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レポート

2018/4/18

新規治療薬の開発で治療成績の改善が期待される慢性リンパ性白血病

国立がん研究センター・希少がんセミナーより

福島安紀=医療ライター

慢性リンパ性白血病(CLL)は緩徐に進行する慢性白血病の一種で、血液細胞の中の成熟したB細胞ががん化して異常な白血病細胞が増える病気だ。CLLをテーマにした「第17回希少がんを知り学び集うセミナー・希少がんMeet the Expert:慢性リンパ性白血病と類縁疾患」が3月2日、国立がん研究センター希少がんセンターで開催された。このセミナーは、同センターと認定NPO法人キャンサーネットジャパン、がん情報サイト「オンコロ」の共催。同センター中央病院血液腫瘍科の棟方理(わたる)氏が、CLLの標準治療と開発中の治療法について講演した。


進行がゆっくりで経過観察になる人も

(写真撮影/木口マリ、以下全て)

 慢性リンパ性白血病(CLL)は、日本では患者数の少ない希少がんだが、米国では白血病の中で最も患者数が多い。その性質から、一般的には悪性リンパ腫の一種としても分類される。小リンパ球性リンパ腫(SLL)は、臨床表現型の異なるCLLと同じ病気と考えられ、CLL/SLLとして治療が行われる。 

 発症しても病気の進行がゆっくりで、無症状の人が多いのが特徴だ。「健康診断などの際に白血球数やリンパ球が異常に増加していることが分かり、CLLが見つかる人も多いです。進行すると、倦怠感、食欲不振、病的な寝汗、微熱、体重減少などの症状が出ます。感染症を繰り返したり、リンパ節が腫れたり、肝臓や脾臓の腫れ、貧血によって見つかる場合もあります」と棟方氏は話す。ただし患者の約1割は、ゆっくり進行するCLLが、月単位で増大するアグレッシブリンパ腫に移行してしまうことが知られている。CLLがアグレッシブリンパ腫に移行することをリヒター症候群と呼び、多くはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫になる。

 CLLには病期分類があり、米国で使われている改訂Rai分類では低、中間、高リスクと、欧州で使われるBinet分類ではA〜Cと、いずれも3段階に分けられる。治療の適応となるのは、改訂Rai分類で高リスク、Binet分類でC、または、進行性の骨髄機能低下による貧血や血小板減少の進行・悪化、直径10cm以上のリンパ節のかたまりなどの活動性所見を認める場合だ。活動性病態なし、かつ、改訂Rai分類低・中間リスク、Binet分類AかBなら、診断後すぐに治療を始めずに経過観察となる。

多剤併用療法可能の人ならFCR療法かBR療法が第一選択

国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科の棟方理(わたる)氏

 「どういう治療するか決めるうえで重要なのが、腫瘍細胞における染色体検査の結果と、多剤併用療法が可能な全身状態かどうかです」と棟方氏。17番染色体の短腕欠失(17p欠失)、TP53遺伝子変異があるCLLの患者は、既存の抗がん剤治療が効きにくいことが分かっている。染色体検査は保険診療で実施できるが、日本ではTP53遺伝子変異の有無を調べる検査には保険が認められていない。

 また、多剤併用療法が可能かどうかによって、Fit(通常量多剤併用抗がん剤治療の実施が可能な全身状態)かUnfit(年齢、合併症の有無などにより通常量多剤併用抗がん剤治療の実施が困難)、あるいは、Frail(抗がん剤治療の実施が困難)と判断される。

 日本のCLLに対する一次治療の方針は、活動性病態あり、または、改訂Rai分類高リスク、Binet分類CでFitならFCR療法かBR療法が第一選択だ。FCR療法はフルダラビン、シクロホスファミド、リスキシマブの併用療法、BR療法はベンダムスチンとリツキシマブの併用療法。BR療法はFCR療法より副作用が軽いため、65歳以上の患者の選択肢になり得る。17p欠失がある人に対しては、可能なら寛解期に同種造血幹細胞移植を検討する。

 ただし、欧州や米国のガイドラインでは、FitかUnfitで17p欠失のある人には、BTK阻害薬のイブルチニブ、PI3K阻害薬のイデラリシブとリツキシマブの併用療法、またはBCL2阻害剤のベネトクラックス、Unfitで17p欠失のない人には、クロラムブシル+抗CD20抗体(オビヌツズマブ、リツキシマブ、オファツムマブのどれか)、あるいはイブルチニブが第一選択となっている。「しかし、日本ではイブルチニブやオファツムマブは初回治療では使えませんし、イデラリシブとベネトクラックス、クロラムブシル、オビヌツズマブは未承認薬、リツキシマブは悪性リンパ腫が適応症でCLLには厳密には適応外です(SLLには適応が認められている)。日本では海外に比べて、初回治療に使える薬が限られるのが実情です」と棟方氏は指摘する。

 BTK(ブルトンチロシンキナーゼ)は、CLL細胞のリンパ節への遊走、増殖に関与する重要な分子であることが明らかにされ、イブルチニブなどBTKの働きを抑えるBTK阻害薬の開発が進んできた。「イブルチニブは比較的副作用が少なく17p欠失を有する人にもUnfitの人にも使える薬ですが、心房細動や長く服用することによって起こる出血関連有害事象には注意する必要があります。また、食欲不振や爪が割れるような、重篤ではないが患者さんの生活に質に影響を与える副作用が出る場合もあります」(棟方氏)。

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