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レポート

2017/10/16

COML人材養成講座レポート(後編)

医療政策にかかわってみよう

福原 麻希=医療ジャーナリスト

 近年、「がん対策推進協議会」のように、医療に関わる政策や仕組み作りを議論する審議会(法令に基づいて設置される合議制の諮問機関)などに、市民や患者を代表する人の参画が求められている。だが、これらの会議で効果的に発言することは、なかなか難しい。今回は、認定NPO法人 ささえあい医療人権センターCOMLが今年から初めて医療界で開講した人材養成講座の様子をレポートする。


 これまで、国や地方行政の審議会等、および検討会や委員会の委員には、▽医療関係者▽保険者(健康保険事業の運営主体=健康保険組合や協会けんぽ)▽学識経験者(※)▽行政幹部職員▽メディア等が選ばれ、医療の受け手である患者・市民が参加できる会議は少なかった。だが、「がん対策基本法」で、政策を策定するときには、「患者、およびその家族または遺族を代表する人を委員に任命する」と決まったことから、以降、他の会議でも患者や市民が意見を述べる機会が増えている。

 その傾向は、さらに広がりを見せている。例えば、大学や研究機関、および病院における臨床研究等(治験を含む)の倫理審査委員会では、会議予定日に患者や市民の一般委員が欠席する場合、開催できない。また、全国85カ所の特定機能病院では、その承認要件に「医療安全に関する外部有識者による監査委員会の設置」が決定し、医療安全の有識者、法律家と並んで、「医療を受ける立場の者」が選ばれることになった。このほか、日本医療機能評価機構でも「疾患ごとの診療ガイドライン(最新の治療情報をまとめる手引き)作成に患者や市民の代表を加えていくことを推奨する」という。

 だが、市民が政策を話し合う会議に、一般委員として発言することは難しい。自分自身の経験からのみの発言では、あくまでも「個人の体験談」になってしまうからだ。

 認定NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML(コムル)理事長の山口育子さんは、昨年度、患者支援団体として、81種類の国の行政機関、地方公共団体、医療関係団体、病院や大学等の検討会や委員会の委員を務めた。COMLは1990年から医療を消費者の視点でとらえ、「賢い患者になりましょう」を合言葉に、患者の自立した医療への参加を支援してきた。COMLに地方行政の検討会における一般委員の要請が入ったのは、90年代半ばのことだったという。90年代後半には「『患者主体の医療を実現していくためには、患者の声を聞く必要がある』と、厚生労働省や文部科学省からも委員の依頼があった」と山口さんは振り返る。

 このため、2005年頃からCOML前理事長の辻本好子さん(故人)が「今後、ますます、一般委員のニーズは高まるだろう。そのためには、医療を理解し委員会で発言できる人材を養成する必要があるのではないか」と提案していたという。

 そこで、COMLでは2009年から「医療をささえる市民養成講座」(前編参照)を開講し、医療の仕組みや制度などを理解する人を養成してきた。その修了者を対象にアドバンスコースとしてし、今年度から委員会で発言できる人材を養成するための「医療関係会議の一般委員養成講座」を開講している。

 2017年度前期は、全国から16人の受講生が集まった。この講座で目指したいことについて、「冷静、かつ客観的に意見構築ができるようになりたい」「限られた時間内で自分の意見を述べるスキルを身につけたい」「医療は行政から押しつけられるものではない、という自分に対する意識改革として参加した」などの意気込みがあった。

グループディスカッションの様子

一般委員の役割を意識し、必要な知識やスキルを考える
 26年間の豊富な経験から、山口さんはこう言う。「このような会議で市民代表として意見を言う場合、『その気づきは他の患者さんにも普遍化できる内容か』『医療のしくみからずれていないか』『意見は実現可能か』がポイントになります」。

 今回のプログラム(表参照、全7回講座)の特徴の1つは、過去に実施された検討会や審査会の議事録を読んだり、実際の会議を傍聴したりすること。目的は、実際の会議のレベルや雰囲気を体感しながら、「一般委員の役割と必要な知識やスキル」について何度も考えるためである。

 第2回講座の「議事録から一般委員の役割と発言を考える」では、文部科学省と厚生労働省の2種類の会議の議事録が使われた。文部科学省「東北地方における医学部設置にかかる構想審査会」(14年)は、医学部設置における評価方法等を検討するために開催されていた会議で、最終的には東北医科薬科大学が選ばれた。厚生労働省「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」(16年)は、美容医療や審美歯科などのホームページ上の誇大広告が問題となったため、法制化を議論するために開催された。

 これらの議事録から検討会の議事のポイントを読み取り、一般委員の役割を考えた。例えば、文科省の医学部設置に関する議論では、専門委員と一般委員の役割の違いについて「専門委員は医学部設置が前提のところから、『どのような専門性が必要か』という論点に重きが置かれていた。一方、一般委員は、そもそも『医学部設置が地域にどんなメリットをもたらすか』『10年先の医療をどのように変える可能性があるか』など、基本的な質問をすることで、議論の枠を広げるような役割を果たしていた」との指摘があった。その後、「自分なら、どのような意見を述べたか」について受講者が順次、発表した。
 
 検討会の傍聴については、1カ月半の期間で最低2回、会議を聞くことが宿題で、その報告は第5回目の講座で発表し合った。

表 プログラムの内容

講座1 一般委員養成講座とは
講座2 議事録から考える 一般委員の役割と発言
講座3 ディベート訓練(1)
講座4 ディベート訓練(2)
講座5 厚労省の検討会傍聴 報告会
講座6 模擬検討会(1)
講座7 模擬検討会(2)


※ 学識経験者・・・専門領域の学問で評価を受け、豊富な経験と高い見識をもつと社会的に認められる人(三省堂・大辞林)

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