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レポート

2018/5/9

第118回日本外科学会定期学術集会

粒子線治療の保険収載拡大に向けて取り組み進む

希少がんへの適用にも期待

中西美荷=医学ライター

 放射線療法は、外科療法、薬物療法とともに、がん治療の一翼を担う重要な治療法である。最近、その線源として水素イオン(陽子線)や炭素イオン(重粒子線)を用いる、粒子線治療が取り入れられるようになった。

 4月5日から7日まで東京国際フォーラムで開催された第118回日本外科学会定期学術集会の第93回卒後教育セミナーでは、筑波大学附属病院・陽子線治療センター部長として放射線治療に携わり、日本放射線腫瘍学会(JASTRO)の粒子線治療委員会では委員長を務める櫻井英幸氏が、「小児および成人固形がんにおける陽子線および重粒子線治療」と題して、日本における粒子線治療の現状と今後について講演した。

 粒子線は、がんを通り抜ける性質を持つX線とは異なり、正常組織はすり抜けるが、がん病巣では止まる性質を持つ。周囲の正常組織への影響が少なく、線量をがん組織に集めることができるため、効果の増強と安全性の向上が期待される。

普及するも遅れた日本での保険収載
 米国放射線腫瘍学会(ASTRO)は、2013年に眼腫瘍、頭蓋底腫瘍、脊椎腫瘍、肝細胞がん、悪性・良性を問わず小児腫瘍、放射線の影響が懸念される遺伝的疾患を、「医学的に陽子線治療の適用が必須な疾患」と指定している。2017年には悪性および良性脳腫瘍、切除不能進行頭頸部がん、副鼻腔がん、転移のない後腹膜肉腫も追加された。またドイツでは非常に広い疾患が保険適応となっているほか、オランダは疾患別ではなく、個々の症例に医学物理的検討を実施し、一定以上の患者利益が予想される場合が適応となる。韓国でも乳がんと前立腺がんを除く固形がん(脳腫瘍を含む)が保険収載されている。

 2017年における世界の粒子線治療の稼働施設数は、陽子線が57、重粒子線が11、建設中のものが陽子線41、重粒子線5。そのうち日本は2018年3月現在で19(陽子線14、重粒子線6)という施設数を誇り、特に重粒子線治療は患者数も多く、良好な治療成績を上げている。それにもかかわらず、保険収載の面では遅れをとっている。先進医療制度の導入まで治療は研究の一環として行われ、ようやく2016年4月に「20歳未満の小児腫瘍に対する陽子線治療」と、「切除非適応の骨軟部腫瘍に対する重粒子線治療」が保険診療となった。

 こうした中、日本放射線腫瘍学会(JASTRO)は粒子線治療について、
1)各疾患のシステマティックレビューを実施、公表する
2)各疾患の多施設後ろ向き研究を実施、公表する
3)重点的な評価対象の前向き臨床試験(先進医療B)を実施する
4)全国共通の治療法を用いた前向き全例登録(先進医療A)を実施する
ことにより、各施設の質を担保しつつ治療効果を評価できる体制を構築し、さまざまな疾患の保険収載を目指している。2016年4月以降、約1年半の間に、粒子線治療に関する日本から国際誌への論文掲載は56編、そのうち多施設共同研究19編、国際誌への投稿中が15編に上るなど、精力的な取り組みが進められている。

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