このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

がんに負けないお金の話

2010/6/15

がんに負けないお金の話Vol.1

治療費負担を減らす「高額療養費制度」フル活用術

福島安紀=医療ライター

 「『抗がん剤の費用を払えない』など、経済的な相談で病院の相談室に来る方が非常に増えています。治療をあきらめる前に、高額療養費制度のことを知って活用してほしい」―― 国立がん研究センター東病院患者・家族支援相談室の社会福祉士、坂本はと恵氏は強調する。現行の高額療養費制度には、制度の不備はあるものの、フル活用すれば負担額が減る場合もある。あなたは知らずに損をしていないだろうか。治療費の自己負担を減らす方法とは――。



 「費用が高いので治療を受け続けるべきか悩んでいる」「がんになっただけでもつらいのに、治療費が高くて負担が重過ぎる」――。医療費の支払いに負担を感じるがん患者が増えている。実際、2009年に日本医療政策機構が実施した「1600人のがん患者意識調査」でも、7割の患者が治療費の負担が大きいと訴えている。

 1カ月にかかった医療費の自己負担額が一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合には、高額療養費制度が適用される(囲み参照)。ただし、問題は外来での支払いだ。外来化学療法が普及し、新規抗がん剤や分子標的薬は高額であることもあって、外来で高額の自己負担を強いられる人も増えている。

 例えば、切除不能の大腸がんの標準治療であるベバシズマブとFOLFOX(5FU+LV+オキサリプラチン)併用療法を外来で月2回受けた場合は、薬代、検査料・処置料も合わせると医療費の総額は体重60㎏の人で1カ月約66万円、1回の自己負担額は約10万円になる。月2回で約20万円を支払わなければならず、後から戻ってくるとはいえ、毎月この金額をねん出するのは大きな負担である(金額は2010年4月現在)。

 また、乳がんでトラスツズマブの投与を受けている30代の女性は、「窓口での支払いがとても高くて負担。せめて外来でも入院と同じように、限度額適用認定証を使えるようにしてほしい」と訴える。

※高額療養費制度とは

 高額療養費制度とは、1カ月にかかった医療費の自己負担額が一定の金額(自己負担限度額、表参照)を超えた場合、それ以上は支払わなくてもよい、あるいは窓口で支払った後に戻ってくる制度。自己負担限度額は、所得や年齢によっても異なるが、70歳未満で一般所得の人なら、「8万100円+(総医療費−26万7000円)×1%」である。つまり、窓口での医療費の負担が約8万円以上なら、高額療養費制度が使える可能性が高いということだ。

 高額な治療が長期に渡る場合には、4カ月目からは自己負担限度額の上限が下がって70歳未満一般所得の人で4万4400円になる。

 入院する場合には、事前に、加入している健康保険組合や社会保険事務所、自治体の国民健康保険窓口で「限度額適用認定証」をもらって医療機関に提出すれば、窓口の支払いが自己負担限度額の範囲内の約8万〜9万円程度で済む。70歳以上の人が入院したときには、この限度額適用認定証を提出しなくても、窓口での支払いが4万4400円(一般所得)以下になる仕組みになっている。

 患者団体などからは、長期に渡って高額な医療費がかかっている人のさらなる自己負担軽減策を求める声も強く、社会保障審議会が高額療養費制度の見直しを検討する予定だ(2010.6.4「高額療養費制度を見直し、患者の負担軽減求める要望相次ぐ」参照)。

貸付制度と委任支払い制度を活用しよう

坂本はと恵氏
 確かに、外来では限度額適用認定証が使えない。だが、坂本氏は、「治療費の支払いに困っている場合には、高額療養費貸付制度か委任払い制度を使えば、外来でも、患者さんの負担額は自己負担限度額の範囲内かそれを少し超える程度で済む」とアドバイスする。

 「高額療養費貸付制度」は、高額療養費制度で払い戻される金額の8〜9割を無利子で借りられる制度。借金ではなく、高額療養費を先取りする形だ。高額療養費の払い戻しには2〜3カ月かかるため、貸付制度を利用すれば当座の治療費を工面できる。また、「委任払い制度」を活用すれば、外来で高額な治療を受けたとしても、限度額適用認定証を使ったのと同じように窓口の支払いが自己負担限度額の範囲内で済む。高額療養費分の支払いは、健康保険組合(国保の場合は市区町村)に委任して医療機関へ直接支払われることになるわけだ。

 なお、貸付制度や委任払い制度が利用できるかどうかは、加入している健康保険によって異なる。詳しくは、病院の患者相談窓口や健康保険組合(国民健康保険の人は市区町村)に問い合わせてみるとよいだろう。

 病院にとっては、高額療養費分の治療費の回収が2〜3カ月先になるため、委任払い制度の利用を嫌がる医療機関もあるようだが、一時的に高額な費用が工面できずに治療をあきらめるくらいなら、病院のソーシャルワーカーや相談員に相談の上、交渉してみるとよいだろう。

院外処方、複数科受診でも高額療養費が利用できる
 ところで、少し細かい話だが、高額療養費制度には患者にとっては不可解とも思えるルールがある。同じ病気で受診したとしても2つ以上の医療機関にかかった場合には、窓口での自己負担額が1医療機関当たり2万1000円以上にならなければ、たとえ総額で自己負担限度額を超えても高額療養費制度の対象にならないのだ。

 乳がんの治療中の40代の女性は、こう憤る。

 「私が治療を受けている病院は院外処方なので、飲み薬を薬局でもらったら、その分は病院の窓口で支払った金額と別に計算しなければならず、総額は自己負担限度額を超えているのにお金が戻ってきませんでした。また、私はホルモン療法を受けているので、乳腺外科のほかに婦人科で検査を受けていますし、薬の副作用でうつ症状が出たので心療内科で治療を受けましたが、これらも別々に算定され高額療養費制度の対象になりませんでした。すべて乳がんになったから受けた治療や検査なのに、おかしいと思います」

 この不満を解消できる可能性があることをご存知だろうか。

 「実は、院外処方に関しては、厚生省(当時)が昭和48年10月17日に『高額療養費支給事務の取扱いについて』という通知(表2)を出しています。通知によると、院外処方の場合でも、その薬局の支払い分と処方せんを出した医療機関での支払額を合算して自己負担限度額を超えれば、高額療養費の対象になることになっているのです」と坂本氏は指摘する。

 例えば、病院での1カ月の自己負担額が12万円、その病院から出された処方せんによる薬代が1万円なら、治療費は13万円となり、ここから自己負担限度額を差し引いた金額が戻ってくるということだ。経口抗がん剤も増えており、院外処方の薬局分も合算できるのであれば、戻ってくる金額もその分大きくなる。

 では、なぜ、前出の40代の女性の場合には、院外処方の薬代は合算されなかったのだろうか。厚生労働省保険局保険課に聞くと、「保険者(健康保険組合、市区町村など)の担当者が通知を知らない場合もあると思いますし、法律のように必ず守らなければならないものではないので、院外処方の分を合算するかどうかは保険者の判断によります。まずは、院外処方の分も処方せんを出した医療機関への支払いと合算して高額療養費の対象にしてもらえないか、保険者に交渉してみてはいかがでしょうか」と話す。

 一方、がん治療のため外科、内科、放射線科など複数の科を受診している人は多いはずだ。これに関して、従来は同じ病院であっても異なる診療科を受診するときは別の医療機関として扱われていたが、今年4月からは、同じ医療機関の中であれば、複数の科を受診したとしても合算して算定できることになった。それぞれの科でかかった治療費の金額にかかわらず、すべての診療科を合わせて1カ月に支払った医療費が自己負担限度額を超えれば、高額療養費制度の対象となるわけだ。

 ただし歯科だけは例外で、同じ病院内でも1カ月2万1000円を超えなければ合算できない。また、同じがんの治療でも別の医療機関へ行ったときには、やはり、1医療機関当たりの自己負担額が1カ月2万1000円を超えなければ、高額療養費制度の対象にならないという。歯科は別として、ほかの病気の治療も含め複数の科を受診するときには、同じ病院を利用した方が得ということである。

同世帯家族の医療費も合算して申請しよう
 ほかの医療機関で2万1000円以上かかった人はその分も合算できるが、さらに同じ世帯で加入している保険組合も一緒の家族が、同じ月に2万1000円以上医療費がかかった場合も合算できることをご存知だろうか。別々に申請するよりも、すべて合算して高額療養費の申請をした方が戻ってくる金額が大きいので、ぜひ合算して申請しよう。

 健康保険組合や市区町村によっては、自分で申請しなければ、たとえ自己負担限度額を超えていても高額療養費が戻ってこないところもある。「中には、保険組合から申請書が自宅へ郵送されてきているのに、何のことか分からずに申請していない人もいました。民間保険などの保険金をもらっていたとしても、高額療養費制度は利用できますので、忘れずに申請してください。ほかに利用できる制度がある場合もありますから、治療費の支払いに困るようなときには、かかっている病院のソーシャルワーカーなどに相談してみるとよいでしょう」と坂本氏は話す。

 分からないことは病院の相談室で聞き、まずは現行の高額療養費制度をフル活用して少しでも多く治療費を取り戻したいものだ。

《訂正》2010.6.16に以下を訂正しました。
・外来での治療費の支払いに関する坂本氏のコメントを以下のように訂正しました。
(訂正前)「治療費の支払いに困っている場合には、高額療養費貸付制度か委任払い制度を使えば、外来でも、窓口での支払いが自己負担限度額の範囲内で済む」
(訂正後)「治療費の支払いに困っている場合には、高額療養費貸付制度か委任払い制度を使えば、外来でも、患者さんの負担額は自己負担限度額の範囲内かそれを少し超える程度で済む」
高額療養費貸付制度を利用した場合は、窓口ではいったん患者さんが全額を支払う必要があります。お詫びして訂正いたします。

この記事を友達に伝える印刷用ページ