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レポート

2017/4/10

国立がん研究センター・希少がんセミナーより

患肢温存率が向上し、徐々に薬の開発も進む肉腫の最新治療

福島安紀=医療ライター

 患者数が少ないまれながんの代表格である肉腫の標準治療と最新治療を学ぶ患者向けのセミナー「第3回希少がんを知り学び集うセミナー・希少がん Meet the Expert:肉腫(サルコーマ)〜総論〜」が、3月10日、国立がん研究センター希少がんセンターで開催された。同センターと認定NPO法人キャンサーネットジャパン、がん情報サイト「オンコロ」との共催で、同センター希少がんセンター長で、中央病院骨軟部腫瘍・リハビリテーション科長の川井章氏が、肉腫の外科治療、薬物療法、新たな治療開発について解説した。


国立がん研究センター希少がんセンターセンター長の川井章氏(撮影:木口マリ)

専門病院で標準治療を受けたほうが生存率は高い
 肉腫は、脂肪、筋肉、骨などに発生するがん。悪性腫瘍のうちの1%と、乳がん、肺がん、胃がんなど上皮細胞に発生するがんに比べて患者数は少ないが、子どもから高齢者まで幅広い年代で発症する。患者自身が「しこり(腫瘤)」を感じ、発見されることが多い。組織型によって骨肉腫、ユーイング肉腫、軟骨肉腫、繊維肉腫、脂肪肉腫、悪性線維性組織球腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫など、50種類以上に分類される。

 「肉腫の治療には、手術、薬物療法、放射線療法があり、国立がん研究センター中央病院の骨軟部腫瘍科で2006〜10年に治療を受けた470例の軟部肉腫の患者さんのデータを分析すると、約半数(ステージI、IIの患者)は手術で完治しています。肉腫が進行しているステージIII、IVの患者さんは、薬物療法によって予後(病気の見通し、余命)を改善する必要があります」。川井氏はそう解説した。

 問題は、希少がんであるために、現時点で最適な治療である標準治療が行われない場合があることだ。「肉腫の治療において、最初にガイドラインに則った標準治療をきちんとやるかやらないかで患者さんの生存率は大きく異なります(図)。海外の研究では専門病院で治療した方が生存率は高いとも報告されています。日本における状況を明らかにし、適切な対策を考える必要があると思います」と川井氏は指摘する。

図 ガイドライン遵守の有無と治療成績

 肉腫は腕や脚に発生することも多く、病気に冒された手足を切断しなくて済むかどうかも大きな問題となる。かつては手術の際、肉腫のある側の腕や脚は切断するのが一般的で、国立がん研究センターで1983〜84年に骨肉腫で治療を受けた人の患肢温存率は0%だった。「神経や血管まで取り除かなければいけないくらい肉腫が広がっていると温存が難しい場合もありますが、現在は、当科における初回手術の患肢温存率は約90%です(表)。術前化学療法で腫瘍を小さくしてから手術をしたり、延長可能な特殊な人工関節を利用したりするなど、以前だったら取れなかった腫瘍を取る、残せなかった手足を残すという挑戦が日々行われています」(川井氏)。

表 骨肉腫の患肢温存率の推移

オララツマブ、免疫療法など開発中の治療法も
 薬物療法に関しては、進行・再発軟部肉腫に対して、最初に試みられるべき「一次療法」、一次療法が無効となった場合に試みられる「二次治療」に分けて解説。一次治療は、ドキソルビシンなどアントラサイクリン系抗がん剤を単剤で使うのが標準治療だが、腫瘍を小さくすることによって手足を残せたり、疼痛の軽減やQOL(生活の質)の向上が得られたりするなど、腫瘤の縮小が有益と考えられる場合には、ドキソルビシンとイホスファミドの併用療法が選択肢となり得る。二次治療は、パゾパニブ、トラベクテジン、エリブリンなどの中から、組織型ごとの有効性の違い、点滴か経口薬か、外来での治療が可能か、副作用などを勘案し、患者の体力、希望に応じて決めるという。「腫瘍を小さくしてもう一度歩くことを目指しましょう、腫瘍をコントロールしながらQOLの高い生活を送ることを目指しましょうなど、治療のゴールについて医師と患者の間で意思を共有することが重要です」と川井氏は話す。

 肉腫は希少がんであるために、新しい薬の開発が進みにくいのが実情だ。川井氏によると、保険承認薬の数は、乳がんが37剤、肺がんが35剤であるのに対し、軟部肉腫に対する薬は9剤しかない。

 こうした状況を打開し、手術ができない肉腫の患者の予後を改善すべく、現在も分子標的薬「オララツマブ」、滑膜肉腫を対象にした免疫療法の一種「NY-ESO-1特異的T細胞療法」など新規治療の開発が進んでいる。米国で行われた臨床試験では、ドキソルビシンにオララツマブを加えると、ドキソルビシン単独よりも有意に全生存期間を延長するとの結果が出ている。日本でも臨床試験が行われており、結果次第では保険承認につながる可能性がある。NY-ESO-1特異的T細胞療法は、米国での臨床試験では、様々な治療に抵抗性となった滑膜肉腫の患者に対する奏効率が61%と好成績であり、日本でも臨床試験が開始される予定という。

 さらに、肺がんや悪性黒色腫で保険承認されている免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブについても、切除不能の明細胞肉腫または胞巣状軟部肉腫で18歳以上の患者に対する医師主導治験が進行中だ。川井氏は、「肉腫は患者数が少なく、多彩な組織型があるバラエティに富んだがんですが、困難な状況を克服して個々の腫瘍に応じた治療を開発することが、患者数の多いがんの治療に対しても大きな影響を与えるのではないかと考えています」と講演を締めくくった。

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