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レポート

2017/5/26

国立がん研究センター・希少がんセミナーより

治りやすいが不妊などの晩期障害もある胚細胞腫瘍

福島安紀=医療ライター

 小児や思春期から20代、30代に多い胚細胞腫瘍の標準治療と最新治療を学ぶ患者向けのセミナー「第4回希少がんを知り学び集うセミナー・希少がん Meet the Expert:胚細胞腫瘍」が5月12日、国立がん研究センター希少がんセンターで開かれた。このセミナーは、同センターと認定NPO法人キャンサーネットジャパン、がん情報サイト「オンコロ」の共催。同センター中央病院乳腺・腫瘍内科で胚細胞腫瘍治療に携わってきた厚生労働省保健局医療課課長補佐の下井辰徳氏が、胚細胞腫瘍の特徴や治療方針、新たな治療開発について講演した。セミナーには、精巣腫瘍患者友の会代表の改發(かいはつ)厚氏も参加し、会場に集まった患者・家族の質問に答えた。


厚生労働省保険局医療課課長補佐の下井辰徳氏(撮影:木口マリ)

20代〜30代に多い精巣胚細胞腫瘍の治療の主軸はBEP療法
 胚細胞腫瘍は、卵子や精子になる生殖細胞(胚細胞)から、主に精巣(睾丸)、卵巣、頭蓋内などに発生するがん。頻度は少ないものの、縦隔、後腹膜、仙骨部に胚細胞腫瘍が見つかることもある。日本では年間発症数が人口10万人当たり1〜2人とまれながんの1つだが、小児、思春期から20代、30代の若い世代で発症しやすいのが特徴だ。

 「胚細胞腫瘍」という言葉は聞き慣れないかもしれないが、精巣腫瘍の95%は胚細胞腫瘍。胚細胞腫瘍のうち患者数が最も多く、治療法の開発が進んでいるのが精巣胚細胞腫瘍だ。「精巣胚細胞腫瘍のリスクが高いのは、停留精巣、萎縮睾丸、無精子症などの男性です。睾丸の腫れによって見つかることが多いのですが、思春期、20代、30代の男性は親や身近な人にもそういったことを言い出しにくく、受診が遅れがちなのが問題です」と下井氏は指摘する。

 精巣の中にしこり(腫瘍)があると分かったときには、鼠径部を数センチ切って腫瘍のある側の睾丸の中から精巣を取り出す「高位精巣摘除術」を行う。そして、採取した精巣の組織を顕微鏡で見て、悪性かどうか、および組織型を調べる病理診断をする。「乳がんなどの診断の際に行われる、針を刺して細胞や組織を採取する針生検は厳禁です。精巣腫瘍は非常に治りやすいがんであるにも関わらず、針生検を行うと他の臓器へがん細胞をまき散らしてしまう恐れがあるからです」と下井氏は話す。

 一般的にがんの進行度は、腫瘍の大きさ、リンパ節や血管、他の臓器への転移の有無などによって、1期から4期までの病期(ステージ)で表される。しかし、「精巣胚細胞腫瘍は比較的治りやすいがんです。根治がほぼ不可能という4期はなく、1〜3期に分けられ、肺や肝臓に転移したとしても治る可能性があります」と下井氏。また、AFP、β-HCG、LDHといった腫瘍マーカーが病期分類の基準になっていることも特徴だ。

 精巣胚細胞腫瘍と縦隔や後腹膜など性腺外の胚細胞腫瘍の治療は、抗がん剤治療が主軸になっている。「精巣の中だけにがんがとどまる1期は、抗がん剤の効きやすい組織型であるセミノーマ(精上皮腫)、効きにくい非セミノーマの胚細胞腫瘍とも、再発が分かってから治療しても治る確率が高いので、高位精巣摘出術の後、まずは経過観察で様子を見るのが一般的です。ステージ挟以上の精巣胚細胞腫瘍は、再発リスクに応じて、BEP療法(ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチンの併用療法)を3週間隔で3〜4サイクル行い、必要に応じて手術で残存腫瘍や後腹膜リンパ節を切除します。BEP療法の効果を上げるためには、副作用をマネジメントしながら、減量なしに3週間隔で完遂することが大切です」と下井氏は解説した(表)。

表 胚細胞腫瘍の組織型の分類と割合(下井氏提供資料より)

精巣胚細胞腫瘍  セミノーマ(40%)      非セミノーマ(60%)
卵巣胚細胞腫瘍  ディスジャーミノーマ(30%) 非ディスジャーミノーマ(70%)
頭蓋内胚細胞腫瘍 ジャーミノーマ(60%)    非ジャーミノーマ(40%)

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