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メッセンジャーナースへの手紙

2011/5/16

メッセンジャーナースへの手紙Vol.2

抗がん剤はもうやめたい、でも命綱を断ち切るわけにはいかない

村松静子=在宅看護研究センターLLP代表

《相談者への返信》

 叔父様が発する複数の言葉から、心の葛藤が伝わってきます。「抗がん剤は命綱、それを自ら断ち切るわけにはいかない」。重みのあるこの言葉は、追い詰められている現状を表現しているとも受けとれます。心臓の悪い奥様を気遣いながら、できることを自ら選択して全力で頑張っていらした叔父様が、姪のあなたに弱音を吐いてしまう。でも、弱音を吐けるあなたがいることは、どんなにか救いになっていることでしょう。一方で、あなたにとっては、唯一医療のことが分かる親族としてのプレッシャーは相当なものとお察しします。しかし、そんな関係だからこそ、できることもあると思われます。

 1つの提案ですが、主治医に、叔父様への病状や治療に関する説明内容について、改めて確認されてはいかがでしょうか。叔父様はこれまで様々な説明を受けていらっしゃると思います。しかし、3年という長い治療期間の中で「思い違い」もあるかもしれませんし、「それは聞いていなかった」ということもあるかもしれません。今一度、現在の病状や治療による副作用の出方、今後の治療選択などについて、改めて説明を受けられると良いのではないかと思うのです。

 叔父様は、余命3カ月と告げられながらも必死にあらゆる治療を受け、抗がん剤治療も長く続けてこられたのです。健康な人の3年とはまったく違う時間だったでしょう。当初はどんな副作用にも耐え、乗り越えてきた叔父様です。改めて、主治医にこれまでの経過をたどりながら、じっくり説明いただくと良いと思います。その際に、副作用が強く、身体もしんどいことから化学療法の継続に迷いが生じている点や、それでも「命綱を断ち切る思い」から化学療法をやめると決断できないことも伝えられたらいいと考えます。

 叔父様の身体の状態は、姪のあなたに電話をしなければならないほどつらかったのかもしれません。叔母様のことをいたわりながらご自身の病気とも向き合ってこられている叔父様がです。化学療法の副作用が強く出ている今の時点では、叔父様が1人では残念ながらなさらないでしょうね。あなたが同席して一緒に主治医の話を聞くことを、まず考えてみてはいかがでしょうか。それも難しいようなら、叔父様の許可をもらって、あなたが医師との面談を代行なさるという方法も良いかも知れません。

 医師との面談によって、治療にはどのような選択肢があるのか、それは大きな病院でないと受けられないのか、あるいはもう少し身体的に負担のない治療法はないのかなどを明らかにできるでしょう。そうすれば、叔父様も、どこまで治療を求めるか、様々な方向で考えていくことができるのではないでしょうか。

《読者の方へ》

 今回の事例は、相談の相手が2人いるという点が重要です。1人は患者ご本人である叔父様。もう1人は、その叔父様からの信頼が厚い姪御さんです。私のように相談を受ける立場としては、患者さんである叔父様の心と身体両方の状態を文面から察することが何より大事です。その一方で、相談者である姪御さんへの配慮も欠かせません。この方は「親族の中で唯一医療のことが分かる人」です。なおさら、「このまま抗がん剤治療を続けるべきなのか、続ける意味があるのかどうなのか」と迷われている叔父様の心情を真正面から受け止めているに違いないからです。叔父様と同じように、葛藤を抱え込んでいるとも受け取れます。

 解決策の糸口は、主治医との面談にあります。主治医に「抗がん剤はもうやめたい。でも妻のことを思うと、命綱を自分では断ち切れない」とその苦悩を素直に吐き出すことができれば、気持ちも晴れ、おのずと答えが見えてくるでしょう。今回の事例は結局、叔父様は姪御さんと一緒に主治医の説明を受け、ご本人が納得のいく治療法を選択されました。

 メッセンジャーナースとは、「医療の受け手が自分らしい生を全うする治療・生き方の選択を迫られる時に、医療の受け手に生じる心理的内面の葛藤をそのまま認め、医療の担い手との認識のズレを正す対話を重視し、医療の受け手自ら選択・納得に至るまでの懸け橋になる看護師」をいいます。開業ナースの草分けである村松静子氏(在宅看護研究センターLLP代表)らがメッセンジャーナース認定協会 (吉田和子会長)を立ち上げて、新たな担い手の養成に取り組んでいます。

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