このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2018/3/19

腹腔鏡下手術や胸腔鏡下手術と同額で可能に

ロボット手術が複数のがんで保険適用に

森下紀代美=医学ライター

ダヴィンチ手術の模様(写真提供:藤田保健衛生大学病院)

 ロボット支援下内視鏡手術(通称:ロボット手術)とは、内視鏡下手術用ロボット「ダヴィンチ」を用いて行う腹腔鏡下手術や胸腔鏡下手術のこと。ロボット手術には、これまで行われてきた手術の安全性をより高めることが期待されている。すでに前立腺がんと腎がんのロボット手術には健康保険が適用(保険適用)されているが、その他のがんはこれまで対象となっていなかった。

 しかし、2018年4月から状況は大きく変わる。胃がんや食道がんの手術を含む、12術式のロボット手術が新たに保険適用となるためだ。2009年1月から胃がんと食道がんでロボット手術を開始し、胃がん手術では保険適用のための先進医療を主導してきた藤田保健衛生大学医学部総合消化器外科学講座主任教授の宇山一朗氏に、ロボット手術が導入された背景と現状、病院を選ぶポイントなどを聞いた。2回にわたって紹介する1回目は、今回の保険適用とロボット手術の特徴について。

保険が適用されて変わること
 2018年4月から健康保険が適用されるロボット手術は、胃がん、食道がん、直腸がん、肺がん、縦隔悪性腫瘍、膀胱がん、子宮体がんを対象とする。がんの種類や部位により、全摘術や部分切除など条件は異なる。この他、縦隔良性腫瘍や心臓弁膜症、子宮筋腫に対するロボット手術にも保険が適用される。

 これまで、これらのがんに対する腹腔鏡下手術と胸腔鏡下手術には保険が適用され、がんの種類と病期などにより勧められる度合は異なるものの、低侵襲手術として普及してきた。今回の保険適用は、これらの手術とロボット手術の安全性が同等であると判断されたことによる。さらに胃がんでは、先進医療の臨床試験である程度の有用性も示されている。

 ロボット手術が自費診療の場合、患者は高額な費用を全額負担しなければならない。胃がんでは2014年から先進医療が認められたため患者の負担は一部軽減したものの、先進医療にかかる費用約113万円のうち、約63万円を負担する必要があり、それとは別に保険が適用される通常の医療の部分の費用もかかった。

 今回の保険適用により、ロボット手術にかかる費用は、同じがんに対して行われる腹腔鏡下手術や胸腔鏡下手術と同額となる。高額療養費制度も、これまで保険が適用されていないロボット手術では利用できなかったが、今後は利用できるようになる。

腹腔鏡下手術の問題点を解決するロボット手術
 ロボットといっても、ダヴィンチは人間に代わって自動で手術をしてくれる機械ではない。厚生労働省が「内視鏡手術用支援機器」としているように、あくまでも手術をするのは外科医であり、それを補助する機械である。宇山氏は、胃がんでは約2000例の腹腔鏡下手術と約350例のロボット手術を行ってきた経験から、「ロボット手術は腹腔鏡下手術の問題点を解決し、手術の安全性を高めるもの」と話す。

 腹腔鏡下手術は、腹腔内に小型のカメラを入れて行う内視鏡手術の一種で、開腹手術にはないさまざまなメリットがある。傷口が小さく、術後の痛みが少ないこと、術後早期に歩行可能となるため、血栓ができにくく、肺塞栓症などの合併症が起こるリスクが低下すること、内臓が外気に触れにくいため、感染症や癒着による腸閉塞が起こるリスクが低下することなどだ。

 ただし、腹腔鏡下手術にはデメリットもある。使用する手術器具に柔軟性がなく、直線的な動きしかできないことで、細かい作業はしにくい。また内視鏡カメラの画像は2次元画像が多いため、平面的で立体感がない。そのため腹腔鏡下手術には高い技術力が求められる。

 腹腔鏡下手術のこのような問題点を改善したのが、ダヴィンチだ。ダヴィンチを用いて行うロボット手術は、患者の腹部に小さな孔を開け、そこから内視鏡カメラや鉗子などの手術器具を入れるところまでは腹腔鏡下手術と同じだが、手術を行う医師(術者)は、患者がいる手術台の近くではなく、数メートル離れた場所で手術を行う。

 ダヴィンチは3つの装置で構成されている(写真)。術者が実際に操作を行う「サージャンコンソール」(写真左奥)、患者の腹腔内に入れる鉗子や内視鏡カメラなどが装着された「ペイシェントカート」(写真右)、光学器が搭載されている「ビジョンカート」(写真中央奥)である。手術中、術者はサージャンコンソールで画像を見ながら操作し、助手が手術台側でモニターを見ながらサポートする。術者の手の動きは、サージャンコンソールからペイシェントカートのアームと呼ばれる部分を通して伝わり、切除や血管の結紮、縫合などが行われる。

 ダヴィンチの大きな特徴の1つはアームの先端についている関節機能で、腹腔内のような狭い空間でも人間の手より器用で繊細な動きができる。また、人間の手は数ミリ単位で動かそうとすると手ぶれが起こるが、ダヴィンチにはこれを防止する機能もあり、細かい作業を安全に行うことができる。さらに、人間の操作を縮小できる機能もある。例えば、5分の1に設定した場合、術者が1センチ動かすとアームの先端は2ミリだけ動くといった具合だ。

 もう1つの大きな特徴は、カメラの性能が腹腔鏡下手術で使用されるカメラよりも優れていることである。高画質な3次元画像で、自然で立体的な画像を見ながら手術をすることが可能になった。また、腹腔鏡下手術のカメラは、手術をしている部分を拡大できるのは5倍程度までだが、ダヴィンチのカメラでは10倍まで拡大できる。

 ただし、ダヴィンチにも弱点はある。触覚がないことだ。そのため触覚を付ける試みも行われているが、宇山氏によると、視覚で十分補うことができ、触覚がないために手術で困ったことはこれまでないという。

 このような特徴から、ロボット手術ではより精度の高い安全な手術が可能になることが期待されている。公表されたデータによると、日本には2016年9月の時点で237台が導入されている(日本ロボット外科学会)。

 次回は、胃がん手術で保険適用を目指すため、先進医療として行われたロボット手術の臨床試験について紹介する。

この記事を友達に伝える印刷用ページ