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レポート

2017/9/11

国立がん研究センター・希少がんセミナーより

大腸がんに準じた治療が行われ、新たな治療開発も進む小腸腺がん

福島安紀=医療ライター

 胃と大腸をつなぐ小腸に発生する悪性腫瘍は、年間発症率が10万人に対し約2人と、患者数が非常に少ない。そういったがんの患者向けに、国立がん研究センター希少がんセンターが8月10日、「第8回希少がんを知り学び集うセミナー・希少がん Meet the Expert:小腸がん」を開催した。セミナーは、同センターと認定NPO法人キャンサーネットジャパン、がん情報サイト「オンコロ」との共催。小腸に発生するがんには神経内分泌腫瘍、小腸腺がん、悪性リンパ腫、肉腫(GIST、消化管間質腫瘍を含む)などがあるが、セミナーでは同センター中央病院消化器内科の本間義崇(よしたか)氏が、主に「小腸腺がん」について解説し、参加者からの質問に回答した。


手術後の再発を予防する治療法を開発するための臨床試験が進行中
 小腸は十二指腸、空腸、回腸で構成され、消化された食物から栄養分や水分を吸収している(図)。十二指腸、空腸、回腸の粘膜から発生する小腸腺がんの発症リスク因子としては、炎症性疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎など)、遺伝性疾患(家族性大腸腺腫症、リンチ症候群など)、消化管吸収障害(セリアック病など)が挙げられる。

図 小腸の位置と構造

 小腸腺がんは初期の段階では無症状で、十二指腸の前半部分に発生した場合には検診などで発見される場合があるが、ほとんどの小腸腺がんは、通常の消化管内視鏡(胃カメラ、大腸カメラ)が届かない部分に発生する。「胃がんや大腸がん検診の際に小腸がんが見つかる患者さんはまれです。多くの患者さんは腫瘍が大きくなることによって生じる貧血や黒色便、腹痛などを契機に発見されます。ただ、カプセル内視鏡の登場によって、小腸がんが早期発見される人が今後は少し増えるかもしれません」と、本間氏は説明した。

 2014年に保険適用になったカプセル内視鏡は、内服薬と同じように水と一緒に飲み込むカプセル型の内視鏡で、消化管内を移動しながら撮影し、小腸内の粘膜の病変の有無も観察できる。ただし、病変が見つかって、それががんかどうかを詳しく検査する際には、先端に付いた風船を膨らませたりしぼませたりすることで小腸の奥深くまで挿入することが可能な「ダブルバルーン内視鏡」を用いたり、場合によっては外科的な手術によって病変の組織を採取する必要がある。

 治療については、「小腸腺がんでは、大腸がんに準じた治療が行われます。これまでの検討により、小腸腺がんは生物学的に胃がんより大腸がんとの共通点が多く、化学療法の効果についても胃がんよりも大腸がんの治療法の効果が高いからです」と本間氏は話す。

 がんが小腸とその周辺にとどまっている場合、外科手術で病変とその周囲のリンパ節を切除するのが基本。一般的に小腸には内視鏡が入りにくいが、胃の少し奥の十二指腸に粘膜内がんが見つかった時には、内視鏡を用いて病変を切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)によって治療できる場合もある。

 「現在は、手術後に何らかの追加治療をした方が再発を予防できるという科学的な根拠が存在しないので、病巣が肉眼的に取りきれた場合には、追加治療は行わずに慎重に経過観察を行うのが標準治療です。手術で病巣が肉眼的に取りきれた患者さんの小腸腺がんの5年無病再発生存割合(5年間小腸腺がんが再発しなかった患者の割合)は、胃がん、大腸がんと比べると低い傾向にあるため、再発を防ぐ治療の開発が課題です」と本間氏は語る。

 国立がん研究センター中央病院で1994〜2014年に手術治療を受けて、完全切除が達成された56人の小腸腺がんの患者の5年無再発生存割合は、ステージ気80.8%、Aは85.8%、B77.8%、A51.6%、Bは20.8%。同院の胃がんや大腸がんの治療成績と比べると、確かにあまり良い数字ではない。

 この状態を打開すべく、手術後の再発を減らす方法を探るため、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)は、今年5月、小腸腺がんの再発を予防する術後補助化学療法として、カペシタビンとオキサリプラチンの併用療法の効果を検証する臨床試験「J-BALLAD(JCOG1502C)試験」を開始した。ステージ機銑靴両腸腺がんで手術を受けた16〜74歳の患者を無作為に2群に分け、A群は手術単独群、B群にはカペシタビンとオキサリプラチンを6カ月間投与し、無再発生存期間を比較する。保険診療と未承認薬の投与が併用できる「先進医療」として実施している試験であり、製薬企業が無償提供する薬剤を用いるため、薬剤費用に関しては患者の自己負担はない。この試験を実施する本間氏は、「150例の患者さんを対象に試験を進める予定です。被験者を集めるのに6〜7年、結果が出るまでにはもっとかかるかもしれませんが、小腸腺がんの再発を抑制する治療の開発につながればと考えています」と話した。現在、同センター中央病院で試験を実施中で、この臨床試験に参加する患者を募集中だ。今後は、同センター東病院など国内20病院で登録可能となる予定だ。

 なお、ヨーロッパでも、ステージ機銑靴両腸腺がんで手術を受けた患者を2群に分け、手術単独群と術後補助化学療法実施群を比較する「BALLAD試験」が実施されている。本試験とJ-BALLAD試験は共同試験の位置づけという。BALLAD試験の術後補助化学療法実施群はさらに2群に分けられており、「カペシタビン、フルオロウラシルなどのフルオロピリミジン系抗がん剤単独」と「フルオロピリミジン系抗がん剤とオキサリプラチンの併用療法」の効果を比べる。

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