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レポート

2017/11/27

国立がん研究センター・希少がんセミナーより

悪性脳腫瘍も治る時代、前向きに治療を

福島安紀=医療ライター

 脳腫瘍は脳内に腫瘍が発生し、頭痛やけいれん発作、意識障害などの症状が出ることがある病気で、細かくは150種類以上に分類される。原発性の悪性脳腫瘍に関する「第11回希少がんを知り学び集うセミナー・希少がん Meet the Expert 脳腫瘍」が、11月10日、国立がん研究センター希少がんセンターで開催され、同センター中央病院脳脊髄腫瘍科長の成田善孝氏が講演した。


国立がん研究センター中央病院脳脊髄腫瘍科長の成田善孝氏(写真撮影・木口マリ)

手術は病理医がいて術中迅速診断ができる病院で
 原発性脳腫瘍は他のがんのような病期(ステージ)分類がなく、WHO(世界保健機関)がグレード1〜4に分類している。グレード1は良性腫瘍で、グレード2〜4が悪性腫瘍。多くの髄膜腫(メジンテーマ)、下垂体腫瘍、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫は良性腫瘍で、手術で腫瘍を取り除けば一般的に治る。主な悪性脳腫瘍には、神経膠腫(グリオーマ)、中枢神経系悪性リンパ腫、胚細胞腫瘍、遺伝性脳腫瘍などがあり、グリオーマはさらにグレード2の星細胞腫、乏突起膠腫系、グレード3の退形成性星細胞腫、退形成性乏突起膠腫、グレード4の膠芽腫に分けられる。悪性の中で最も患者数が多く“脳のがん″と言い換えてもよいのがグリオーマだ。

 「悪性脳腫瘍の治療では、手術だけではなく放射線治療や化学療法が必要になります。グリオーマは治らないと思っている人が多いかもしれませんが、グレード2のグリオーマでは5年生存率は76.9%で、少なくとも20〜30%は治癒しますし、グレード4の膠芽腫でも治療後25年以上元気にしている患者さんがいます。新しい治療も出てきていますから、治る可能性のあるがんだと考えてよいと思います」。成田氏はそう解説した。

 脳腫瘍では、けいれん発作、頭蓋内圧亢進症状(頭痛、吐き気、意識障害)、麻痺やしびれ、ふらつき、失語、聴力障害、月経不順、乳汁分泌、不妊など、腫瘍が発生した場所によって様々な症状が出る。外傷の検査時や脳ドックの際に無症状で脳腫瘍が見つかる人もいるそうだ。「膠芽腫などの悪性脳腫瘍は、腫瘍が急速に増大するのが特徴です。脳ドックでもほとんど見つかりませんし、中枢神経系悪性リンパ腫では水頭症となって髄液の流れが止まり、いきなり患者さんがこん睡状態になります。そのような状態でも、放射線治療や化学療法により元気を取り戻す患者さんはいます」と成田氏は話す。

 脳腫瘍では、MRIやCTなどの画像診断の後、手術を行う。「画像診断だけでは、どのタイプの脳腫瘍か確定診断できません。中枢神経系悪性リンパ腫や胚細胞腫瘍など、腫瘍を切除せずに抗がん剤治療で治る脳腫瘍もあるので、病理医がいて手術中に迅速病理診断ができる病院で手術を受けることが大切です。良性腫瘍はできるだけ手術で腫瘍を取り除きます。悪性腫瘍でも基本的にはできる限り腫瘍を切除し、放射線治療や化学療法を行います。自分がどのタイプの脳腫瘍でどのような治療が必要かは主治医の説明をよく聞いてください」と成田氏は強調した。

術中MRIや覚醒下手術を活用し、機能温存しつつ最大限腫瘍を切除
 膠芽腫、星細胞腫、乏突起膠腫系などの手術の最終目的は、患者さんが社会に復帰して仕事を続けたり歩けるようになったりすることだ。そのため、機能を温存しながら最大限腫瘍を摘出する。国立がん研究センター中央病院では、ニューロナビゲーションシステム、5アミノレブリン酸(5-ALA)による蛍光標識、術中MRI、脳波モニタリングといった高度な機器を駆使し、覚醒下手術も行う。覚醒下手術は、脳の表面を電気で刺激して、患者さんと話したりカードを見せたりしながら脳の重要な機能を確認し、会話や動作に必要な部分を切除しないようにする手術だ。

 「国内で術中MRIが撮れる病院は約25施設、覚醒下脳手術認定施設は約30施設です。グリオーマの手術は特に機能温存が大切ですから、覚醒下手術や術中MRIが可能な施設を選びましょう。正常な部分と腫瘍の境界は分かりにくいですし、一気に腫瘍を切除した場合、言葉が出なくなったり手足が動かなくなったりする可能性があるので、覚醒下手術で慎重に少しずつ取る必要があります」(成田氏)。

 膠芽腫に対しては、腫瘍摘出後に1円玉くらいの大きさの抗がん剤カルムスチンを、切除面を覆うように張り付ける治療を行うこともある。グリオーマに対する化学療法にはテモゾロミド、ベバシズマブなどがあり、中枢神経系悪性リンパ腫に対してはメトトレキサートの投与が標準治療だ。良性腫瘍や転移性脳腫瘍に効果のある薬はないのが現状という。

 開発中の治療には、NOVO-TTF(腫瘍電場治療=抗有糸分裂療法)がある。膠芽腫の患者の頭皮に電極パットを貼り、弱い周波の電場を発生させ続けることで腫瘍の増大を抑える治療法で、早ければ来年から日本でも使用できる可能性がある。また、グリオーマに対してEGFR抗体薬、免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブ、ITKワクチン、WT1ワクチン、BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)、IDH1阻害薬、エリブリンの臨床試験が進んでいる。

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