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レポート

2017/10/20

国立がん研究センター・希少がんセミナーより

分類変更や新薬開発が進む「神経内分泌腫瘍」

福島安紀=医療ライター

 ホルモンを出す神経内分泌細胞にできる悪性腫瘍「NEN」は、膵臓、消化管(胃、十二指腸、小腸、虫垂、大腸)、肺など全身のさまざまな臓器から発生する。NENをテーマにした患者向けのセミナー「第9回希少がんを知り学び集うセミナー・希少がんMeet the Expert:神経内分泌腫瘍」が9月8日、国立がん研究センター希少がんセンターで開かれた。同センター中央病院肝胆膵内科の森実千種氏が、神経内分泌腫瘍の治療方針や新たな治療開発について講演し、患者・家族から寄せられた質問に答えた。


ホルモンの過剰分泌による症状はソマスタチンアナログなどで治療
 神経内分泌細胞に発生する、または神経内分泌細胞への分化傾向を示す悪性腫瘍「NEN」は、比較的進行がゆっくりである神経内分泌腫瘍(NET)と進行が速い神経内分泌がん(NEC)に分けられる。「NETとNECは名前が似ていますが、病気の性質も治療法も異なります。自分の腫瘍がどちらなのかきちんと把握することが大事です」と森実氏は強調した。

 神経内分泌腫瘍の多くはホルモンを過剰に分泌するため、NETが発生した場所によってはさまざまな内分泌症状が出るのが特徴だ。例えば、膵臓に発生する膵内分泌腫瘍(膵NET)では、インスリンが過剰に分泌されて低血糖になったり、ガストリンによって胃潰瘍になったり、VIPで下痢、グルカゴンによって発疹や糖尿病、ソマスタチンで糖尿病や脂肪性の下痢といった症状が出るという。また、セロトニンの過剰分泌によって、下痢や紅潮発作などの症状が出るカルチノイド症候群を来したり、副甲状腺ホルモンによって高カルシウム血症が引き起こされたりすることもある。

 こうした内分泌症状に対する治療には、消化管ホルモンの分泌を持続的に抑えるソマスタチンアナログ「オクトレオチド」が投与される。「オクトレオチドはお尻に打つ筋肉注射で、NETによって過剰に分泌されるホルモンが抑えられます。ただ、インスリンが過剰分泌されているインスリノーマの人に対しては低血糖発作を助長する可能性があるので、ジアゾキシドを先に試してみるほうがよいとされています」と森実氏は解説。また、ガストリノーマにはH2ブロッカー、グルカゴノーマには亜鉛、VIPオーマには高カロリー輸液、カルチノイド症候群には抗ヒスタミン薬で症状の改善を目指すこともあるという。

NETの薬物療法は腫瘍量と増殖活性で薬を選択
 神経内分泌腫瘍に対する基本的な治療法は、技術的に切除可能な場合には、手術で腫瘍を切除する。腫瘍をすべて切除するのが難しくても、ホルモンの過剰分泌による症状が薬では改善できない時には、腫瘍の減量手術を行うこともある。肝臓に転移がある場合、NETに対しては可能なら切除を検討し、切除が難しいようなら超音波装置で病巣の位置を確認しながら皮膚から病巣まで針を刺し、高周波の電気を流して焼き切る「ラジオ波焼灼術(RFA)」、肝臓の動脈にカテーテルを入れて塞栓剤と抗がん剤を投与し、病巣を兵糧攻めにする「肝動脈化学塞栓術(TACE)」などが行われる。

 NETの薬物療法では、ホルモン剤(ソマトスタチンアナログ)のオクトレオチドとランレオチド、細胞障害性の抗がん剤ストレプトゾシン、分子標的薬のスニチニブ、エベロリムスが用いられる。「オクトレオチド、ランレオチドに関しては、ホルモンの過剰分泌による症状を抑えるだけではなく、腫瘍の増殖を抑制する効果もあります。オクトレオチドの適応症は消化管のNET、ランレオチドは膵NETと消化管NETです。ストレプトゾシンは入院して5日間連続投与法を6週間ごとに繰り返す方法(デイリー)と、週に1日投与を外来で毎週繰り返す1週間間隔投与法(ウィークリー)の2種類があります。膵NETが適応症の分子標的薬スニチニブ、どの臓器に発生したNETにも使えるエベロリムスは、がん細胞の増殖や血管の新生を抑える分子標的薬の内服薬です」と森実氏は解説した。

 ストレプトゾシンの副作用は比較的軽い。、スニチニブは下痢、吐き気、だるさ、手や足の皮膚がひび割れたりする手足皮膚症候群、高血圧、骨髄抑制が出ることもある。エベロリムスも間質性肺炎、感染症にかかりやすい、口内炎、高血糖、脂質異常、蕁麻疹などの副作用に注意が必要だ。

 特に分子標的薬を使う際の注意点として、森実氏は次のように指摘した。「スニチニブを使う際には、保湿剤を使って手足の保湿をしっかりし、1日1回は血圧を測りましょう。傷が治りづらくなるといわれているため手術の前後の投与は慎重にする必要があります。心臓や腎臓に持病がある人は主治医に伝えてください。エベロリムスの場合は、B型肝炎や結核の既往のある人、肺や肝臓が弱いと言われたことのある人は必ず主治医に伝えてください。糖尿病の人は血糖がコントロールされている状態でやりましょう。生ワクチンの接種も禁忌です。スニチニブもエベロリムスもグレープフルーツ、セントジョーンズワートなど飲み合わせが悪いものがありますので注意が必要です」。

 どの薬物療法を行うかは、「腫瘍量と増殖活性を示すKi67の数値によって決めています」と森実氏。腫瘍量が少なくて増殖活性が少ない人は、何もせずに経過観察するか、ソマトスタチンアナログを投与して様子をみる。逆に、腫瘍が大きくて増殖の速度が速そうな人には、細胞障害性の抗がん剤を使い、その間に当たる人たちは分子標的薬を投与するのが一般的だ(図1)。

図1 NETに対する薬物療法の使い分け

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