このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2018/2/23

がん研究会有明病院で「妊孕性温存ワーキンググループ」が始動

がん患者の妊孕性を守りたい Vol.1

森下紀代美=医学ライター

 妊孕性とは、「妊娠する力」のこと。がん治療では、妊娠に重要な卵巣や子宮、精巣を手術で切除したり、薬物療法や放射線療法でこれらの臓器の機能不全が生じたりする場合がある。妊孕性温存については、日本では患者だけでなく医療従事者の間でもまだ十分には認識されていない。こうした状況を改善するため、がん研究会有明病院の医師たちが立ち上げたのが「妊孕性温存ワーキンググループ(WG)」だ。2回にわたってその取り組みを紹介する。第1回目は、妊孕性WGの発足の経緯と活動について取材した。


写真1 妊孕性温存ワーキンググループのミーティングの様子

すべてのがん患者の妊孕性温存をサポートする必要がある
 妊孕性は一度失うと回復が非常に難しいとされ、小児や思春期、若年のがん患者では、将来子どもを持てなくなることにつながる。しかし、これまでは何よりもまず命を救うため、がんそのものに対する治療が最優先とされてきた。しかし、近年のがん治療の飛躍的な進歩により、がんの経験者(がんサバイバー)が増加し、がんに対する治療だけでなく、治療後の生活の質も重視されるようになってきた。若いがん患者には、妊孕性の温存を目指す治療法が試みられるようになってきている。

 妊孕性温存に関する指針は、海外ではすでに複数発表され、その一つである米国臨床腫瘍学会(ASCO)が2013年に発表したガイドライン(2006年版を改訂)では、妊孕性を失う可能性があるがん治療について、リスクの高さにより、男女別にそれぞれ5段階に分類している。日本では、日本癌治療学会による「小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン 2017年版」が2017年7月に発表された。

  妊孕性温存WGは、がん研究会有明病院の「がん研チャイルド・ライフ・サポート(Ganken child life support:GCLS)研究会」から派生する形で誕生した(写真1)。GCLS研究会は、同院で治療を受けているがん患者の子どもや小児がんの患者を対象として、心のケアの必要性に高い意識を持つ医師、看護師、ソーシャルワーカー、臨床心理士らが自発的に集まり、支援に取り組んでいるグループだ(レポート:親ががんになった子どもを支えたいで紹介)。

写真2 左から青木洋一氏、片岡明美氏、小野麻紀子氏、市村崇氏

 同院には思春期や若年の患者も多い。GCLS研究会の活動を中心となって進めている消化器化学療法科副医長の市村崇氏によると、治療でがんは治癒したものの、成人してから自分が妊孕性を失っていることを知り、大きなショックを受けたというケースがGCLS研究会の定例会で報告された。それまで同院では、妊孕性温存について統一した対応をとる体制がなかったことから、市村氏は「院内で統一したマニュアルを作り、すべてのがん患者さんの妊孕性温存をサポートしていく必要があると考えた」と話す。

妊孕性温存WGが発足、患者向けハンドブックも完成
 そこで、以前から近隣の生殖医療を専門とする施設と連携し、乳がん患者の妊孕性温存に取り組んでいた乳腺センター乳腺外科医長の片岡明美氏を委員長として、妊孕性温存WGが発足した。副委員長は総合腫瘍科副医長の小野麻紀子氏が務め、妊孕性温存のための専門技術を持つ婦人科副医長の青木洋一氏が専門委員として加わった(写真2)。市村氏は、院内外のコーディネート業務を担当している。メンバーは現在22人で、前述の4人の医師の他に、整形外科、放射線治療科、泌尿器科、集中治療部の医師、病棟および外来に勤務する看護師、薬剤師、事務など、多職種の職員が自発的に参加して活動を行っている。

  • 1
  • 2
この記事を友達に伝える印刷用ページ