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がんの経過観察はクリニックで受ける時代に

2010/2/9

がんの経過観察はクリニックで受ける時代に(4)

前立腺がんのフォロー:再発発見にマーカーPSAが強い味方

前立腺がん治療後に診療所で経過観察を受ける際のポイント
●前立腺全摘後の再発はPSA値の変動のみでチェック可能
●全摘術の主な後遺症は尿失禁と勃起障害、新たな治療法もあるため医師に相談を
●放射線治療後には直腸炎などの晩期障害にも注意
 前立腺がんで前立腺の全摘術を受けた患者では、再発リスクは限りなくゼロに近く、薬剤投与も不要であることは大きな安心だろう。また、PSA値が再発の鋭敏なマーカーであるため、定期的にPSA値を測ってさえいれば、再発の見逃しはまず生じない(PSA値0.2ng/mL以上が再発疑い)。


千葉県がんセンターと連携し、前立腺全摘術後患者の経過観察を行っているポートスクエア柏戸クリニックの瀧澤弘隆氏。
 このため、前立腺全摘後の患者にとって、経過観察のために何時間もがん専門病院で待たされる必要はない。通いやすい診療所で、定期的に血液検査を受けてさえいれば、再発を見逃されることはないのだ。また、PSA値の測定は、一般的に専門の検査会社が行っているため、診療所でも病院でも同様に、信頼性の高い結果を得ることができる。

 現在、泌尿器科を専門としない診療所医師(開業医)が、がん専門病院と連携して、前立腺全摘術後患者の経過観察に積極的に取り組みはじめている。例えば、千葉県がんセンターとの病診連携に加わっている、ポートスクエア柏戸クリニック(千葉市中央区)所長の瀧澤弘隆氏も、専門は呼吸器内科だが、前立腺全摘術後の患者の経過観察も行っている。瀧澤氏の診療所では、千葉県がんセンターから紹介された患者が複数、3カ月に一度、問診とPSA値の測定を受けている。


千葉県がんセンター地域医療連携室の浜野公明氏(左)と丹内智美氏。
 瀧澤氏と連携している千葉県がんセンターは、2007年11月に泌尿器関連の地域連携パス(パスとはクリニカルパスの略で、それぞれの病気の検査や治療、術後のリハビリ、経過観察などについて、標準化されたスケジュールを詳しくまとめたもの)を使い始めた。連携開始当初は泌尿器専門医のみと連携していたが、「現在、約30ある連携先診療所の約4分の1が一般の内科医」(同センター地域医療連携室室長で泌尿器科医の浜野公明氏)だという。

 同センター地域医療連携室の専任スタッフである丹内智美氏は、「患者の要望に合わせて連携先を選んでいる。患者の通いやすい地域に連携先がない場合には、新たな連携先を探すことも多い」という。千葉県がんセンターの病診連携は、患者本位を貫いている。


写真 千葉県がんセンター泌尿器科外来前に並ぶ連携先診療所のパンフレット。パンフレットには、各施設の住所や診療時間などの基本情報に加え、自院の特徴をアピールする欄もある。
 また、患者に対しては、手術前から病診連携の現状を説明し理解を得る努力をしている。同センターの泌尿器科と乳腺科の外来には、連携先診療所のパンフレットが並べられ、その中から、患者自身が診療所を選ぶこともできる(写真)。

術後のQOL低下は遠慮せず医師に相談を
 再発リスクがほとんどない前立腺全摘術後だが、術後の後遺症である尿失禁と勃起障害に悩む患者は決して少なくない。また、仕方がないものとしてあきらめている患者も多い。

 しかし、尿失禁も勃起障害も治療技術は進歩しており、医師に相談することで治療できる可能性も開けるものだ。一般に、尿失禁は術後1年程度で自然に治癒するといわれている。そのため、1年程度経過しても失禁が治まらないようであれば、医師に相談して何らかの治療を試みてほしい。先進医療であるため高額の自己負担が必要ではあるが、重度の尿失禁には人工尿道括約筋の埋め込み術が効果であることも証明されている。また、薬が効果を示す場合もある。

 一方、勃起障害は、勃起に関連する神経が手術の際に傷付けられてるために生じる。昨今、この神経を温存する手術も一部医療機関で行われるようになっている。また、神経が傷付いている場合でも、陰茎海綿体注射もしくは、陰圧式勃起補助具などを用いることで対処も可能だ(関連記事参照)。

 加えて、手術の後遺症として、まれではあるが尿道狭窄が生じることもある。血尿や排尿痛などが生じた場合は、早めに医師に相談してほしい。

 失禁や勃起、排尿痛などは、患者で混雑するがん専門病院ではなかなか相談しにくいもの。気心の知れたかかりつけ医に経過観察を依頼することで、相談しやすくなるのではないだろうか。

放射線治療後に注意したい晩期障害
がん・感染症センター東京都立駒込病院放射線診療科治療部・部長
唐澤 克之氏

 前立腺がんの治療法は選択肢が広がり、放射線治療を選択する患者数は手術と同じかそれ以上に増加している。外照射治療を受けた場合に最も注意してほしいのが直腸炎(直腸からの出血)だ。放射線治療終了後半年から3年ほどたったころに起こりやすく、同治療を受けた患者の1〜3割に起こるといわれている。

 前立腺は直腸とごく近い位置にあるため、直腸を完全に避けて、前立腺のみに放射線を照射することが難しい。現在、放射線治療技術の精度が高まり、晩期障害は徐々に減ってきているが、ゼロにはできない。

 直腸炎を予防するために患者さんにできることとしては、便秘を防ぐことが最も重要となる。便秘は、直腸を傷付けて出血の原因となるためだ。放射線治療中は、放射線の刺激で便は出やすいが、終了すると刺激が減って便秘になりがち。放射線治療後の患者さんは、日ごろから便通について確認し、便秘気味なら医師に相談してほしい。また、下血を放置して悪化させると貧血になるため、出血が起きたらすぐに医療機関を受診してほしい。過去に脳梗塞や心筋梗塞などにかかったことがあり、ワルファリンなどの抗凝固薬を服用している患者さんの場合は、より注意が必要だ。(談)

(小板橋 律子、末田 聡美=日経メディカル)

※この記事は「日経メディカル」2009年12月号特集「癌患者 引き受けます!」の内容を一部改変したものです。

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