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レポート

2018/3/5

前立腺癌の手術と放射線治療 第2回

治療期間が短くなる前立腺癌の外照射法の開発が活発に

八倉巻尚子=医学ライター

浜松医科大学放射線腫瘍学講座の中村和正氏

 日本における前立腺癌患者は年々増加している。その一方で、前立腺癌に対する放射線治療の技術は近年、飛躍的に進歩し、治療効果が高く、より副作用や合併症のない照射方法の開発が行われている。また、手術もロボット支援下手術が行われるようになり、以前には難しいと思われた精度の高い手術も可能になりつつある。

 日本放射線腫瘍学会第30回学術大会(11月17-19日、大阪市)では、シンポジウム「最新エビデンスに基づく前立腺癌診療の現状と今後の展望」が開催され、前立腺癌治療の最新動向が報告された。このシンポジウムで紹介された、手術と放射線治療の最近の動向のレポートの第2回をお送りする。



 放射線療法には、体の外から放射線を照射する「外照射」法と、前立腺の中に放射線を出す線源を入れて放射線を照射する「組織内照射」法がある。

 外照射法においては、X線や電子線を発生する直線加速装置(リニアック)が一般的に用いられるが、照射技術の進歩に伴い、周囲の臓器への照射を減らす工夫がなされた三次元原照射(3D-CRT)、さらに前立腺癌に線量を集中できる強度変調放射線治療(IMRT)、ピンポイントに照射する定位放射線治療といった高精度の放射線療法も行われている。

 「前立腺癌は線量を上げるほど効果が高いことが知られている」と、浜松医科大学放射線腫瘍学講座の中村和正氏は説明する。総線量70Gy(グレイ)以上を分割して照射することで、手術と同等の成績が報告されている。しかし86.4Gyという高い線量によるIMRTでは膀胱出血や尿路狭窄などの有害事象が起こってくることが臨床試験で確認され、1回あたりの線量が1.8-2.0Gyの「通常分割照射には限界がある」こともわかってきた。また通常分割照射の治療期間は7-8週間にもおよぶ。

 そこで1回あたりの線量を上げて、治療期間が短縮できる「寡分割照射」が検討されている。寡分割照射は1回あたりの線量によって中等量寡分割照射と超寡分割照射がある。中等量寡分割照射は、通常のリニアックやIMRTおよび正確な照射を可能にするIGRT(画像誘導放射線治療)で行われ、線量は1回2.4-4Gy、治療期間は4-6週間程度。超寡分割照射は定位放射線治療に使われるサイバーナイフなどで1回6.5Gy以上が照射される。

通常分割照射と寡分割照射を比較する試験の結果が相次ぎ報告
 ここ数年、通常分割照射と寡分割照射を比較する試験の結果が相次いで報告された。その1つが、中間リスクから高リスクの前立腺癌820例を対象に、1回2Gyの通常分割照射(総線量78Gy/治療期間8週)と1回3.4Gy(64.6Gy/6.5週)の寡分割照射を比較した大規模なランダム化第III相試験(HYPRO)。照射は大部分がIMRT/IGRTで行われた。試験は通常分割照射に対して寡分割照射が劣らないこと(非劣性)を検証する目的で行われたが、寡分割照射のほうが有害事象は多く、非劣性は証明できなかった(Aluwini S, et al. Lancet Oncol. 2016)。治療効果については10%の優越性を見込んでいたが、寡分割照射の優位性は認められなかった(Incrocci L, et al. Lancet Oncol. 2016)。そのため「この寡分割照射法は新規の標準治療にはならないと結論づけられた」。

 しかし3213例を対象とした別の第III相試験(CHHiP)では、1回3Gyで総線量60Gy(照射回数20回/治療期間4週)、1回3Gyで総線量57Gy(19回/3.8週)、1回2Gyで総線量74Gy(37回/7.4週)の非劣性が検証された。その結果、有害事象も効果も有意な差がなかった。このため、総線量60Gy/照射回数20回の照射は安全で有効であり、新たな標準治療になりうるとしている(Dearnaley et al. Lancet Oncol. 2016)。

 また1092例対象の第III相試験(RTOG0415)も非劣性を検証した試験だが、低リスク患者で、1回2.5Gyの寡分割照射(70Gy/28回/5.6週)と1回1.8Gyの通常分割照射(73.8Gy/41回/8.2週以上)を比較した結果、非劣性は示されたが、寡分割照射のほうが照射後、日数が経ってから起こる晩期有害事象は少し多かった(Lee et al. J Clin Oncol. 2016)。

 中間リスク患者1204例対象の第III相試験(PROFIT試験)も非劣性を証明したものだが、1回3Gyの寡分割照射(総線量60Gy)と1回2Gyの通常分割照射(総線量78G)が比較され、治療効果も有害事象も差がなく、結果として寡分割照射は従来の照射法に劣っていないことが示唆された(Catton CN, et al. J Clin Oncol 2017)。

 これらのことから中村氏は「寡分割照射は通常分割照射に比べて治療期間が短縮できるが、有害事象に関しては同等あるいはやや上昇する。治療効果についてはほぼ同等である」とまとめた。また、こうした臨床試験の結果を受けて、米国の学会(ASTRO、ASCO、AUA)では、「集積されたデータから中等度寡分割照射の日常診療での使用は証明された」とする内容のガイドライン案を検討している。

 日本でもIMRT/IGRTによる寡分割照射(総線量70Gy/1回2.5Gy)の第II相試験が実施されている。2014年8月に登録が終了し、20施設132例が登録、2019年には経過観察が終了する予定だ。この試験では日本人でも有害事象が増加しないことを確認することが目的で、「治療成績の優劣は世界で実施されている第III相試験の最終的な結果を待って、寡分割照射が本邦でも標準治療の1つになるかを判断する」とした。

 中村氏は私見として、寡分割照射は通常分割照射より有害事象がやや多く見られる可能性があることから、「寡分割照射を行う際には治療計画においてより慎重な対応が必要である」と述べた。そして現時点では「通常分割照射に取って代わる治療ではなく、あくまで同程度の治療という認識であるべきではないかと思う」と話した。泌尿器科医によっては外照射のために8週間も通院するより短期間の寡分割照射のほうがいいという考えの人もいれば、有害事象が起こるくらいなら少し治療期間が長くてもいいと考える人もいる。「放射線科医が寡分割照射をする場合には泌尿器科医とそのあたりをよく相談するべきだろう」と話した。

 1回の線量をさらに上げた超寡分割照射についても検討が行われている。限局性前立腺癌1100例の第II相試験で、超寡分割照射(総線量中央値36.25Gy/照射回数4-5回)で良い成績が得られている(King CR, et al. Radiother Oncol. 2013)。低リスクもしくは中間リスク患者を対象に第III相試験も実施あるいは計画されている。そのうちの1つ、中間リスク患者1200例対象の試験(HYPO-RT-PC)では、1回6.1Gyの超寡分割照射(42.7Gy/7回)と1回2Gyの通常分割照射(78Gy/39回)が比較された。2年以上経過観察できた患者において、2年時点の有害事象には差がなかったが、「晩期有害事象はまだ不明である」と中村氏(Widmark A, et al. ASTRO 2016)。

 後ろ向きのデータベース解析では「超寡分割照射の有害事象が少し多かったので、注意が必要であり、有害事象を抑えるためには、線量分布を慎重に工夫する必要があると個人的に思っている」と話した。そのため超寡分割照射は有用性が期待されるが、エビデンスの確立はこれからであるとした。

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