このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

がんに負けないお金の話

2010/11/9

がんに負けないお金の話Vol.4

「ジェネリック」の抗がん剤で薬剤費を抑える

福島安紀=医療ライター

 「抗がん剤治療は薬剤費が高いため、ジェネリックを使うことで患者さんの自己負担が少なくなるメリットは大きい」――国立がん研究センター中央病院薬剤部部長の山本弘史氏は力説する。ジェネリックを使うと、どの程度、自己負担が軽減できるのだろうか。また、品質に心配はないのか、探ってみた(本文中の薬価や適応はすべて2010年10月現在の情報に基づく)。

「薬剤費が高い抗がん剤治療では、ジェネリックを使う経済的メリットは大きい」と話す、国立がん研究センター中央病院薬剤部の山本弘史氏。

 「ジェネリックを使う最大のメリットは、患者さんの自己負担が安く済むこと。抗がん剤でも、以前に比べてジェネリックを使う病院が増えてきています」と山本氏は話す。 ジェネリックとは、新薬である先発医薬品の特許が切れた後に市場に出回る医薬品のことで、後発医薬品とも呼ばれる。主成分は先発医薬品と同じであるにもかかわらず、開発費用がかからない分、価格が安い。例えば、肺がん、卵巣がん、子宮頸がんなどに使われるカルボプラチン450mgの場合、ジェネリックの薬価は1本約2万1000円〜約2万9000円で、先発品(4万2322円)の半分から7割程度だ。

 では、化学療法でジェネリックを使うと、どの程度自己負担が軽減できるのだろうか。山本氏に、代表的なレジメンでジェネリックを使った場合の価格差を計算してもらったのが表1である。例えば、カルボプラチンとパクリタキセルの併用療法の場合、ジェネリックを使って6コースをフルに受けると、病院の窓口で支払う薬剤費の自己負担額は、医療保険の自己負担割合が3割の人で約9万円安く済む計算になる(ジェネリックの価格は、国立がん研究センター中央病院で採用している銘柄の薬価で計算した)。

 カルボプラチンのように、1つの先発医薬品について、複数の会社がジェネリックを販売していることもある。そうした場合、同院では導入に際して競争入札を行い、溶解性、液だれや空気の混入がないか、開封のしやすさなどを薬剤部でチェックし、条件をクリアした製品の中から最安値のものを選んでいるという。なお、同じ条件で同価格のジェネリックが複数ある場合には、くじ引きで採用の可否が決められる。

抗がん剤のジェネリックが少ない理由
 現在発売されている主なジェネリック抗がん剤と先発医薬品との価格差は表2の通り。ジェネリックの薬価は、先発医薬品の4割〜7割に設定されている。だが、ジェネリックのある抗がん剤は意外に少ない。先発医薬品の特許期間は通常20年間(開発期間10〜15年を除く5〜10年が独占販売期間)であり、最近開発が目覚ましい分子標的治療薬など、新しい薬にはもちろんジェネリックはないわけだ。

 「新薬の開発には巨額のコストがかかります。それを回収してまた新たな薬を開発するのが製薬会社の使命ですから、新しい抗がん剤が高価なのは当然といえます。しかし、問題は、注射用のフルオロウラシルやメトトレキサートなど、かなり前に特許の切れている古い抗がん剤でもジェネリックがないものがあることです」

 山本部長はそう指摘する。抗がん剤は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の薬に比べて投与対象になる患者の数が少なく、市場が小さい。このため、後発品メーカーが参入を躊躇する面があり、競争が促進されないことが、古い抗がん剤であってもジェネリックが存在しない要因になってきたという。

 また、ジェネリックの中には、先発品と比べて適応が限定される薬もある。例えば、ゲムシタビンにはジェネリックがあるが、先発医薬品で効果が認められている膵がんの治療には使うことができない。そのため、国立がん研究センター中央病院では、ゲムシタビンに関してはジェネリックを採用していないという。

ジェネリックの気になる品質は?
 ジェネリックの最大のメリットは価格の安さだが、その品質を疑問視する医師も少なくない。抗がん剤に限ったデータはないものの、厚生労働省の調査によると、全医薬品に占めるジェネリックのシェアは2009年9月時点で20.1%(数量ベース)。ジェネリックの普及率が6割を超えるイギリス、ドイツ、アメリカと比べてあまりにもシェアが少ない背景には、日本の医師のジェネリックに対する不信感があるとみられる。ジェネリックを使うことで治療面でのデメリットはないのだろうか。

三井記念病院乳腺内分泌外科の福内敦氏。これまで使ってきたジェネリックで先発医薬品と差があると感じたことはないという。

 「ジェネリックの導入を検討した当初は、他科の医師から、『海のものとも山のものとも分からないジェネリックに切り替えて本当に大丈夫なのか』と言われたことは事実です。確かに、ジェネリックといっても幅が広いので、中には、薬を安定供給できない、錠剤が溶けにくいなど問題のあるものが全くないとはいえません」。2006年、比較的早い段階で乳がん治療にパクリタキセルのジェネリックを導入した三井記念病院乳腺内分泌外科医長の福内敦氏はそう話す。しかし、アメリカでのパクリタキセルのジェネリックのシェアは82%で、当時、同院が採用を検討したパクリタキセルのジェネリックは既に50カ国で使われ、臨床試験にも使用が認められていた。こうしたことから、信頼性の高い薬剤だと判断して導入に踏み切った。

 「ジェネリックは、厚労省の基準を満たして認可された薬であり、これまで使ってきたジェネリックに関して、効果、副作用とも先発医薬品と差があると感じたことはありません。術前化学療法でも使用していますが、先発品と同様、CR(完全奏功)になったケースももちろんあります」と福内氏。

 同院では、入院時の支払いにDPC(診断群分類包括評価)を導入したことに伴い、2009年9月、ジェネリックの活用を全科へ広げ、エピルビシン、カルボプラチンなどもジェネリックを使用するようになった。DPCとは、診断群分類ごとに1日当たりの診療報酬(医療機関が診療行為の対価として受け取る報酬で、公的医療保険と患者の自己負担で賄われる)を一定額に定めた支払い制度で、検査や治療の内容にかかわらず(手術など一部出来高払い)、診断群が同じなら診療報酬は一律になる。この制度を導入した場合、価格の安いジェネリックを使えば、それだけ病院の収入が増えるため、経営面を考えて先発医薬品からジェネリックに切り替える病院が増えているのだ。

 「DPCを導入する病院が増えたことで、最近では、抗がん剤でも特許が切れるとほぼ同時にジェネリックが出るようになってきています。多くの病院がジェネリックを使うようになれば、抗がん剤を低価格で安定供給するジェネリックメーカーが増えるでしょう。DPCを導入している病院では、ジェネリックを採用しても患者さんの自己負担額が減ることはありませんが、安価なジェネリックの普及によって、外来化学療法の薬価やDPCの入院医療費などが下がれば、将来の患者さんが経済的恩恵を受けられるはずです」。山本氏は、そう期待を寄せる。

ジェネリックへ変更するには
 では、患者が、経済面の負担を減らすために、ジェネリックの抗がん剤を希望するときにはどうしたらよいのだろうか。また、逆に、ジェネリックを使っている病院で、先発医薬品を希望することはできるのだろうか。

 「今のところ、病院で点滴投与する抗がん剤については、1つの成分について先発医薬品とジェネリックの両方をそろえている病院は少ないと思われます。同じ成分で違う商品名の薬剤が増えれば、医療スタッフの混乱を招き、取り違え事故などのリスクが高まるからです。在庫管理のコストやスペースもかさみます。ですから、先発医薬品を使っている病院で患者さんがジェネリックを、または、ジェネリックを使っている病院で先発品を希望しても、すぐに切り替えるのは難しいかもしれません。なぜジェネリックを使っていないのか疑問に思ったり、反対に、ジェネリックを使うことに不安を抱いたりしているときには、医師や薬剤師にその気持ちを伝え、納得した上で化学療法を受けることが大切です」と山本氏はアドバイスする。

 ただ、内服薬の場合には事情は異なる。一部の経口抗がん剤、乳がんのホルモン療法で使われるタモキシフェン、オピオイド鎮痛薬や解熱鎮痛消炎薬、消化性潰瘍用薬など、がん治療に伴って処方される内服薬では、処方箋の「後発品へ変更不可」の欄に医師の署名、捺印がなければ、薬局でジェネリックを選択することが可能だ。ジェネリックを希望する場合には、担当の医師に、そのことを事前に伝えておくとスムーズだろう。

 例えば、タモキシフェン20㎎1錠の先発品は369.5円、ジェネリックは236.2円。ジェネリックを使えば1カ月で薬剤費総額は約4000円(自己負担3割の人で約1200円)、5年間では総額約24万円、3割負担の人で自己負担が約7万円軽減できる。

 外来での薬物治療の費用が負担になっている人は、自分が使っている薬にジェネリックがないか、医師や薬剤師に聞いてみてはいかがだろうか。

この記事を友達に伝える印刷用ページ