このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2018/1/9

日本医師会と日本がん登録協議会がシンポジウムを開催

始まった希少がん対策〜がん登録で浮き彫りになるその実態〜

福島安紀=医療ライター

 2017年10月に閣議決定された第3期がん対策推進基本計画では、第2期の計画でその他の課題とされていた希少がんと難治性がん対策が、取り組むべき課題の1つに位置づけられた。日本医師会と日本がん登録協議会(JACR)が11月25日、東京で「始まった希少がん対策〜がん登録で浮き彫りになるその実態〜」をテーマにしたシンポジウムを開いた。日欧のがん登録の専門家や希少がん治療を行う医師、患者の代表が登壇して希少がん対策と治療の実態と課題を語った。


欧州で進む国境を越えたデータの収集、患者支援
 シンポジウムは3部構成で、I部ではまず、イタリア国立がん研究所分析疫学部のアナリザ・トラマ氏が、「欧州での希少がん対策から〜RARECAREの体験より」と題して講演した。欧州では、罹患数が10万人対6例未満で、「その症例の少なさから、臨床上の判断が困難で、ケアの充実も臨床研究も難しいがん」を希少がんとし、データ収集とがん登録や研究の予算確保などを目的としたRARECAREを設立。RARECARE-Netを構築してデータを公開し、対策を進めている。

 RARECAREには現在、27カ国94がん登録が参加して、がん登録の標準化を行っている。トラマ氏は、「何を希少がんと分類するか、その定義を決めるのも大変だった」と語ったが、議論の末、198種類の疾患が希少がんに分類されている。欧州で全がん患者のうち希少がん患者が占める割合は22%と、決して少なくない。国別の5年相対生存率の差を比較してその原因を探り欧州全体での治療レベルを上げることにもつながっている。

 希少がんは数が少ないため、治療、対策、臨床研究がなかなか進まないのは世界的な課題だ。トラマ氏は、その打開策として進められている欧州の先進的な活動を次のように紹介した。「欧州では、情報共有、患者紹介、研究サポート、QOL向上、患者・医療者の教育などを目的とした、European Reference Networks(ERNs)を構築しています。がんだけではなく希少疾患を対象とした大きな組織で、国境を越えた欧州での医療連携を掲げており、学会や患者会、製薬企業が研究支援や患者支援を行っています。希少がんでは、RARECAREから発展したJARC(The Joint Action on Rare Cancers)という新たな枠組みがERNsと共同で、実態把握や医療レベルの向上、診療ガイドラインの作成、患者支援などに取り組んでいます」。

 アジアでも、国境を越えた希少がん対策が求められている。国立がん研究センターがん対策情報センターがん登録センター全国がん登録室長の松田智大氏は、「患者数が多いがんであれば多少の誤差は支障がないが、希少がんの実態把握や研究には精度の高いがん登録が欠かせない」と強調し、次のように語った。「日本では胃がん、肝がんが非常に多く、乳がんや前立腺がんは増えてはいますが比較的少ないなど、欧米と患者数が異なっています。がんの発生には人種差、地域差があることから、日本の現状を把握し、欧州との共同研究なども進めながら、アジアの国々で共同して希少がんの実態把握、きちんとした診断と分類をするための研修、生存率の解析などを行っていきたいと考えています」。

医療機関の経験の不足、治療開発の遅れ、情報不足が課題
 II部では、国立がん研究センター希少がんセンター長の川井章氏が、日本の希少がんの治療と対策には(1)医療機関の経験の不足(2)教育・訓練の不足(3)研究の不足(4)臨床試験の不足(5)情報の不足(6)患者支援の不足―-の6つの課題があることを指摘した。川井氏が示したデータによると、例えば、悪性骨軟部腫瘍(肉腫)の外科治療後の合併症発生率や院内死亡率は、年間手術件数が多い病院のほうが少ない施設に比べて有意に低かった。また、肉腫の専門施設でも、肉腫の中でも「四肢横紋筋肉腫」など、本当のごくまれな疾患については標準治療を把握していない実態も明らかになっているという。

 また、情報や患者支援の不足対策として、同センターに14年6月より希少がんセンターが設立され、専任の看護師による電話相談「希少がんホットライン」で患者や医療者への相談に応じていることを改めて紹介した。希少がんの臨床研究・開発を促進するために、厚生労働省が「条件付き早期承認制度」を17年10月よりスタートするなど、少しずつ研究・臨床試験・治療選択の不足を解消する対策も進みつつある。

 同センターも希少がんの効率的な治療開発を進めるMASTER KEYプロジェクトを開始した。超希少がんに対する臨床開発対策として、厚生労働省などが関わって、疾患レジストリ・試験グループを活用して、治験実施施設以外の病院からも被験者となる患者をリクルートする仕組みを構築。その仕組みを活用して日本整形外科学会全国骨・軟部肉腫登録事業、骨軟部肉腫治療研究会加盟病院などのネットワークによって被験者を集め、切除不能の明細胞肉腫または胞巣状軟部肉腫に対するニボルマブの医師主導治験OSCAR 試験を進めており、予想以上に治験が順調に進んでいることも紹介された。

 一方、同センターがん対策情報センターがん統計・総合解析研究部長の片野田耕太氏は、大阪大学との共同研究で、精度基準を満たした12県のがん登録データを使って希少がんの罹患数を集計した結果を報告。「日本人の希少がんの罹患数は合計すると人口10万人75例で、がん全体の15%でした。ちょうど胃がんと同じくらいの割合で、それぞれの患者数は少なくても全体からみたら決して少なくありません」と説明した。特に、0〜14歳、15〜29歳では希少がんの方が多く、30代になると乳がん、子宮頸がん、大腸がん、胃がんなど患者数の多いがんの割合が高くなっている(図)。

図 年齢別にみた希少がん罹患率(片野田耕太氏提供資料より)

  • 1
  • 2
この記事を友達に伝える印刷用ページ