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がんに負けないお金の話

2010/7/27

がんに負けないお金の話Vol.2

がん患者でも「障害年金」が取得できる!

福島安紀=医療ライター

 がんの患者が、障害年金を利用できるケースがあることをご存知だろうか。治療費が工面できず生活費にも困っているからといって、うっかりカードローンを利用してしまったら利息の支払いだけでも大変だ。障害年金など社会制度を利用して、経済的な問題を解決するコツを探ってみた。



治療費の増大で生活費に困ったときは
 「これ以上、家族に迷惑は掛けられない」「子供の学費が掛かるので、自分の抗がん剤治療はあきらめようと思っている」。高額な治療費が生活を圧迫し、治療を断念する人がいる。治療を継続する人の中にも、生活費の工面に苦心する人は少なくない。

 日本医療政策機構が実施した「がん患者意識調査」では、回答者(1600人)の7.5%、121人が、経済的な負担が原因で治療を断念したり、最も受けたい治療をあきらめて別の治療を選択した経験があると回答した。


「患者さんや家族だけで悩まずに、病院の相談室やがん診療連携拠点病院の相談支援センターなどで相談してみてください」と語る国立がん研究センター東病院患者・家族支援相談室の坂本はと恵さん
 「高額療養費制度を利用しても治療費が支払えないなど、金銭的に困っているときには、活用できる制度がないか、がん診療連携拠点病院の患者支援センターや病院の患者相談室で相談してみましょう。会社員や公務員で休職している人には傷病手当金が出ます。さらに収入の有無に関わらず65歳未満で機能障害があったり、以前より身体機能が落ちていて生活や仕事に支障が出ているという人なら、障害年金を受給できる可能性があります」

 国立がん研究センター東病院患者・家族支援相談室の社会福祉士、坂本はと恵さんはそうアドバイスする。傷病手当金は、会社員や公務員が病気のために仕事を休んで無給になったときに利用できる制度で、標準報酬日額の3分の2が支給される。万が一、失業した場合には、失業保険の利用も考えたい。

障害年金受給のポイント
 また、障害年金は、病気やけがが原因で生活や労働に障害を来したとき、生活を保障するために支給される年金である。

 障害基礎年金の金額は1級で年間約99万円、2級約79万円で、18歳以下の子供がいる場合には加算が付く。障害厚生年金は報酬月額によって異なり、3級の場合には最低保障額が約59万円と決まっている。1級、2級で厚生年金、共済年金に加入している人は、障害基礎年金に障害厚生年金か障害共済年金が上乗せされる。

 受給できるのは、初めて医師の診療を受けたときから1年6カ月経過したとき(その間に治った場合には治ったとき)に障害の状態にあるか、または、65歳に達するまでの間に障害の状態になったとき。「がんは障害なのか」と思う人もいるかもしれないが、実際に、日常生活能力や労働能力に障害があるとして、障害年金を受給するがん患者は増えているという。初めて医師の診療を受けた日から1年6カ月以内の場合でも、人工骨頭または人工関節の挿入、人工肛門または新膀胱の増設、喉頭全摘出などは、「その手術日が障害認定日となる」と決められており、この条件に当てはまる人は特に障害年金の受給が認定されやすい。

 障害年金が受給できる等級には1〜3級がある。障害の程度の目安は表1の通りで、1級が最も障害の程度が重い。国民年金のみ加入している人が障害年金を受給できるのは、市区町村か年金事務所で申請し1〜2級と認定されたとき。初診日に厚生年金や共済年金に加入していれば3級でも障害厚生年金(障害共済年金)が受給できる。

 1級、2級が日常生活を行う能力の低下や喪失が基準になるのに対し、3級は労働能力の喪失度合いが問われる。たとえ、がんの治療前後に仕事を辞めていても、初診日に会社員か公務員なら障害厚生年金が受け取れるのがポイントだ。なお、障害年金の等級は、身体障害者手帳の等級とは別のものなので混同しないよう注意してほしい。

 「がんの患者さんは、病状が進んで実際には身体機能が落ちていても、一見、生活や労働に何の支障もなさそうに見えるので障害年金の支給が認められにくい面があります。しかし、治療前の30%程度しか働けない、治療後の副作用でベッドに横になっていることが多いなどと医師に具体的に伝えて診断書を書いてもらうと、障害年金を認められる可能性が高くなります」(坂本氏)

 30代で悪性リンパ腫になったAさんは、週5回非常勤で働いていたが、治療のために生活と仕事に支障を来し収入が激減したため、障害年金を申請した。2級と認定されて障害基礎年金を受給している。

 Aさんは、2週間に1度抗がん剤治療を受けたが、吐き気がひどく、抗がん剤治療直後はトイレに行くのも介助が必要でほぼ寝たきりの状態だった。1週間後には少し起き上がれるようになって、食事も少しずつ取れるようになったが、回復してきたころにまた次の抗がん剤治療を受けなければならない。この繰り返しで、何とか自分で身の回りのことができるのは抗がん剤治療の合間の2〜3日という状態だった。抗がん剤治療が終わった後は、出勤の回数を週3回に減らして仕事に復帰しているものの、治療前の40%程度しか働けないため、最後の抗がん剤投与が終わったころに障害年金を申請したそうだ。

 Aさんの場合、最初に申請したときは、「主治医の診断書からは、治療の副作用で生活と仕事に支障が出ていることが分からない」という理由により申請が受理されなかった。そこで改めて医師の診断書に「抗がん剤治療中はほぼ寝たきりで介助が必要な状態」「以前の40%程度しか働けない」といった具体的な記述をしてもらうことで障害年金の受給につながったという。がん種に関わらず、抗がん剤治療の副作用で生活や仕事に支障が出ている人には、参考になる事例だ。

 また、抗がん剤治療中のタクシー運転手Bさんは、大腸がんの手術後に頻便、頻尿で頻繁にトイレに行くようになってしまい、仕事が続けられなくなった。既に50代で治療中であり、再就職が難しいため障害年金を申請した。やはり2級と認定され、障害基礎年金と障害厚生年金を受給している。

 もしもBさんが事務職なら、頻繁にトイレに行ってもそれほど問題がないので、障害認定されなかったかもしれない。労働に支障があるかどうかは、職種によっても異なるわけだ。障害年金を受給するためには、生活や労働に支障が出る理由を医学的な見地も含め、医師に書いてもらうことがポイントとなる。医師が忙しく詳しい仕事の内容などを説明するのが難しいようなら、具体的な記述内容は病院の相談員やソーシャルワーカーに相談し、主治医への橋渡しを頼んでもよいだろう。

生活保護を受ける手も
 障害年金の申請先は、自営業や無職で国民年金のみに加入している人は市区町村の国民年金担当課、厚生年金の人は勤務先の所在地を管轄する年金事務所、会社員の扶養家族になっている人は居住地の近くの年金事務所である。共済年金の人は共済組合が申請先になる。申請には、障害給付裁定請求書、年金手帳、医師の診断書などが必要だ。

 一方、障害年金の受給対象にはならないが、本当に生活費も医療費もねん出できず経済的に困っているときには、生活保護を利用する手もある。生活保護を受ければ、医療費は全額公費で賄われ病院窓口での自己負担はゼロになる。生活保護を受けることには抵抗がある人もいるかもしれないが、症状が改善して働けるようになったら返上して自活すればよいので、考えてみよう。

 問題は、配偶者や同居の親などには一定の収入があるが、高価な抗がん剤など医療費までは賄えないほど家計が逼迫(ひっぱく)しているようなケース。生活保護の対象になるかどうかは世帯収入が最低生活費(居住地、家族の人数で異なる)を下回っているかどうかで判断されるため、いくら本人が経済的に困っていて家族も援助できない状態でも、それを超えていれば保護は受けられない。

 進行がんで継続的に抗がん剤治療を受けているCさんは、かさむ医療費の支払いに困り生活保護の受給を考えたが、妻の収入が最低生活費をわずかに超えていたため、保護が受けられなかった。預貯金を治療費のために使い果たし、そのままでは治療を断念せざるを得ない。Cさんは、泣き叫ぶ妻を説得して離婚し、生活保護を受けて治療を継続した。Cさんのように、高価な抗がん剤治療を続けるために離婚をして生活保護を受けるなど、苦渋の選択を迫られる人は少なくない。

 「生活保護では、Cさんのように離婚までしなくても、別々に生活していると見なして保護した方がその家族の自立につながると判断したときには、世帯分離という形でその人をほかの家族と切り離して考え、保護が認められる場合があります。また、持ち家では生活保護が受けられないと思っている方もいるようですが、既にかなり古い家で資産価値が低いような場合には生活保護が認められるケースもあり、ケースバイケースです。患者さんや家族だけで悩まずに、病院の相談室やがん診療連携拠点病院の相談支援センターなどで1度、相談してみてください」と坂本氏は強調する。

 さらに、治療費のために子供の学費が工面できないときには、都道府県社会福祉協議会が実施している教育支援資金(無利子)や日本学生支援機構などの奨学金を利用する方法もある。

 このように、医療費の支払いや生活費に困ったら活用できる手段は複数ある。消費者金融、クレジットカードの分割払いやリボ払いも含め、利息の高いローンは利用しないようにしたいものだ。

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