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日本医療政策機構 がん政策情報センター寄稿

2010/3/31

《日本医療政策機構がん政策情報センター寄稿 Vol.2》

医療の対価、患者にとっての医療費負担

 がん医療の質を上げ、問題点を解決し、がん患者さんのニーズに応えようと診療報酬の値上げや新設が行われるが、一方で、やはり患者さんにとっては、医療費の負担が増してしまう形になるのが頭の痛い問題だ。しかし、がん医療体制を向上させ、持続可能なものにするためには、この負担は必要な措置であるという考え方もできる。

(日本医療政策機構 がん政策情報センター 沢口絵美子、埴岡健一)



沢口絵美子(さわぐち えみこ)
NPO法人 日本医療政策機構 市民医療協議会

厚生政策情報センターWIC REPORT編集長などを経て、2009年より日本医療政策機構に参画。患者アドボケートの育成支援を担当。


埴岡健一(はにおか けんいち)
NPO法人 日本医療政策機構 理事

日経ビジネス記者、ニューヨーク支局長、副編集長などを経て、1999年骨髄移植推進財団事務局長。08年より日本医療政策機構市民医療協議会共同議長、がん政策情報センター長。厚労省がん対策推進協議会委員ほか。
 診療報酬改定は、医療政策的に見ると中長期的な展望があり、例えば次のような3つのフェーズに分けて考えることができる。第1に新しい項目を作り、その必要性を探る。いってみれば、試行的な導入期だ。第2に、その必要性が十分あると判断された段階で、普及目的の増点を図る。意図的に高い点数を付けることで、医療機関の参入を誘導することもある。第3に、十分な体制が整い、高い点数を付けなくても機能すると判断されると、今度は点数を徐々に下げていき、採算に見合ったものにする。

 がん医療の中には、この第2フェーズを迎えつつある領域が多くあり、均てん化(どこでも高い質の医療が受けられること)に向けた必要な負担を、患者さんや国民に求めざるを得ない状況にあるともいえる。

 前回診察してもらったときに病院から渡された領収書はお手元にあるだろうか。いったい何に対してどれだけの費用を請求されているか、確認できるはずだ。「診療報酬」というと複雑で難しいと敬遠してしまいがちだが、長く病院にかからなければならない人ほど、生活に大きく影響を与える。 1点10円で計算されるという基本的なことはもちろん、自分の診療内容に関わる個別の点数を詳しく理解した上で、自分が受けた医療への対価と認識して、チェックしてみたらどうだろう。

患者の声が、これからの医療政策を動かす
 今回の改定で、改定率は10年ぶりにわずかとはいえプラスに転じた。ここ数年、医療財源は自民党政権下で抑制路線をたどってきたが、民主党への政権交代を経て、医療への一定規模の資源投入が行われることになる。

 昨秋の政権交代によって、診療報酬改定を話し合う中央社会保険医療協議会(中医協)での審議も1カ月近くストップした。民主党政権が日本医師会の影響力を弱める目的で、中医協の診療側(医療提供関係者)委員の変更を決めたことは、大きく報道された。改定の審議の最中に委員が複数変更された例は、長い中医協の歴史の中でも珍しいことだろう。厚生労働省の足立信也政務官はこの改定を振り返り、「現場の声が届くようになった」「委員が自ら作成した資料が提示された」と述べている。

 一方で、がん対策推進協議会からも新たな動きがあった。診療報酬については、その専門性の高さから、中医協以外の審議会・協議会などが詳細な意見を述べるケースは極めてまれである。しかし、がん対策推進協議会の有志14人(うち患者関係委員5人)で構成された「提案書取りまとめワーキンググループ」(以下、がんWG)のメンバーは「平成22年度診療報酬改定におけるがん領域に関する提案について」をまとめ、2009年12月の協議会の承認を経て、厚生労働大臣へ提出した。この資料が中医協の場で参考資料として提示されて議論の対象となったことは、これまでにないことだった。

 このように、国の会議でも、少しずつプロセスが変わり、患者などの声を医療政策に反映させる事例が認められつつある。その意味で、がん対策推進協議会には今後も他の審議会・協議会の先駆的役割を果たすことが期待される。

 がんWGのメンバー、患者関係委員として今回の提案に携わった郷内淳子さん(カトレアの森 会長)は、今回の改定をこう振り返る。「中医協でも『患者の視点』という発言が目立ったと聞いている。こういう発言を引き出すためにも、患者の方から声を発していかなければならないと感じた。中医協や国の審議会というと、普通の患者としては自分には関係ないと思いがちだが、実は患者の治療にも大きく影響することを決めている重要な機関。医療提供者側からも、現場のことを知りたいので、患者の声を聞かせてほしいという要望はよくある。今回はまだ第一歩にすぎないが、患者や患者団体はそのことを強く認識し、責任のある発言をしていかなければならないとも感じている」

 患者の声を反映させる活動は始まったばかりだが、着実に前に進んでいる。診療報酬についても、難しいからと敬遠せずに、自分のことととらえ、中長期的な視野で注目していくことが大切だ。2年後は医療保険と介護保険が同時に改定されることになっており、今年以上に大きな改革も予想される。そのときに向け、患者の声を反映するプロセスを確立していく必要があるだろう。患者が望むがん医療に変えていくために、診療報酬改定は大きな意味を持っている。

※本稿における見解は、組織としてのものではなく、あくまで筆者個人の考えです。

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