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レポート

2016/10/7

第1回日本がんサポーティブケア学会学術集会 Vol.4

若年性乳がん患者の治療中断による妊娠は安全か、国際共同研究で検討

森下紀代美=医学ライター

 日本では、毎年約5000人の妊娠可能な年齢の患者ががんサバイバーとなっており、妊孕性の温存は大きな課題である。取り組みの一つとして、現在、内分泌療法と妊娠転帰を評価する国際共同研究が行われている。9月3〜4日に東京で開催された第1回日本がんサポーティブケア学会学術集会の妊孕性シンポジウム「オンコロジーからみたがん・生殖医療の現状と問題点」では、がん研有明病院乳腺センター乳腺外科の片岡明美氏が、乳がんにおける現状と展望について解説した。


予後不良の若年性乳がん、診療で配慮している施設が多数
 日本乳がん学会の2013年次の全国乳がん登録データによると、乳がん患者7万5332人のうち、40歳未満の若年性乳がんの患者は4317人(6%)だった。乳がんは、発症年齢が若いほど再発しやすいことがわかっている。がん研有明病院の1970年から2004年までの手術症例について、術後30年以上の経過をみると、20代で発症した患者の再発率は有意に高く、年齢が上がるほど累積健在率も大きく上昇していた。若い年代で発症する乳がんが予後不良となる理由の一つは、腫瘍が大きく、進行していることだ。リンパ節転移も多い。がんの悪性度が高いこともある。若年性の乳がんでは、エストロゲン受容体(ER)陽性が少なく、HER2陽性とトリプルネガティブが多い。

 片岡氏らは、2009年度日本乳癌学会班研究「若年性乳癌の特徴とサバイバーシップに関する研究」において、日本乳癌学会認定施設へのアンケート調査を行っている。回答は402施設中229施設(57%)から得た。若年性乳がん患者に対し、診断・検査で特別な配慮をしていると回答した施設は70%に上り、このうち将来の妊娠希望に配慮している施設は90%だった。薬物療法では、特別な配慮をしているとした施設が約70%と多く、配慮の内容として、より化学療法を行うとしている施設が77%、内分泌療法を通常の5年よりも長くしている施設が37%だった。

 同研究で用いた全国乳がん患者登録調査データベースの2004年から2009年のデータでは、35歳未満の患者は、35歳以上の患者と比べて術前補助療法を受ける割合が高く、内訳では化学療法の割合が約97%だった。抗がん剤による卵巣毒性を考えると、妊孕性の温存は、乳がんの診断から化学療法開始までの短い時間に考えなければならない状況がある。

 さらに同研究では、術前補助療法で腫瘍が縮小し、乳房温存手術を行うことができた患者の約8割は、何らかの術後補助療法を受けたことが示された。35歳未満の患者は、35歳以上の患者と比べて術後も化学療法を受ける割合が高く、約60%の患者は内分泌療法も受けていた。内分泌療法は5年間または10年間と長期間に及び、卵子の老化の問題もある。

 片岡氏らががん研有明病院において、35歳未満のホルモン感受性陽性乳がんにおける術後の内分泌療法の期間とその後の妊娠率について統計を取ったところ、114人のうち妊娠したのは25人(22%)だった。同氏らは術後に患者に妊娠の希望を確認し、希望があれば内分泌療法の有無や継続について話をしている。妊娠・出産に至ったのは再発リスクが低く内分泌療法を行わない選択をした患者で42%、ホルモン療法を2年から4年で中止した患者で27%、5年間の内分泌療法を終了した患者では7%だった。内分泌療法を10年間に延長した患者では妊娠・出産はなかった。

 妊娠・出産した患者では、その後の再発や乳がん死はない。「healthy mother effect」と呼ばれるセレクションバイアスの可能性が考えられ、「もともと再発リスクが低い患者さんが妊娠を希望していたという背景もあるのでは」と片岡氏は考察した。

 ただし、内分泌療法を中断することについてのエビデンスはない。内分泌療法が勧められるのは再発リスクがあると判断された患者である。そのため、妊娠希望のある若年性乳がん患者を対象として、内分泌療法を中断してその間に妊娠を試み、妊娠転帰と安全性を評価する国際共同研究、POSITIVE試験が2014年から開始されている。対象は妊娠を希望するER陽性乳がんの42歳以下の患者で、18カ月から30カ月にわたり内分泌療法を行った後に3カ月間の休薬期間を経て、妊娠を試みる。その後2年以内に元の内分泌療法を再開するというもの。約500例の登録が目標だ。日本でも既に約10施設が参加し、患者の登録も始まっているという。研究の進展が待たれる。

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