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こんなとき、このエキスパートのもとへ

2010/3/9

こんなとき、このエキスパートのもとへ 第3回

医療コーディネーター●24時間365日相談できる“主治看護師”

 がんと診断されたときから、患者や家族は様々な悩みを抱えます。治療選びやセカンドオピニオンの取り方、経済的な見通し、仕事は続けられるか、子育てはどうすればいいか、医師や家族との関係――。 この連載(不定期掲載)では、そんなときに、体と心、生活を支援してくれるエキスパートたちを紹介します。名前は聞いたことがあるけれど、「いつ、どんなことを相談したらいいの?」「どこにいるの?」。そんな疑問にお答えします。第3回は「医療コーディネーター」を取り上げます。



医療コーディネーターProfile

●医療コーディネーターとは?
 患者が希望する治療や療養を受けられるようにサポートしてくれる人。患者や家族の「主治看護師」「顧問弁護士」のような存在。医療者と患者の「立場の違い」から生まれる考え方の隙間を埋めながら、中立的な立場で、第三者として伴走してくれる。ただし、あくまでもコーディネーターであり医師ではないので、特定の治療法を勧めたり、「この治療法でよいのでしょうか」というような質問に答えたり、特定の病院を紹介することはしない。
 なお、「医療コーディネーター」は国家資格ではなく、一般社団法人やNPO法人などが独自の基準で認定する資格。

●どこにいるの? 何人いるの?
 一般社団法人やNPO法人などから資格を得て、独立した形で活動している。国家資格ではないので、正確な人数などは不明。

 例えば、日本医療コーディネーター協会の有資格者は全国で121人。ちなみに同協会では、病院勤務を含む医療関連業界の経験10年以上を持つ看護師有資格者が、同協会の認定講座を受講し、その講座の出席状況を含む総合判定と面接により認定を受けている。認定講座は、基礎講座(座学)6カ月36コマ、養成講座(OJT、ケースレビュー、特別講座など)約6カ月(個々の状況による)のカリキュラムが組まれている。

●医療コーディネーターを探すには?
 個々の一般社団法人やNPO法人などに直接問い合わせる。

◆一般社団法人 日本医療コーディネーター協会
http://www.jpmca.net/ Email:info@jpmca.net FAX:03-5621-8611
 協会事務局にメールやFAXで相談内容や希望事項などを連絡後、協会からコーディネーターを紹介する。コーディネートは依頼者とコーディネーターの個別の契約になり、協会は関与しない。

◆楽患ナース株式会社
http://www.rnurse.jp/  Email:info@rnurse.jp
TEL: 050-1256-8627 (10時〜21時、月〜土曜の祝祭日を除く)FAX:03-3840-1800

◆株式会社 法研
 アフラック(アメリカンファミリー生命保険会社日本支社)と業務提携契約し、「がん保険f(フォルテ)」の被保険者向けに「プレミアサポート」を提供している。「がん患者専門カウンセラー」が医療コーディネーターと同じようなサポートをしてくれる(受診の際の同行はしないなど、サポート内容に若干の違いはある)。
http://www.premiersupport.jp/index.html

●相談料は?
 特に規定はない。実働に応じて利用料金を支払うことが多い。費用は医療控除の対象にならない。
《参考》
 日本医療コーディネーター協会:1時間まで1万500円、以降30分ごとに5250円。
楽患ナース:面談1時間まで1万500円、以降10分ごとに1750円(交通費・出張費・キャンセル費有)、電話10分ごとに1750円。なお、月1度無料の対面相談日がある。



 近年、がんの標準治療の選択肢が増えて、医師から説明を受けた後で「どの治療を希望されますか」と聞かれるようになった。しかし、どう考えて判断すればいいのか、戸惑う患者は少なくない。また、分からない点があっても、どのように医師に質問すればよいのか、どこから話を切り出せばいいか分からないという患者も多い。

 そんなとき、頼りになるのが医療コーディネーター。その患者の価値観やライフスタイルに合った治療や療養を実現するためのアドバイスや、病院や医療者と患者をつなぐためのサポートをしてくれる。

面談によって、漠然とした不安や悩みを具現化する

 日本医療コーディネーター協会に所属する高橋菜子さん(38歳)に寄せられる相談は、(1)医師や家族など、患者を取り巻く人間関係の調整、(2)治療の自己決定支援、(3)カウンセリング、(4)生活・食事指導、の4つに大別できるという。(具体例は表参照)

 人間関係の調整では、主に医師と患者の間に立つ。例えば、「治療について聞いてみたいが、主治医の前に行くと、うまく聞けない」「心配なことがあるが、医師は忙しそうなので、どう切り出せばいいか分からない」「医師に質問などしたら、失礼になるのではないか」と思っている患者は、まだまだ多い。また、聞きたい内容も、漠然としていて整理できていないこともある。

 患者は高橋さんと面談することで、どういったことが気になっているのか、何を知りたいのか、その内容を具体化して整理することができる。そして、それをメモに書き留め、優先順位を付けていく。必要があれば、医師に対する聞き方についても相談することができる。

 「事前に質問事項を書いた手紙を医師に送っておけば、病院でカルテに保管され、診察時に答えをもらうことができます。また、診察時間内で話が終わらないようであれば、午後、医師の都合に合わせて別の枠を取ってもらうことも考えられます」と高橋さんはアドバイスする。

 治療の自己決定を支援する場合は、まず、医師の説明で分からなかった部分を高橋さんが分かりやすく話し、その内容を確認し合う。さらに、治療のメリットやデメリットのほか、それぞれの患者や家族の生活スタイル(例えば、仕事で出張が多い、介護が必要な親と同居しているなど)まで含めて、どの治療が最良かを一緒に考える。在宅医療の準備や相談も受けることもある。

 また、がんと診断されて、「頭の中が真っ白になってしまった」「頭では分かっていても、心がついていかない」など、漠然とした不安や悩みを抱く患者の気持ちを受け止めるのも医療コーディネーターの役割だ。「第三者だから話せることもあります。決して、一人で抱え込まないでほしい」と高橋さんは言う。


高橋菜子さん
1993年広島県・呉共済病院看護専門学校卒。04年東洋英和女学院大学卒。東京共済病院外科、みなと赤十字病院勤務を経て、医療コーディネーターとして独立する。
 このほか、看護師の経験が豊富な医療コーディネーターには、胃や大腸を切除した後の病状に応じた食事の形態や作り方も相談できる。手術後のリハビリ、リンパ浮腫などの後遺症の予防や発症したときの対応などについてもアドバイスを受けられる。

 「これらは、病院の看護師も相談に乗ってくれます。でも、病院では交代勤務ですから、いつも同じ人が相談に乗ってくれるわけではありません。一方、医療コーディネーターは、患者さんが希望すれば同じコーディネーターが何度でも相談を受けることができます。ここが病院の看護師との大きな違いですね」と高橋さん。医療コーディネーターが「主治看護師」と呼ばれるゆえんだ。携帯電話の番号も伝え、24時間365日体制だが、実際には緊急時以外、夜中に電話がかかってくることは、ほとんどないという。

「患者さんの心をサポートしていきたい」という思いで転職
 高橋さんは医療コーディネーターとして活動する前の11年間、総合病院の外科の外来で、看護師として忙しい日々を送っていた。

 ある日、がんの告知を受けたばかりの患者が、とても不安そうな表情で待合室に座っていた。「声を掛けてほしいんだろうな」。でも、高橋さんは仕事に追われ、話しかけることができなかった。ようやく、一息ついたときには、既に患者の姿はなかった。こんなことが何回も重なった。「もっと、患者さんの心をサポートしないと、次のステップの治療を受けるのが難しいんじゃないか」。そう気付いていても、行動に移すことは、なかなかできなかった。

 そんなとき、高橋さんは父親を看取った。それまで、「自分は医療者だから、家族が病気や事故に遭っても動揺することはない」と高をくくっていた。だが、実際、その場面に出くわしたとき、まったく心がついていかなかった。頭と心がバラバラの方向を向いてしまった。「自分の心をコントロールできない」。高橋さんはこの体験をきっかけに病院を退職し、大学で心理学を4年間学んだ。

 卒業後、また病院に戻ったところ、今度は救急部に配属された。「医療コーディネーター」という仕事があることを知ったのは、この時期だった。「患者の視点で、ニーズに応えていく」という発想が高橋さんには新鮮に映った。


面談によって患者の漠然とした不安や悩みを具現化する高橋さん。
 ある日、末期の乳がん患者と出会う。いろいろな相談に乗り、病院に同行したり、主治医の話を一緒に聞いたりするうちに、強い絆が結ばれた。患者から「高橋さんと話して、私は自分にはこの治療がいいと思うから、そうするね」と言われ、臨終まで立ち会った。「このとき、最期まで患者さんと伴走することの大切さをかみしめました。そして、患者さんと心が通じ合っているところに、やりがいを感じました」と高橋さんは振り返る。
 この乳がんの患者に、「『この活動を続けて』と遺志をもらったような気がして」、医療コーディネーターの勉強を始めた。

「医療は万能」というのは勘違いだった 医療コーディネーターになって7年、高橋さんはいろいろな患者と喜怒哀楽を共にし、その人生に関わってきた。

 特に、患者の家族から「今できることは、すべてやりました。これで何かあっても、仕方ないと思えます」と言われたとき、高橋さんは「納得して治療を受けられる環境を整備していくことが、前向きに闘病しようとする患者さんやご家族の力になる」と実感したそうだ。

 こんなことがあった。がんが全身に転移し、「もう治療法がない」と医師に宣告された女性がいた。その後も、彼女は車いすに乗って海外や国内旅行に行く。旅行から帰ってくると、表情が生き生きしているだけでなく、血液データがグーンとよくなる。既に4年が経った。「そんな姿を見て、楽しいことやうれしいことを実行していくこと、自信を取り戻すこと、人との関係から愛や信頼を得られることが、自然治癒力を高めていきます」。

 病院に勤務していたとき、高橋さんは「医療は万能だ」と思っていた。だが、「今思えば、それは勘違い」だった。患者の人生に寄り添ううちに、社会全体から医療を見ることができるようになった。高橋さんはこう言う。「受け手の患者さんの体と心の状態が整って、初めて医療が成り立つと分かりました。医療の恩恵を最大に受けられるよう、精一杯サポートしていきたいと思っています」

(福原 麻希=医療ジャーナリスト)

  


《2010年3月11日に以下を訂正しました》

・日本医療コーディネーター協会のFAX番号が03-5226-8202となっていましたが、正しくは03-5621-8611でした。

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