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2017/2/10

国立がん研究センター・希少がんセミナーより

新薬登場し、大きく変わる悪性黒色腫の最新治療

福島安紀=医療ライター

 「第1回希少がんを知り学び集うセミナー・希少がん Meet the Expert 悪性黒色腫(メラノーマ)」が、1月13日、国立がん研究センター希少がんセンターで開催された。同センターと認定NPO法人キャンサーネットジャパン、がん情報サイト「オンコロ」の共催で開かれたもので、同センターが、劇的に変わりつつある悪性黒色腫の薬物療法について講演した。

国立がん研究センター希少がんセンター皮膚腫瘍科長の山崎直也氏

日本人は足の裏、掌、手足の爪や粘膜に発生するメラノーマが多い
 悪性黒色腫は、日本では10万人に1〜2人が発症するまれながんで、年間約3000人が新たに診断されている。山崎氏は、まず患者数、死亡者数の年次推移を示し、「死亡者数は40年間で4倍に増えましたが、2015年には減少がみられました。今後の推移を見守りたいですが、薬物療法の進歩によって亡くなる患者さんが減っているのなら喜ばしいこと」と解説した。

 病型は、表在拡大型、肢端黒子型、結節型など幾つかのタイプに分かれる。その割合には人種差があり、日本人の悪性黒色腫の4割は足の裏、掌、爪などに起こる肢端黒子型で、発生部位は足の裏が最も多い(図1)。悪性黒色腫が発生するのは皮膚だけではなく、眼の中、口の中、鼻の中、食道、外陰部などの粘膜に発生する黒色腫が1割を占めるのが日本人のメラノーマの特徴だ。「粘膜に発生するメラノーマは欧米では少ないこともあって長年適切な治療がなく、発見が遅れることも多い傾向にありました。日本で薬を開発する際には、粘膜のメラノーマの患者さんにも治験に参加してもらい、皮膚のメラノーマと同じように粘膜のメラノーマの治療成績を上げることを目指しています」と山崎氏は話した。

図1 悪性黒色腫の発生部位別の割合

 メラノーマに対する治療薬には、長年、抗がん剤のダカルバジンしかなく、黒色腫が皮膚や粘膜にとどまっている状態で見つかれば病変とその周囲を手術で切除して完治するものの、リンパ節や他の臓器に転移があり切除不能な段階になると、予後が悪いのが難点だった。

 2011年、米国や欧州で免疫チェックポイント阻害薬イピリムマブと、BRAF V600遺伝子変異(以下、BRAF変異)が陽性の人に効く分子標的薬のBRAF阻害薬ベムラフェニブが相次いで承認され、状況は激変した。そして、その後も薬物治療は進歩を続けている。海外のデータではあるが、手術ができない転移・再発悪性黒色腫の1年生存率は、欧米でこれらの薬剤が使えるようになった2011年には46%だったが、2015年には85%と大きく改善している。

転移・再発メラノーマも治る時代に
 日本では2014年、世界に先駆けて免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブが承認され、ベムラフェニブも保険適用になった。2015年には欧米より約4年遅れでイピリムマブ、2016年にはBRAF阻害薬のダブラフェニブと併用薬であるMEK阻害薬のトラメチニブ、免疫チェックポイント阻害薬のペンブロリズマブが承認され、治療選択肢が増えている。ペンブロリズマブは薬価が決まらず発売が遅れているが、近々使えるようになる見通しという。

 「ニボルマブなどはまだ長期成績が出ていないのですが、10年経過を見ているイピリムマブの場合、3年生存率は22%で、この22%は10年後も変わりません(図2)。これまでこのような治療薬は存在しませんでした。一般的にがんの治療薬の効果は徐々に薄れていくのですが、免疫チェックポイント阻害薬では3年で効果が得られた患者さんは、肺や肝臓など重要な内臓に転移があったとしても長期間元気なままです。メラノーマが薬で治る時代が来たのです」と山崎氏。

図2 イピリムマブの治療成績

 ただし、抗がん剤や分子標的薬とは異なる免疫チェックポイント阻害薬の副作用に注意が必要だ。免疫チェックポイント阻害薬は、がんが、自分が攻撃されないように体の免疫の働きにブレーキをかけていることから、そのブレーキを解除して本来の免疫力が最大限発揮できるようにする薬。ブレーキを解除することで、自分の免疫細胞ががん細胞だけではなく、自分自身の正常な細胞まで攻撃してしまうことがあるため、人によっては、間質性肺炎、下痢・大腸炎、肝障害、皮膚のかゆみ、甲状腺・下垂体異常、重症筋無力症、重症の糖尿病などの副作用が出る。

 「ニボルマブでは、皮膚障害がみられた方が効果も高かったというデータが出ているので、副作用が出る患者さんの方が効果も高い可能性はあるのですが、副作用が出る時期には規則性がなく、投与を止めても副作用が出たり続いたりする恐れがあります。一方、海外の臨床試験では、イピリムマブとニボルマブを併用した方が、それぞれ単独に使うより効果が高いとの結果が出ています。日本では併用療法が保険で認められていないので、その効果と安全性をみる臨床試験が進行中です。今後は併用療法が主流になる可能性が高いのですが、併用すれば副作用も出やすいので注意が必要です」と山崎氏は指摘する。

 単独で使う場合にも、どの順番で薬を使うのが最も効果的か判断するのは悩ましい。山崎氏は、海外の臨床試験(CheckMate064)の結果を示し、ニボルマブの後にイピリムマブを使った群の1年生存率は76%で、イピリムマブからニボルマブに切り替えた群(同54%)より明らかに治療成績がよかったと解説した。なお、メラノーマにBRAF変異があると多くの場合、BRAF阻害薬が第一選択と考えられているが、実はそれほど単純な話ではない。国内で行われた未治療進行悪性黒色腫に対する第二相試験では、BRAF変異があっても初回治療でニボルマブを投与した場合、5割に奏効したという結果も示されているからだ。なお、日本人のメラノーマ患者のうちBRAF 変異のある人は約25〜30%で白人の約半分といわれている。

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