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こんなとき、このエキスパートのもとへ

2014/5/27

こんなとき、このエキスパートのもとへ 第15回

臨床研究コーディネーター●臨床試験への橋渡し役だけでなく試験中の悩み相談にも応える

福原麻希=医療ジャーナリスト

(左から)乳がん看護認定看護師の伊藤由紀子氏、乳腺外科医師の中村清吾氏、CRCの奥山氏

●患者はどうして治験を受けることにしたか

 都内在住の50代女性は、2010年、左乳房にがんが見つかった。がんの大きさは6センチ、リンパ節転移もあったので、主治医の中村清吾氏は病期(ステージ)をIIB期と診断した。

 女性はがんの大きさから乳房全摘を覚悟したが、中村氏は術前に化学療法によってがんを小さくしてから、部分切除する乳房温存療法を勧めた。そこで、まず術前化学療法(FEC療法=フルオロウラシル・エピルビシン・シクロフォスファミド、ドセタキセルの組み合わせ)の治療を3週に1回ずつ、点滴によって受けた。その結果、7カ月後の手術では乳房を温存することができた。術後は放射線治療後、ホルモン療法を受けた。

 だが、2年後の検診で腫瘍マーカーの上昇が認められた。MRIやCT検査の結果でも、肝臓に多発転移、骨にも転移が見つかった。今度はパクリタキセルの点滴治療を受けることになった。

 そのとき、中村氏から「パクリタキセルを改良した薬が開発されています。いま、治験をしていますが、参加しませんか」と声をかけられた。

 パクリタキセルは、すでに乳がんのほか、胃がん、肺がん、卵巣がんなどでも処方されている。だが、水に溶けにくいというデメリットがあり、それを補う添加剤が加えられていた。ところが、この添加剤にアレルギー反応を起こす可能性のある人がいるため、その予防薬を服用する必要があった。

 このパクリタキセルを、製薬会社が水に溶けやすい「ミセル化ナノ粒子」という超微粒子を用いた剤形へと改良することに成功したため、安全性や効果について確認することになった。この新しい製剤では、さらに投与時間の短縮も目指された。

 中村氏の診察と説明後、奥山氏から治験に関する詳しい内容説明があった。治験の目的、治療スケジュールや投与方法などのほか、参加するメリット、デメリットなどである。この試験は「オープン比較試験」という方法で、従来の薬と新しい剤形の薬の有効性や安全性の比較をする。投与時、どちらの薬を投与される群に入っているかは病院側にも、患者側も知っているという方法だ。(比較試験では、このほかに「二重盲検」として、どちらの薬を投与されるか、病院側も患者側も結果が解析されるまで知らないという方法もある)。

 最後に奥山氏は女性にこう言った。「いま、すぐに決めなくていいですよ。説明文書をゆっくりお読みになって、参加するかどうかは、よく考えてみてください。専門の相談窓口もありますので、ご不安やご質問があれば、どうぞご連絡ください」

 新しい薬剤の効果と安全性を評価するのが治験であるため、時には未知の副作用が生じる可能性がある。この場合、治験を依頼する製薬会社は補償することになっている。いくら主治医やCRCが説明しても、参加するかどうかは、こうした条件をよく理解した上で、患者の自由意思によって決めることができる。参加しないと決めた場合は、標準治療を受けることになる。
 
 治験中、画像検査でがんが一定以上大きくなった場合は、試験の効果がPD(progressive disease=増悪)と判定され、治験薬による治療は中止になる。「薬剤の効果が見られなくなったと判定します。これは科学的に決められている判断基準です」(奥山氏)

 この女性が治験を受けることを決めた理由はどんなことだったか。女性はこう言う。「『治験』という言葉から、実験的なイメージはありました。すごく不安はありましたが、普段から中村先生を信頼していたこと、奥山さんのわかりやすい説明に安心したことから参加することにしました」中村氏や奥山氏の、患者側に立った説明や話しぶりで、女性は信頼したという。

 治験にはデータ収集という研究の側面があるため、参加者にはスケジュールに沿った頻繁な通院や検査、アンケート調査や日誌を書くことなどが課せられる。

 女性の場合は、週1回の診察と治験薬の点滴治療、6週ごとにいくつかの検査を受けることになった。治療時は簡単なアンケートも記入する。

 治験に参加する場合は、データを取得するために必要な検査、副作用が起こった場合の薬剤の費用、治験で決められたスケジュール通りに通院するための交通費などの負担を軽減するため、負担軽減費が支払われるケースもあるが、全ての治験で支払われるわけではない。

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