。開業ナースの草分けである村松静子氏(在宅看護研究センターLLP代表)らがメッセンジャーナース認定協会 (吉田和子会長)を立ち上げて、新たな担い手の養成に取り組んでいます。

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