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こんなとき、このエキスパートのもとへ

2011/5/31

こんなとき、このエキスパートのもとへ 第7回

理学療法士●継続したリハビリで患者の心と生活を豊かに

福原麻希=医療ジャーナリスト

(左)内山郁代氏
1994年国立療養所東京病院(現・国立病院機構東京病院)附属リハビリテーション学院卒。日本医科大学千葉北総病院勤務後、98年から現職。
(右)俵祐一氏
1997年長崎県医療技術短期大学理学療法学科専攻卒。田上病院(長崎県長崎市)勤務後、2000年に聖隷三方原病院へ。08年からリハビリテーション部係長。2010年聖隷クリストファー大学院修士課程卒。

 60代の男性Aさんは、地域検診でレントゲン撮影を受け、「肺に影がある」と指摘された。かかりつけ医にCTを撮ってもらったところ、肺がんが疑われるとして、聖隷三方原病院を紹介された。同院での精密検査の結果、やはり早期の肺がんであることが分かった。幸い、転移は見つからなかった。

 同院で内視鏡手術を受けることになったAさんは、手術2日前に入院。その夕方、俵氏はAさんのベッドサイドを訪れ、あいさつとともに、リハビリの目的や心構えを説明した。また、術後に向けて呼吸の仕方や痰の出し方を教えた。

 「術後は肺が広がりにくくなります。1時間おきに10回程度、大きく息を吸って、しっかり吐くようにします。やってみますので、見ていてください」

 俵氏はこう言って、Aさんの前でデモンストレーションをした。

 次に、「試しに、やってみてください」と俵氏が促すと、Aさんは口を大きく開けて、声を出さないよう、息をゆっくり太く吐き始めた。俵氏はその動きをじっと見守る。

 翌日も、俵氏はベッドサイドを訪れ、前日のような練習を繰り返した。それとともに、Aさんの術前の体力を把握するため、動いた時の脈拍数や呼吸状態を測定した。 

 手術を終えた翌日、俵氏が再びベッドサイドに行ったところ、Aさんは胸部の手術痕の痛みを訴え、海老のように全身を折り曲げてベッドの上で縮こまっていた。呼吸も苦しそうだった。そこで、俵氏は主治医から痛み止めを処方してもらうとともに、まず痛みの出にくい「起き上がり方」を教えた。

 俵氏はまず、ベッドの頭の方をギャッジアップした。

 「手術の傷が痛くないよう、横向きになりましょう」

 そう言って、俵氏はAさんに、ベッドに背中をつけたまま、起きる側の方向に寝返りを打ってもらった。さらに、体を起こす前に、ベッドから脚を下ろすよう指導した。

 「手すりを持って、肘と手でベッドを押しながら、体を起こしてください」

 Aさんは横を向いて柵を握る形で、脚の重みの反動を利用して、肘と手でベッドを押しながら体を起こした。これなら腹筋を使わないので、痛みを感じることなく起きることができる。

 さらに、Aさんの呼吸が苦しそうだったので、俵氏は聴診器で肺の音を聞いた。肺がどれだけ空気を取り込んでいるか、空気の出し入れは十分できているか、痰のある場所はどこか、などを確認したところ、痰がからんでいるのが分かった。

 「手術の前に練習したように、痰を楽に出す方法をやってみましょう」

 Aさんが俵氏の指導に合わせて、息をゆっくり太く吐いていった。

 「最後まで口を閉じないよう、大きく開いたままでいてくださいね」
 
 太く最後まで息を吐くことで、痰が喉元まで上がってくる。さらに、傷口に枕やクッション、バスタオルなどを当てて押さえ込むと、圧迫によって痛みを抑えることができる。

 Aさんは、その状態で強い咳をしたところ、痰をうまく出すことができた。

 午後になって痛みが治まったので、Aさんはトイレまで行くことを目標に、俵氏と一緒に歩く練習をした。翌々日になると、病院の廊下で、200m程度の距離を2往復できるようになった。

 リハビリのゴールは、術前の体力と呼吸状態に戻ること。Aさんは毎日、意識して廊下を歩き、術後8日目に退院することができた。その頃には、術後の肺がしっかり広がり、痰も自然に上手に出せるようになった。

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