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日本医療政策機構 がん政策情報センター寄稿

2011/9/20

日本医療政策機構 がん政策情報センター寄稿 Vol.13

患者の声が医薬品開発や予算を動かす米国(前編)

臨床試験の設計から承認まで患者が関与し大きく貢献

岩井万喜、埴岡健一=日本医療政策機構 がん政策情報センター

 「期待されているのは、するべき質問をすること」と、同じく部長のアンナ・レヴィ氏は説明する。たとえば、「この臨床試験の結果、はっきりした判定が出た場合、患者にどのようなメリットがあるのか」といった素朴で真っすぐな質問が、ときに研究者の知的探求心本位の計画にメスを入れることがある。そうした患者委員の質問が、治療成績向上にばかり注目しがちな研究者の発想を転換させるきっかけになったり、研究者同士では甘くなりがちな評価の軌道修正につながったりしたこともあったという。

 “素朴な質問”と聞くと、誰にでも質問できそうな印象を受けるが、患者委員には、専門用語を使って研究者と話をするために必要な一定の知識とスキルが求められる。デボラ・ジャフ氏は、患者委員になるための要件として、臨床試験の流れを理解していること、患者の代表としての意見を述べられること、個人や所属組織の利害ではなく国全体の患者への利益という視点から物事を考えられること――などを列挙した。患者委員になった後も、定期的な研修や、常に新しい情報を学ぶ機会が与えられる。

FDAは患者代表を政府の臨時雇用職員として採用
 米国での医薬品の承認は、食品医薬品局(Food and Drug Administration:以下FDA)が行う。その権限は米国内のみだが、FDAによる承認は世界の医薬品市場を左右するといわれるほど、影響力を持っている機関だ。FDAでの患者参画の事例を見てみよう。

 FDAでは食品を含む11の分野で諮問委員会を設けている。その中の1つが、医薬品の承認に関する方針確認や意思決定をするための医薬品諮問委員会であり、さらにその下に16の委員会が設けられている。この医薬品に関わる16すべての委員会に患者が委員として参加している。患者代表委員は、公募され、政府の臨時雇用職員として採用される。現在、全疾病分野で144人、がん分野では15種のがんに関して25人の患者代表委員がその任に就いている。

FDAではがん領域の責任者、リチャード・パズダー氏ら、総勢13人が迎えてくれた

 患者連携プログラム(FDAが患者との連携を推進するためのプログラム)の部長リチャード・ケヴィン氏は、「患者代表委員に求められる役割は患者視点で意見や質問をすること」と言う。前述のNCIでのケースと同様だ。

 「外来で抗がん剤投与をこんなに頻繁に受けることは、多くの患者にとって通院することが難しく現実的ではない。臨床試験の設計として、いかがなものか」といった患者代表委員の指摘が、手順書の再考につながったこともあるそうだ。

 先に見た医薬品諮問委員会の1つに、「がん医薬品諮問委員会(Oncology Drugs Advisory Committee、以下ODAC)」がある。安全性と有効性の観点から、がん医薬品の承認の判断をFDAに答申することを役割とする。承認可否の決定は、委員による投票で行われる。ODACは現在、13人の投票権を持つ委員と、投票権を持たない数人の委員で構成されているが、患者代表委員は投票権を持つ委員の1人として重責を担っている。「薬は効果とリスクを天秤にかけて承認される。この議論に患者さんは重要な視点を提供できる」と、患者連携プログラム担当職員のアンドレア・フリア・ヘルムス氏は力説した。

 医薬品の承認に関して意見を述べる患者代表委員の責任は大きい。ゆえに患者代表委員の採用要件は、前述のNCI以上に厳しい。FDAの患者代表委員になるためには、諮問委員会で病気や症状に関して自分の経験や意見を述べることができる、多くの患者との対話を通じて問題点を整理し指摘することができる、研究者ほどの専門知識は必要ないものの疾患に関する基礎知識と科学や統計の基礎知識が備わっている――などが求められるという。また、透明性の観点から、保有している株式、コンサルティング契約の有無、受けている助成金の内容、製薬会社との関係などについての情報開示も義務付けられている。

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