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レポート

2016/12/19

第29回日本内視鏡外科学会総会より

ロボット手術はどこまで身近になってきたのか

小又理恵子

 近年、ロボットの支援下に行う手術が注目されている。12月8〜10日に横浜で開催された第29回日本内視鏡外科学会総会の特別企画では、消化器領域を中心に、手術時間や合併症発生率など、開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット手術それぞれのメリット・デメリットについて議論が交わされた。他の手術法との違いを中心に、現在どこまで普及してきたか紹介する。


 ロボット手術において、医師は患者から少し離れた専用の椅子に座り、目の前に立体的に映し出される手術部位の拡大画像を見ながら、手元の専用ハンドルを操作する。その動きは手術台のロボットと連動しており、患者の体内にある専用の手術器具をロボットが動かして手術を進める。繊細な手技が求められる様々な診療科でロボット手術は行われるようになっており、前立腺がんに対しては保険適用となっている。

 消化器領域では開腹手術と腹腔鏡下手術が主な手法であり、両者の違いは腹腔鏡下手術の方が出血量は少なく、術後入院期間も短いものの手術時間は長い、という傾向が以前から指摘されてきた。腹腔鏡下手術は年々増加しており、傷口が小さく社会復帰が早いといったメリットが注目されたためとみられている。消化器領域においても、より的確かつ安全な手術を目指そうと、ロボット手術の導入が徐々に進んでいる。

 松波総合病院副院長の小林建司氏は大腸がんに対する手術法として「社会医療費の観点からは現時点では開腹手術が最も優れているだろう」と前置きした上で、いずれも後方視的な小規模の短期成績ではあるものの、腹腔鏡下手術とロボット手術の違いに関して、直腸がんに対しては開腹手術への移行率や排尿障害の発現率、肛門温存率においてロボット手術の方が優れているとする報告があると紹介した。

 小林氏は、松波総合病院で2011年4月から自費診療で実施しているロボット手術の成績を紹介した。これまで44人の直腸がん患者にロボット手術を実施しており、同時期に実施した腹腔鏡下手術および開腹手術と、手術の難易度別に手術時間や出血量などを比較した。その結果、比較的容易な手術においては出血量の少なさ、術後入院期間の短さともにロボット手術が優れていたものの、難しい手術においてはロボット手術の手術時間が最も長くなった。平均して約2年間追跡した全生存期間も、手法ごとの有意差は認められなかった。小林氏は「ロボット手術の症例数は年々増加傾向にある。有用性をきちんと検証していくためには、保険診療下での実施が望ましい」と指摘した。

合併症をどれだけ減らせるかがカギ
 藤田保健衛生大学総合消化器外科では2009年からロボット手術を導入しており、胃がん313人、大腸がん102人など500人を超える豊富な症例経験を有する(胃がんに対しては2014年9月より先進医療)。同大学教授の宇山一朗氏は、ロボット手術では拡大された鮮明な立体画像を見ながら自在な角度で手術器具を動かせる、すなわち腹腔鏡下手術よりも局所の操作性が向上することで術後合併症が減少し、より安全な手術が可能になるのではないかと述べた。

 宇山氏はさらに、ロボット手術を行った胃がん患者88人と腹腔鏡下手術を行った胃がん患者438人を比較した成績を紹介、年齢や進行度など患者背景に差があったことを指摘しつつ、術後合併症についてはロボット手術が2.3%、腹腔鏡下手術が11.4%と有意差が得られたことを明らかにした。術後合併症の生じる危険因子について多変量解析を行ったところ、ロボット手術ではないこと、胃全摘を行うこと、広範囲のリンパ節郭清を行うこと、の3点が有意な危険因子として同定された。

 宇山氏は「胃全摘は両群とも約3割、広範囲のリンパ節郭清は腹腔鏡下手術の約5割に対しロボット手術で約6割と多く、ロボット手術は術後合併症の減少に寄与すると考えられた。この結果をより大規模に検証するため、現在、多施設共同前向き単群臨床試験を実施している。年内には患者登録が終了し、3年間追跡していく予定である。術後合併症の減少は患者満足度や長期予後の改善にもつながると考えられ、有用性が証明できればさらに普及が進むと期待される」と結んだ。

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