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こんなとき、このエキスパートのもとへ

2011/3/9

こんなとき、このエキスパートのもとへ 第6回

言語聴覚士●治療後の飲み込みづらさ、話しにくさはあきらめないで!

福原麻希=医療ジャーナリスト

図1 頭頸部の名称 口腔底は、下顎の内側で舌の下の軟らかい組織、咽頭は、鼻の奥から食道までの空気と食べ物の通り道、喉頭は、のど仏のあたりで声帯を含む気道の一部を指す。

会話が成立しなくても、意思疎通はできる!
 一方、コミュニケーションの障害では、言語聴覚士はどのようなサポートをしてくれるのだろうか。発音に障害を残す可能性があるのは、舌がん、口腔底がん、歯肉がん、硬口蓋がん、頬粘膜がん、軟口蓋がん、扁桃がん、声帯を含む喉頭がんや下咽頭がんだ。手術で舌の一部、下あご、軟口蓋などを切除することがあり、その場所や範囲によっては発音に障害が残る。

 このうち、喉頭がん、下咽頭がん、頸部食道がんで、喉頭を摘出したり、声帯の部分切除をしたりすることで声を出す機能が失われてしまった場合は、次の3種類の方法で、代用音声を獲得することができる。

 (1)小型のマイクのような人工喉頭の機械を喉に当てて声を出す
 (2)声帯の代わりに食道の粘膜を震わせて音を出す(「食道発声」と呼ばれる)
 (3)シャント発声(気管と食道の間に器具を埋め込む手術を受けることで、発声を助ける)

 言語聴覚士は、(1)を行う患者には、入院中に人工喉頭の使い方や話すときのコツを指導する。(2)の獲得を希望する患者には、希望者に習得方法を指導する。(3)の患者については、術後の声の出し方を指導する。

 これらのがんのほか、食道がんでは、術後に声帯麻痺(「反回神経麻痺」という)の可能性がある。その場合は枯れ声になる、大きな声を出せない、長時間話すと疲れてしまうなどの症状が生じる。

 また、脳腫瘍では、ろれつが回りにくくなったり、失語症になったりすることもある。失語症の代表的な症状は、「相手の言葉は理解できるが、自分から話したり書いたりすることができない」「相手の話が理解できない」「言いたいことと違う言葉を発してしまう」「復唱できない」などだ。

神田亨 氏
1973年生まれ。立正大学経済学部卒、日本福祉教育専門学校医療言語聴覚療法学科卒。2006年から静岡県立静岡がんセンターリハビリテーション科に勤務。05年介護支援専門員資格取得。日本摂食・嚥下リハビリテーション学会認定士。がんのリハビリテーション研修会合同委員会委員。

 脳腫瘍だった男性Bさん(69歳)のケースを紹介しよう。Bさんは、手術前からの失語症が術後も残った。話し手の内容は理解できるが、自分の言いたいことがうまく頭の中で浮かんでこない。話せないだけでなく、文字を書くこともできなくなった。そこで、神田氏は、標準的な失語症の検査などでBさんの症状を確認後、絵や写真を見ながら文字を思い浮かべて、書いたり読んだりするなどリハビリを開始した。

 Bさんは退院後もリハビリを続けていたが、ある日、夫に付き添ってきた妻が「主人の言いたいことが、ほとんど分からない。もう、お互いにあきらめてしまっています」と神田氏にこぼした。失語症の症状は、自宅に戻って普通の生活に戻ると、その不自由さがよく分かる。

 そこで、神田氏は、日常生活での会話について、次の3点を助言した。

 (1)「はい、いいえ」で答えられるような質問形式にする。例えば、「今日は何が食べたいの?」ではなく、「今日は肉じゃがにしようと思うんだけど、どう?」と聞くと答えやすくなる。

 (2)相手の言う言葉は反復できるので、いくつか単語を並べて選んでもらうようにする。例えば、「デザートは、みかんとりんごと梨のどれが食べたい?」と聞けば、「りんご」と答えることはできる。

 (3)時計の時間や自分の年齢を間違えることがあるが、それは認知症になったのではない。その場合は、時計、カレンダー、地図、写真、絵、文字(漢字の単語)、実物などを使って、相手の思いや言いたいことを汲み取るようにする。ただし、50音表は失語症の人にとっては難しく、使いこなせない。

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