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がんの経過観察はクリニックで受ける時代に

2010/2/22

がんの経過観察はクリニックで受ける時代に(5)

胃・大腸がんのフォロー(前編):2人主治医制で検査もれや見逃しを避ける

胃・大腸がん治療後に診療所で経過観察を受ける際のポイント
●1〜3カ月おきに腫瘍マーカーのチェックを受ける
●食事摂取状況や体重に気を配り、こまめに報告する
●不安や症状があれば、すぐ相談する
 国内での罹患数1位の胃がんと2位の大腸がんは、専門病院と診療所の連携(病診連携)のニーズが最も高いがん種だ。2003年の調査では罹患数はともに10万人を超え、5年生存率も60〜70%程度。早期に見付かるケースが増えており、多くが治癒する時代になった。

 胃がんも大腸がんも、治療後原則5年間は定期的に検査をし、再発がなければ「治癒」と判断できる。そのため、連携の最大の目的は、その5年の間にがんが再発していないかを診療所の医師とがん治療専門医が協力して確認していくことだ。

 岩手県立中央病院副院長の望月泉氏は、「再発は術後1〜2年で起こることが多いが、節目ごとにチェックすることが必要だ」と話す。基本的な検査スケジュールはガイドラインでおおむね決まっているため、それに沿って診療所が担える部分は診療所で、専門的な検査は病院で、分担して行うことになる。

写真1 福井県済生会病院の連携カルテの表紙。病院医師と診療所医師が2人で診ていくことを強調している。

 連携に用いるクリニカルパス(それぞれの病気の検査や治療、術後のリハビリ、経過観察などについて、標準化されたスケジュールを詳しくまとめたもの)は各地で工夫して作られており、診療所医師と専門病院医師の互いの役割が明記された「2人主治医制」の計画表が一般的になっている(写真1)。診察のポイントはチェック項目などでマニュアル化されており、必要時・緊急時の病院側のバックアップ体制も整備しているものが多い。

 3年前から福井県済生会病院(福井市)との病診連携に参加している福岡内科クリニック(福井県坂井市)院長の福岡賢一氏は、「従来は術後1〜2年もたつと医師も患者も再発に対する意識が薄れてしまうことがあった。2人の主治医がダブルチェックすることで、検査もれや見逃しを避けられる」と実感している。

専門医にすぐに相談できる体制作りが進む
 胃がんも大腸がんも、早期がんであれば術後は経過観察のみで済むが、進行がんの場合、術後に再発予防のため経口抗がん剤による化学療法を行うことが多い。そのため、進行がん患者のフォローを診療所が担当する場合は、経口抗がん剤の投与も診療所が担うことになる。

 元々循環器が専門で20 年前に開業した村上医院(横浜市神奈川区)院長の村上哲夫氏は、2年前から済生会横浜市東部病院との胃・大腸がん地域連携パスに参加している。

 現在、経過観察だけの早期がん患者を3人、術後にUFT(経口テフガール・ウラシル配合剤)を服用している大腸がん患者を1人担当している。どの患者も、村上氏ががんを疑って同病院に送り、治療後引き継いだケースだ。「糖尿病や高血圧で長年診ている患者さんに、ある日がんが見付かることは少なくない。以前はがんになると病院に任せきりで症状や経過が分からなくなったが、今は情報を共有できるので、自分の守備範囲で十分対応できる」と村上氏は話す。

表1 済生会横浜市東部病院による胃・大腸がん連携パスの種類と登録状況

2009年7月現在、約130施設の診療所が参加登録している。実際に患者を引き受けているのは上記施設数。まだ抗がん剤なしの患者を引き受けている施設が圧倒的に多い。
 同氏が安心してがん患者を引き受けられるようになった背景には、済生会横浜市東部病院によるバックアップ体制の整備がある。同病院では、消化器を専門とする医師以外でも参加可能な連携体制を目指して、定期的に消化器病の勉強会を開催するほか、各医師が自分の経験や関心に沿って連携スタイルを選べるよう、診療内容ごとに3段階のレベルの連携パスを用意した(表1)。

 レベルAを選んだ診療所医師は、術後経過観察のみを行い、レベルBを選んだ医師は術後に副作用の少ないUFTを服用する患者まで対応、レベルCでは、もう少し注意を要する抗がん剤治療を行うメニューも行う、という具合だ。レベルCで用いる抗がん剤は、胃がんならTS-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルの3剤を配合した経口薬)、大腸がんならUFTとUFTの抗腫瘍効果を増強させるホリナートとなっている。


「診療所の医師には、基本的には患者の訴えに対応してもらい、何か変化や異常があればいつでも相談してもらうようにしている」と話す、済生会横浜市東部病院の長島敦氏。
 病院に送るべき血液データや腫瘍マーカーの基準値も明確にして、「診療所の医師が心配なときは、いつでも患者さんを引き受けるようにしている」と同病院外科部長の長島敦氏は話す。

 こうした努力が実り、今では横浜市の鶴見区、神奈川区、港北区医師会と提携して、約130の診療所が同病院との連携に参加。術後状態の安定した患者150人が、55施設の診療所に紹介されている。これまでに臨床上問題になったケースはないという。

 後編では、胃がん・大腸がんの術後経過観察を診療所で受ける場合、具体的にどんな点に注意して診てもらえるのかを紹介する。

(末田 聡美=日経メディカル)

※この記事は「日経メディカル」2009年12月号特集「がん患者 引き受けます!」の内容を一部改変したものです。

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