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メッセンジャーナースへの手紙

2011/7/18

メッセンジャーナースへの手紙Vol.4

胃がんの兄が1人で自宅療養、心配な家族は実家での療養を望むが・・・

村松静子=在宅看護研究センターLLP代表

《相談者への返信》

 メールを読ませていただきました。

 ご家族が様々な不安を抱えているのが伝わってきました。まだ若いお兄さんのことですから、ご本人もご家族も、そう簡単に死を受け入れられないことは十分に理解できます。そのような状況の下で、自宅療養の準備を進めておいでなのですよね。

 まず、お兄さんの身体的な状況を確認することが重要です。本人が感じている身体的状況と、実際に体の中で起きている病気の進行状況は違うかもしれませんね。そのことについては、ソーシャルワーカーに尋ねるよりも、家族として主治医に確認した方が良いと思います。自宅で、それも1人で生活するのに耐え得る身体状況なのかどうかを確認すべきでしょう。

 さらに、今後の見通しについても確認する必要があります。介護保険の要介護度の結果が出ているのでしたら、それから、どのぐらいの介護が必要なのかを推測できます。病状に加えて、1人で生活し治療のために外来に通うという生活に適応できる身体状況なのかどうかも含めて、主治医の話を聞く機会を設けてもらうのがいいと思います。

 ご本人の希望は治療を続けていくことです。主治医に面談を申し込む際は、お兄さんが自宅療養を続けるために、家族としてどのようなサポートができるかという視点から、家族が注意すべき点を、先生に具体的に伺いたいと希望されたらよいと思います。例えば、外来診療の予約日に具合が悪い時はどうするか、薬の副作用が強い時にどう対応するかなど、家族がどう対応すればよいのかを尋ねていく中で、ご本人も家族も新たな問題に気付くことができるかもしれません。また、主治医の話を伺う過程で、ご本人と家族のそれぞれの本音が見えてくることも期待できます。


《読者の方へ》

 この事例では、家族の希望を聞き入れない患者の心理と、家族とソーシャルワーカーの関係性が重要なポイントになっています。患者はなぜ、家族の意向を聞き入れようとしなかったのでしょうか。しかし、患者の考えを確かめようとしても、間に立ったソーシャルワーカーが家族の意見に耳を傾ける態度ではなかったので確認できずにいます。家族にとって、家族と患者との間にソーシャルワーカーが立ち塞がっているかのように見えたのは残念なことです。まずは、患者と家族が互いの心を通わす機会が大切になります。

 患者本人は、家族にも相談しないで自宅療養に踏み切ったのです。患者は「死ぬまで治療していたい」という言葉を口にしていたことを考えると、本当は、がんの末期という現実を受け入れたくなかったのかもしれません。だからこそ、実家に戻らなかったとも受け取れます。家族としては、まずは患者の行動を受け止めなければなりません。その上で、万が一の事態を想定した対応を考えておかなければならないのです。なおのこと、患者と家族の思いのズレを埋める作業は大切で、主治医に話を伺うことは、このズレを埋める第一歩になるのです。

 今回の事例の方は、私たちメッセンジャーナースが間に入らせていただく前に、自宅療養を始めて間もなくして亡くなられました。残念ながら、患者と家族の思いのズレを埋めるための時間は持てませんでした。

 メッセンジャーナースとは、「医療の受け手が自分らしい生を全うする治療・生き方の選択を迫られる時に、医療の受け手に生じる心理的内面の葛藤をそのまま認め、医療の担い手との認識のズレを正す対話を重視し、医療の受け手自ら選択・納得に至るまでの懸け橋になる看護師」をいいます。開業ナースの草分けである村松静子氏(在宅看護研究センターLLP代表)らがメッセンジャーナース認定協会 (吉田和子会長)を立ち上げて、新たな担い手の養成に取り組んでいます。

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