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こんなとき、このエキスパートのもとへ

2011/10/18

こんなとき、このエキスパートのもとへ 第8回

作業療法士●「当たり前の動作」を取り戻すために

福原麻希=医療ジャーナリスト

写真2 箸で物をつまむ練習。指先にうまく力を入れて、細くすべりやすい棒をつまむ。

 Bさん夫妻は堺市で飲食店を営んでいる。近くの高校生が学校帰りに立ち寄る店で、Bさんお手製の「自慢のたこ焼きを食べてもらうことが生きがい」という。そこで、作業療法では、「たこ焼きがうまく作れること」「家族の食事を調理できるようになること」の2つを目標にした。具体的には、右手で包丁を握ってタコをうまく切る、生地の材料を右手で混ぜる、たこ焼きをうまくひっくり返す、食品を鍋で炒める、などの動作ができることを目指した。

 初回のリハビリで、島﨑氏がBさんの身体状況を確認したところ、右手の指の動きがぎこちなく、特に物をつかもうとしても力が入らなかった。その場合、コップなどをつかんでも、すぐ落としやすい。また、指をバラバラに動かすことができないため、箸をうまく使えなかったり、文字がうまく書けないという問題が生じていた。

 そこでBさんは入院中、毎日島﨑氏と20〜40分間の訓練をした。訓練内容は日々変化していく。取材した日は8回目で、次のような6種類のメニューだった。

 (1)数を数える時のように、それぞれの指を1本ずつスピーディに折っていく
 (2)棒をつまんで、穴の中に挿す
 (3)より小さい棒をつまんで、穴の中に挿す(前ページ写真1)
 (4)箸で小さい棒をつまんで、皿の中に入れる(写真2)
 (5)訓練用のプラスティック粘土を使って、袋を開けるときの動作のように瞬間的に力を入れて、粘土をちぎる。
 (6)プラスティック粘土を細かくして、タコに見立てて包丁で切っていく(写真3)

写真3 包丁を使う練習。訓練用のプラスティック粘土をタコに見立てて切る。

 「指を動かすときは、脳の神経細胞から指令が伝って指先に届きます。でも、半身麻痺が生じると、手足の指のように、心臓から一番遠い場所の動きが難しくなります。そこで、(2)や(3)のように、手指の腹に力を入れて物をつまむ、挿すという動きを繰り返すことで、再び脳に動きを学習させるのです」

 Bさんは、これらの訓練を非常にスムーズにこなしていた。「毎日練習したおかげで、箸でうどんがつかめるようになったんですよ。歯磨きも、リハビリ前は手が遊んでばかりで、全然磨けませんでした。最近は歯ブラシをうまく持てるようになっています」とうれしそうに話していた。

 このほか、Bさんは、右足も麻痺によって動かしにくい状態が続いていたので、特に自宅で風呂に入るときに困らないよう、右足の運び方、浴槽のまたぎ方、しゃがみ方、立ち上がり方などの練習をした。

退院後も不自由なく暮らせるよう、プロの目でチェック
 取材日は、たまたま、Bさんの「退院前家屋訪問指導日」だった。

 退院前の家屋訪問指導では、退院してから自宅で生活する時、「病院で訓練したことを生かして不自由なく動けるか」「住宅改修が必要かどうか」を、専門職の目からチェックする。リハビリテーションの「退院前訪問指導料」が適用され、医療保険でカバーできる。ベルランド総合病院では、進行がんの患者が自宅に帰る場合、必要があればできるだけ退院前に訪問するようにしている。

 島﨑氏は、医療ソーシャルワーカーの嶋内麻菜氏、ケアマネージャーの小松幸子氏と共に、Bさんの店と自宅を訪問した。Bさんは要介護認定2と判定され、退院後は介護保険のサービスを受けることになっていた。

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