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レポート

2018/3/12

前立腺癌の手術と放射線治療 第3回

高リスクの前立腺癌症例に対する小線源治療の現状は?

八倉巻尚子=医学ライター

 日本における前立腺癌患者は年々増加している。その一方で、前立腺癌に対する放射線治療の技術は近年、飛躍的に進歩し、治療効果が高く、より副作用や合併症のない照射方法の開発が行われている。また、手術もロボット支援下手術が行われるようになり、以前には難しいと思われた精度の高い手術も可能になりつつある。

 日本放射線腫瘍学会第30回学術大会(11月17-19日、大阪市)では、シンポジウム「最新エビデンスに基づく前立腺癌診療の現状と今後の展望」が開催され、前立腺癌治療の最新動向が報告された。このシンポジウムで紹介された、手術と放射線治療の最近の動向のレポートの第3回をお送りする。


東京医療センター放射線科の萬篤憲氏

 前立腺癌治療の組織内照射(小線源治療)には、低線量の放射線の線源(ヨウ素125)を用いた永久挿入密封小線源療法(LDR)と、高線量の放射線の線源(イリジウム192)を用いた高線量率組織内照射(HDR)があり、HDRは高リスク患者に行われることが多い。

 「日本も米国も、小線源治療は手術や高精度外照射に押されて減少傾向にある」と語るのは、東京医療センター放射線科の萬篤憲氏。しかし大規模な治療データ(ビックデータ)が集積され、臨床試験からも小線源治療の有用性が示されている。

 最近行われた臨床試験のうち、予後良好な中間リスク患者を対象とした第III相試験(RTOG0232)では、外照射+小線源治療の併用群と小線源治療単独群が比較された。その結果、小線源治療単独でも十分な効果が確認され、併用群に比べて晩期有害事象も少なかった(Prestidge B, et al. ASTRO 2016)。一方、1万人のビックデータの解析では中間リスク患者に対し、小線源治療に外照射を併用すると、生存率が僅かながら有意に改善することが示されている(Amini A, BT 2016)。

 また、中高リスク患者に対し、LDR+外照射+ホルモン療法と高線量の外照射+ホルモン療法を比較した試験(ASCENDE-RT)では、治療5年以降に小線源療法併用群で明らかに再発が減少した。重度(グレード3)の尿路毒性が小線源療法併用群に多かったが、管理は可能であった(Morris J, RJ 2016)。2万5千人のビックデータでも、中高リスク患者に対し、小線源治療と外照射の併用は外照射単独より生存率が有意に良好だが、実施数は低下傾向であることが示された(Johnson S, EU 2017)。60歳以下の中高リスク患者データでも、前立癌死、全死亡は小線源治療併用で有意に減少した(Ashamalla H, et al. BT 2017)。

 11万人3千人のビックデータでは、中間リスク患者でも高リスク患者でも小線源治療併用は外照射単独より生存率が有意に良好だった(Glaser S, et al BT 2017)。高リスク患者(グリーソンスコア8)4496人では、小線源治療単独あるいは小線源治療と外照射の併用は外照射単独より生存が有意に良好だった(Jackson M, BT2017)。さらに手術との比較では、高リスク患者(グリーソンスコア9-10)患者7699人で、外照射+小線源治療併用は手術と比較して前立腺癌死に差を認められなかった(Wang C RJ2017)。

 こうした結果を受けて米国臨床腫瘍学会(ASCO)のガイドラインが更新され、「すべてのリスクの患者さんに、小線源治療を治療選択肢として他の治療法と同等に説明するよう明記されている」。

 日本のデータでも小線源治療の有用性を示すエビデンスは蓄積されつつある。全国的な前向きコホート研究(J-POPS)では、急性毒性は許容範囲で、晩期毒性は他の試験に比べて良好だった(Ohashi T, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2015)。また生存率も、非再発率も良好な結果であるという。さらに現在、中間リスク限局性前立腺癌を対象に、術前ホルモン療法+小線源治療に術後ホルモン療法を追加する第III相試験(SHIP)や、高リスク限局性前立腺癌対象に小線源治療と外照射に加え、短期もしくは長期ホルモン療法を併用する臨床試験(TRIP)が行われており、その結果が待たれている。

 ただ、日本の後ろ向きの研究では、小線源療法による尿路毒性は外照射に比べて多いことが示唆されている(Sutani S, et al. GJ 2015)。そのため「欧米にかかわらず、日本で尿路毒性の問題をどう解決するかが課題」であると萬氏は述べた。

高線量率組織内照射法(HDR)の最新エビデンス

北里大学医学部放射線科学「放射線腫瘍学」の石山博條氏

 続いて、高線量率組織内照射法(HDR)の最新エビデンスについて、北里大学医学部放射線科学「放射線腫瘍学」の石山博條氏が解説した。

 HDRのランダム化比較対照試験は3つある。そのうちの1つ、 中間・高リスクが対象の試験では、ホルモン療法を併用して、外照射にHDRを併用した群は外照射単独に比べて、PSA非再発率が有意に高かったが、全生存(OS)には差がなかった(Hoskin et al. 2012)。この試験では尿路毒性に差はなかったが、ほかの2つの試験では小線源治療の併用で有害事象は多くなっていた。

 これらの試験の結果を踏まえ、ASCOのガイドラインでは低リスク患者にはLDR単独か外照射単独、根治的手術(前立腺全摘除術)が選択肢となっている。低・中間リスク患者(グリーソンスコア7、PSA<10ng/mLもしくはグリーソンスコア6、PSA 10-20ng/mL)にはLDR単独でも可能であるとしている。外照射±ホルモン療法(ADT)を受ける中間リスク患者ではLDRやHDRの追加が勧められている。そして高リスク患者では外照射とホルモン療法(ADT)、LDRあるいはHDRを行うこととしている。

 日本でも16施設3424例を対象にHDR+外照射の後ろ向きの解析が行われた。3分の2の患者が高リスク・超高リスクで、およそ半分の患者は術前あるいは術後ホルモン療法を受けていた。解析の結果、HDRの治療成績は非常に良好で、超高リスクでも10年のPSA非再発が70%、OSが80%超であることが示された(Ishiyama H, et al. Brachytherapy. 2017)。

 また術前ホルモン療法のみと術前+術後ホルモン療法で分けると、術前+術後ホルモン療法を受けた患者で予後は良好であり、「HDRでも長期のホルモン療法の必要性を示唆している」とした。尿路毒性は治療時間が長くなるにつれ起こることも確認されたが、「10年前と違って最近は非常に少なく、グレード3の有害事象は出てこない」と石山氏は話した。

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