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レポート

2017/3/10

国立がん研究センター・希少がんセミナーより

診断・手術は症例数の多い病院で受けたいGISTの治療

福島安紀=医療ライター

 希少がんは患者数が少ない、まれながん。そういったまれながんへの理解を深めるため、「第2回希少がんを知り学び集うセミナー・希少がん Meet the Expert: GIST(消化管間質腫瘍)」が、2月10日、国立がん研究センター希少がんセンターで開催された。同センターと認定NPO法人キャンサーネットジャパン、がん情報サイト「オンコロ」の共催で、同センター中央病院長の西田俊朗氏が、GISTの診断と標準治療、そして治療を受ける上で知っておきたいポイントを講演し、参加者から寄せられた質問にも回答した。


国立がん研究センター中央病院長の西田俊朗氏

根治には手術で腫瘍を取り切ることが重要
 GISTは、胃や大腸などの消化管の筋肉の層に発生する粘膜下腫瘍だ。肉腫の一種であり、最も多い発生部位は胃の上部で、十二指腸や小腸、直腸にも発生する。手術で切除した病変を顕微鏡で調べる病理検査で、GISTの増殖に関わるKIT、DOG1と呼ばれるタンパク質などを発現しているとGISTと診断される。

「60歳以上の人の胃を調べると、3人に1人は粘膜下腫瘍の芽のようなものがありますが、ほとんどは良性で放っておいても大丈夫です。GISTとして治療が必要な人は10万人に1人程度と少ないのが実情です。胃や十二指腸、小腸、直腸に粘膜下腫瘍が見つかった時には、明らかに、腹痛、出血などの症状がある人は手術をします。腫瘍が5cmを超えると悪性である可能性が高いので、手術を勧めます。2〜5cmなら、CTや超音波内視鏡、病変に針を刺して組織を採取して病理診断を行い、手術が必要かどうか検討することが大切です。2cm以下は、内視鏡検査で形が悪い、潰瘍があるなどの所見がなければ1〜2年に1回程度定期的に様子をみます。経過をみているうちに大きくなって手術が必要になる人もありますが、中には腫瘍が消える人もいます」。西田氏はそう解説した。

GISTの治療の第一選択は手術で、5cm未満の小さい病変は腹腔鏡手術を行う場合もあるが、それ以上は開腹手術が基本だ。「他の臓器への転移がある人には手術はしませんが、手術でしか根治しない病気なので、手術で完全に病変を取り切ることが重要です。一方で、実際にはGISTではないのにGISTと診断されてしまうケースが3〜5%あります。臓器の機能温存と正しい診断と治療を受けるためにも、手術は、GIST治療の症例数が多い病院で受けたほうがよいでしょう。例えば胃の入り口のところにできた腫瘍は、GISTを切除すること自体は簡単なのですが、逆流性食道炎を起こさないような手術をする必要があります」(西田氏)。

手術を受けた患者が確認すべき9つのポイント
 GISTかどうかの確定診断は、手術で切除した組織を調べなければ得られない。講演の中で西田氏は、「手術が受けた後、患者さんが確認すべきこと」として次の9点を挙げた。

1)GISTかどうか(細胞の形:KITやDOG1の発現)
2)どこにできたGISTか(胃、腸、胃腸以外)
3)腫瘍破裂、転移や播種の有無
4)手術の種類と完全に取れたか(R0、R1、R2)
5)腫瘍の大きさ(cm)
6)腫瘍細胞分裂増数(/50HPFあるいは、/5 mm2)
7)リスク分類(どのリスク分類でどのリスクに当てはまるか)
8)KIT・PDGFRA遺伝子変異の有無(特に薬を使う時)
9)術後の治療とフォロー計画

 高リスクと診断された場合、あるいは腫瘍が破裂していた場合には、再発を予防するために薬物療法(アジュバント治療)を行う。「標準的には、イマチニブを3年間服用します。腫瘍が大きい時には、手術の前に6カ月間程度イマチニブを服用してもらい、腫瘍を小さくしてから手術を行い、その後3年間イマチニブを服用してもらうこともあります。イマチニブは、KIT遺伝子変異、あるいは、PDGFRA遺伝子変異がある腫瘍に効果がある薬なので、それらの遺伝子変異がない人には効きませんし、特殊なPDGFRA遺伝子変異にも効きません。幸い、特殊なPDGFRA遺伝子変異のGISTも、KITやPDGFRAの遺伝子変異がないタイプも数が少ないですし再発率も低いので、再発予防の薬物療法は行わず定期的に経過をみることが多くなっています」(西田氏)。

 転移・再発した人の薬物療法も、基本的にはイマチニブを使う。再発予防の薬物療法を3年間行い、その後しばらくして再発した場合には、再度イマチニブを投与する。アジュバント治療中に再発したり、イマチニブが効かなくなったりしたらスニチニブ、それも効かなくなったらレゴラフェニブを用いる。

 「最初の再発は腹腔内でほとんどが肝臓か腹膜です。再発した時には一般的には手術は行いませんが、手術ができるとしたらイマチニブ治療の効果があり、完全に取り切れる場合です。再発後の手術は、必ずGISTの治療経験豊富な医師がいる病院で受けてください。GISTの薬物療法で使うイマチニブ、スニチニブ、レゴラフェニブは、KITやPDGFRの働きを阻害し、GISTの細胞増殖を抑える薬です。増殖のスイッチを切っているだけなので、画像上は消えたといってもどこかに腫瘍細胞が残っています。薬を勝手に休薬したり減量したりせずに服用し続けることが重要です」と西田氏は強調した。

 イマチニブは、転移・再発GISTの人の8〜9割に効果のある薬だが、副作用は必ず出るそうだ。一番多い副作用は浮腫(むくみ)で、その予防には、塩分の多い外食を控え、自宅での食事も塩分制限を行うことが重要とされる。

また、スニチニブとレゴラフェニブ服用後にほぼ全員に生じるとされる副作用が、掌や足の裏が硬くなり強い痛みを感じて歩けなくなる人もいる手足症候群だ。「重症化を防ぐには、手足の保湿、体重を1カ所にかけないようにしたり、あまり手足の同じ所を使わないようにしたりするなどの予防が大事です。最初の1サイクル目が最も副作用が出やすいので、手足症候群が出始めたところで早めに休薬して、量を減らして薬物療法を再開するといった工夫をします。スニチニブとレゴラフェニブは高血圧と甲状腺機能低下症、特にレゴラフェニブは肝障害にも注意が必要です。レゴラフェニブが効かなくなってしまった人は、ぜひ、新しい薬を開発するための治験への参加を検討してください」と西田氏は、会場の参加者に呼びかけた。

GISTを専門とする医師のいる病院の探し方
質疑応答では、肺がんや悪性黒色腫などで保険適用になっている免疫チェックポイント阻害薬はGISTに効かないのかという質問が出た。西田氏は、「海外の臨床試験では、今のところ、GISTにはあまり効かないという結果が出ています。まだ、本当に効果がないのかどうか分からないので、免疫チェックポイント阻害薬の治験をしてはどうかと製薬企業に働きかけているところです」と回答した。

「GISTの治療を受ける病院の選び方」については、国立がん研究センター希少がんセンター希少がんホットライン担当の看護師の加藤陽子氏が、「都道府県がん診療拠点病院の相談支援センターに検索システムがあって、各地のがん診療連携拠点病院のGISTの手術症例数を調べることができます。2009〜13年くらいのデータですが、ある程度、病院を選ぶ目安になると思います」と回答。GISTの患者が国立がん研究センター中央病院か東病院の受診を希望する場合には、希少がんホットラインで予約が取れる。加藤氏は、「遠方の方でも日帰りで受診できるようにできるだけ配慮しますが、今かかっている先生の紹介状は必ず受診してください」と強調した。西田氏は、「GIST研究会のホームページの『会員名簿および会員施設一覧』も参考にしてください。専門の医師に診てもらう部分と、地元の先生に診てもらう部分と2階建てで考えていただくのがよいかと思います」と述べた。

「NPO法人GISTERS」理事長の西舘澄人氏

 GIST・肉腫患者と家族の会「NPO法人GISTERS」も、患者の病院選びの相談に応じている。GISTERS理事長の西舘澄人氏は、2002年に妻がGISTと診断され余命2カ月と宣告された経験を持つ。「活動はインターネットでの情報発信や情報交換が中心ですが、年に数回勉強会やGISTの患者と家族の交流会を開催しています。実際に治験に参加したメンバーもいるので、治験に関して生の情報を得ることもできると思います。今後は、疾患啓発のためにも全国各地を回りたいと考えています」と話した。

 国立がん研究センター希少がんセンターと認定NPO法人キャンサーネットジャパン、がん情報サイト「オンコロ」は、この「希少がんセミナー・希少がん Meet the Expert」を12月まで、毎月第2金曜日に開催する予定だ。4月14日は「悪性胸膜中皮腫」をテーマに同センター中央病院呼吸器内科(希少がんセンター併任)の後藤悌氏が講演する。

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