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レポート

2018/6/4

第26回日本乳癌学会学術総会・患者セミナーより(第1回)

非浸潤性乳管癌(DCIS)や遺伝性乳癌は乳房全切除か部分切除か

新しい診療ガイドラインにおける乳癌手術のトピックス

八倉巻尚子=医学ライター

 積極的な技術開発により乳癌治療は常に変化している。診断精度の向上で癌が小さいうちに発見されるようなり、乳房を切除した場合も再建術によって整容性を保つこともできるようになってきた。放射線照射による晩期の副作用も以前に比べて軽減している。多くの新薬が登場して一人一人に合った治療法を選べるようにもなっている。次々に加わる新しい情報をアップデートすることは医療者にとっても患者にとっても大変だが大切なことだ。

 5月に京都で開催された第26回日本乳癌学会学術総会では、乳癌の診断や治療について最新の知識を共有することを目的に、患者セミナー「皆で考えよう、未来の乳がん医療」が開催された。その中から、手術療法、放射線療法、薬物療法について連載で紹介する。第1回は手術療法


 手術療法については、三菱京都病院乳腺外科の竹内恵氏が講演した。第26回日本乳癌学会学術総会に合わせて発行された「乳癌診療ガイドライン」2018年版に沿って、非浸潤性乳管癌(DCIS)、腋窩手術、ステージIV乳癌の手術療法、遺伝性乳癌の術式選択という4つのトピックスを取り上げ、乳癌手術のこれからの行方について解説した。

乳管にとどまっている癌は部分切除でよいか
 乳癌は浸潤性乳癌と非浸潤性乳癌に分けられる。非浸潤性乳癌のうち、乳管内で癌細胞が増殖して、乳管の中にとどまっている状態を非浸潤性乳管癌(DCIS)という。

 「乳管内に収まっているので、局所治療で治すことができるというのが根本的な考え方」と竹内氏は説明する。DCISは悪性度によって低グレード、中間グレード、高グレードの3つに分けられ、そのグレードによって治療を決めていく。DCISの治療選択肢としては、乳房全切除術、乳房を部分的に切除して癌を取り除く乳房温存療法、あるいは乳房温存療法に加え、再発を防ぐため術後に放射線療法を行う方法がある。

 乳癌診療ガイドライン(2018年版)の外科療法の章には「非浸潤性乳管癌に対して乳房温存療法は勧められるか?」(BQ1)という質問項目がある。ガイドラインにはこういったQ&A方式で、臨床的な疑問に対してガイドライン作成委員会が大量の文献を検討して審議した結果が記載されている。この質問項目に対しては、確定的な答えとして、「浸潤癌における乳房温存療法の適応に準じて行う」と書かれている。つまり「組織学的に癌が取りきれて、乳房の形もきれいに残せるだろうという範囲で切除がおさまれば、部分切除もいいだろう」(竹内氏)ということだ。

 なお再発リスク因子によって部分切除か全切除かを選択することもある。VNPI(Van Nuys prognostic index)という予後指数は、4つの因子(腫瘍径、細胞核異型度、切除断端と腫瘍の最短距離、年齢)をそれぞれ1点から3点で点数化して、その合計から手術の術式を選択する。「これだけで決めるわけではないが、こういったツールも基本的に使って考える」という。

 では、放射線療法の追加はどのように決めるのか。この問題について、放射線療法を省略できる患者を同定する臨床試験(RTOG9804)が行われている。対象は、腫瘍径が2.5cm以下、低グレードから中間グレードで、断端距離が「きっちりとれている」(3mm以上)患者。試験の結果、術後7年の局所再発率が放射線療法を行った群は0.9%、放射線療法を行わず経過観察とした群は6.7%で、無増悪生存率と全生存率に有意差は認められなかった。このため、「この対象の患者さんであれば、放射線療法を省略することも可能と考えられた」。

 もう1つ、ガイドラインで注目すべきところとして、「非浸潤性乳管癌に対する非切除は勧められるか?」(CQ1)という質問項目が紹介された。これに対しては、科学的根拠に加えて、益と害のバランスや患者の価値観や好み、コストを考慮して、ガイドライン委員会で推奨が審議された結果、「非切除で経過をみることは弱く勧められない」とした。これは4段階で評価される推奨の強さの上から3番目の推奨で、エビデンスの強さは「とても弱い」と評価され、最終的に切除が勧められると結論づけられている。
 
 この質問項目がガイドラインに取り上げられた背景には、国内の大規模なデータ解析で、低グレードDCISでは非切除群と切除群で全生存率に差がなかったことがある(Sagara Y, et al. Front Oncol. 2017; 7:192)。一方で、手術をしないデメリットがある。DCISを非切除で経過観察した場合、4-53%で浸潤癌を再発したという複数の後ろ向き研究の報告がある。また術前検査でDCISと診断されても、手術後の検査では浸潤癌であった症例が26%(18.6-37.2%)であることが、52試験7350例のデータから出されており、組織診断での過小評価の可能性が示唆された。「ただし古いデータも入っているので、いまの診断技術では26%もあるかなとは思う」と竹内氏は話した。

 このため「DCISに対する非切除では低グレードDCISのような限られたグループのみにメリットがある可能性があるものの、その診断は不確実であり、後ろ向きの解析のみでは生存への安全性を保障するには不十分である」とした。

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